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サンド×リヨン  作者: 東海林 愛理
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金と時間と距離の問題


携帯を開いていた愛姫(ありす)は直ぐにグループ通話の開始ボタンを押し入る。


グループ通話は開始してから5分以上も経っていて、陸と颯が話をしている途中だったが、愛姫が入ったと分かった途端話を辞め、違う話題を出す。


「あーちゃん。嘘はダメでしょ嘘は!」


と笑いながら陸が言う。


颯は黙ったままである。


沈黙が少し続いた。


沈黙が苦手だった愛姫は口を開く。


「明日合否が決まるんだ!キャストの!それ落ちたら帰ろうかな…なんて」


と自信なさげに言う愛姫に対し、


「お前はその程度だったのかよ、芸能人になる事にしても俺の事にしても、何もかも中途半端じゃねーかよ」


颯はやはり芸能人になる事を認めたくなかったのだ。


振られた理由が理由なだけに、中途半端な気持ちの愛姫に対してイライラが込み上げてきていた颯。


「俺のLINEも無視。あの日やっと想いが通じあったと思ったらさよならなんてあんまりだよ…」


次から次へと思っている事を伝えた。


愛姫。好きすぎるが故、自分の気持ちが重たすぎるのにも気づいていたのだった。


「颯には…私よりももっといい人が見つかるよ?」


愛姫は思ってもいないことを口に出してしまった。


「ラブラブな会話の途中ごめん。」


と陸が割って入ってくると2人は即答。


「ラブラブなんかじゃない」


それも2人共同時に…。


息がピッタリすぎて陸も驚いていた。


「此処だから言うけど、たっつんは重たすぎる。あーちゃんは嘘が下手。2人は両想いなんだし、何でそんなに空回りしてるの?答えは1つしかないでしょ」


何か考えが思いついたのか結論をまとめようとする陸。


「……。」と黙り込む颯と愛姫。


「たっつんが追いかけて行けばいいんじゃね?東京に。」


クスクスと笑い颯が本気にするかしないかは別として賭けてみた。


本気で愛姫の事が好きなら意地でも東京に行くだろうと考えていたのだった。


「金と時間と距離が無理だね」


と即答する颯。


「だから…りっくん?何言ってるの?私は颯に迷惑かけたくないって言ったの。私の為に学校や家を捨ててまで追いかけて来て欲しくない」


と真面目なトーンで言う愛姫。


「愛が~あれば何でも出来る!」


と呑気な事を言い出す陸。


その時の陸は2人の気持ちを試してみた。


賭けが当たるか外れるか。


2人の関係は今後どうなるのか。


そして衝撃の一言。


「僕はあーちゃん追いかけて東京行くから」


颯に煽るかのように捨て台詞を言ってグループ通話を切った。


陸の次に通話に入ってきたのが優羽だった。


「ねぇ??もしもしー?ありすー?颯くーん?柊くん知らない?1時間前から連絡つかないの。」


柊と連絡を取れなくなったことに焦りを感じている優羽が喋る。


優羽のその直球さにはいつもビクビクしてしまう。


柊は愛姫と電話した後に壁に携帯を投げつけてしまい、壊れてしまっていたのだ。


愛姫と柊が電話を切ったのも丁度1時間程前だった…。


時間に心当たりのある愛姫は、


「ごめん。優羽…私のせいだよ、きっと柊怒ってるんだわ」


あたかも陸の言い捨てた台詞を忘れるかのように優羽の言葉に返す愛姫。


「俺、お前ん家の隣だから柊の様子見てくるわ」


と言い颯は通話を切った。


グループ通話は優羽と愛姫のほぼ個通状態。


「颯の時と一緒…私ってなんで言葉足らずなんだろう」


と女ならではのガールズトークが始まる。


「重要な所いつも愛姫は抜けてるもんね。それを柊くんや颯くんは分かってくれてると思う。愛姫の不器用な所、私は好きだよ」


と愛姫を勇気づけるかのように優羽は言った。


その後もガールズトークは尽きず、長々と続いていた。


2人ともグループ通話な事を忘れていた。


一方颯は電話を切った後、夜の20時30分だったが、楠木家を伺った。


インターフォンを鳴らす。


──ピーンポーンピーンポーン──


鳴らして出たのは愛姫と柊の母だった。


「今晩は、やぶ遅くに失礼します。柊くん居ますか?」


と柊が家に居るのかを確認する。


そして、2分経った時に柊が出てきた。


「あれ?颯にーちゃんなしたの?」


眠たそうに目を擦りながら外に出てきた柊。


出てきてくれないと思っていた颯は柊の顔を見て安心した。


「優羽が心配してたぞ!柊と連絡とれねーて」


と優羽が心配していた事を教える。


「ねーちゃんの事に苛々しすぎて携帯投げたら壊れた」


と真顔で答える。


柊は愛姫の事が心配すぎて何件も電話やLINEを送っていた。


シスコンだろって周りかは思われてもしょうがないくらいの。


なのに電話をした時に本当は愛姫の声が聞けて安心した筈だが、かえって逆の事をしてしまう。


教えてくれなかった事に対しての苛々が強くムキになっていたのだった。


「颯にーちゃんには言ってて何で俺に教えてくれないんだよ、ねーちゃん」


と小声で柊が言う。


愛姫の事が心配すぎてグループLINEでもLINEをしていた事は颯にも伝わっていた。


柊の気持ちもわからなく無いと思った颯は、


「俺が振られた理由…。東京行くって分かってっから俺には迷惑かけられないって言われたんだ」


そう柊に伝え、愛姫は柊が心配するのは理解の上で敢えて言えなかったんじゃないかって。


颯はこの時愛姫の顔を浮かべながら思っていたのだった。


「俺、今日泊まっていい?柊と話をしたいんだ」


と聞くと柊は頷き家の中に颯を入れる。


柊の部屋へと誘導し、就寝する準備を行った。


そして、1日が終わろうとする。

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