両想いなのに
屋上に1人残った颯は、
「ちっきしょー」
と言いながら柵を蹴っ飛ばした。
「もっと早く告ってたら何か変わってたのかよ。何が俺の気持ちには応えられないだよ。もう、なんなんだよ。こんちきしょー」
唇を噛み締め屋上で1人叫ぶ颯。
すると、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「誰?入るなら入りな」
とドアを叩いた相手に声をかける。
「颯にーちゃん。俺だよ俺。」
と低い声が聞こえてきて驚いたが颯のことをそう呼ぶ人は1人しか居なかった。
それは、愛姫の弟の柊である。
「ねーちゃん走ってくの見えたけど。颯にーちゃんとうとう告ったの?」
あまりにもタイミングが、良すぎて何か予知してたんじゃないかって思うくらいのレベルで驚く颯。
「わ、わりぃ、今何も考えたくねぇ」
そう答えた颯に対して何かを企んでいるかのように
「ここだけの話。ねーちゃんは颯にーちゃんの事、小学生の頃から好きだったよ。この事は内緒で」
と柊が言い、颯の隣に腰をかける。
「ねーちゃんは?なんて答えたの?」
と柊が話をかけるがほぼ無視。
颯は愛姫に自分の気持ちを応えられないと言われたことにショックを受け、黙り込んでいる。
颯の気持ちを読み取った柊は、
「ねーちゃんの本心聞いたの?聞いてないのに落ち込むのは男じゃないね」
と颯を後押しするかのように言葉を残して屋上を出た。
その言葉が颯には響いていたのであった。