人の気持ちも知らないで
次の日の朝、稽古練習に向かう愛姫は昨日、陸に言われた事を思い出し稽古に向かう前に泊まっていたホテルに荷物を取りに行き、チェックアウトを終えてから東京駅に向かい駅のロッカーに荷物を入れ、シティーホールに向かうのだった。
遥希に会う顔がないと思った愛姫は行きたくないと思いながらも顔に出ないように頑張ろうとも決心していた。
なんなら今日から稽古練習は奏多と奈々未と一緒にするからである。
昨日の奈々未達の出来事を知らない愛姫はいつも通りに振舞おうとしていた。
稽古場のドアを開け「おはようございます」と挨拶をする愛姫。
だが、稽古場には1人しか来ていなかった。
その人物は今日一会いたくないと思っていた人。
「あっ!間違えました…」
と言い遥希から逃れようとするが遥希が愛姫の手を引っ張ってきた。
「愛姫ちゃん…俺を避けようとしないで。頼むから…この役を全うして成功させたいんだ」
昨日の遥希の行動とは違い、反省したのかと思った愛姫は安心する。
「じゃあ何で無防備だなんて言ったの」
その言葉だけがどうしても、理解出来てない愛姫。
「他の男に言い寄られたらホイホイ着いていきそうだから」
あまりの心配さに言ってしまう遥希。
「私には好きな人が居るの。だからこの仕事が終わるまで待っててって伝えてあるの」
そう言いながら遥希の手を離そうとした。
「男は放って置かれたらいずれ気持ちは離れていくもんだよ」
好きな人が居ると言われて誰と問うこともなく話を進める遥希。
若干イライラしている様子だ。
「でも、私が決めた事なの。他の人を好きになってもいい。身勝手な事して離れたのは私。自業自得なの…」
気持ちが変わってしまうのは承知の上でこの世界に来てること、自業自得なのは分かっていても、事情を知らない人に言われるのは精神的にきつかった。
「私は立ち直れなかったら一生人を好きになる事はないと思うよ。てかそう思って欲しい。遥希くんを好きになる事はないよ」
と少し声のトーンを下げて愛姫は言った。
「俺が好きだって言っても?」
愛姫の気持ちを試そうとしている遥希。
──やっぱりこの人苦手だな──
好きになる事はないと言っているのにも関わらず何を言っているのだろうかこの人は。
早く誰か来てくれないかなと思いながらもドアの方を見ている愛姫。
「俺の事好きになるぞ!」
と言いながらよそ見をしていのが丸わかりな愛姫の頬っぺにキスをする遥希。
「なっ!!」
手で頬っぺを拭いながら赤面になる愛姫。
これが無防備だとは自覚をする訳でもなく、ただ鈍感なだけだと。
「俺は愛姫ちゃんが好きだから、覚悟しといてね。いつか俺を好きになる…」
そう言いながら稽古場から出ていく遥希。
「その自信ってどこからくるのよ…好きにならないって…」
遥希との会話にいちいち反応する愛姫。
「もう、狂っちゃいそう…」
と言いながら自分の髪をぐしゃぐしゃにする。
陸や颯と今すぐにでも会いたいと思う感じに狂っている愛姫。
「恋愛てこれだからめんどくさーい」
稽古場に誰も居ない事をいい事に思っている事を叫ぶ愛姫だった。
時計の針が12時丁度になるが稽古場に誰も来なかった。
不思議に思う愛姫はシティーホールを探索するのであった。
多分2回目も迷子になるであろう。
愛姫が探索している間に戻ってきた遥希。
すると次に稽古場に入って来たのは奏多だった。
「遥希、おはよー!1人?」
と声を掛けた。
「奏多は元気でいいよなー」
少し元気のない遥希。
先程の愛姫に対しての態度とは全く違うのであった。
きっと自分のとった行動が情けないと思ったのであろう。
だが、先程の出来事や愛姫が来ていることを知らない奏多に言ってもどうにもならないと感じていた。
「俺ってつくづく思う、愛姫ちゃんにとっての嫌な奴にしかなれないんだって」
話が全く読めない奏多は何を言っているのかが理解出来てなかった。
「年下の俺に弱音吐く先輩もどーかと思うけど…何かあったんなら話は聞く」
と倉庫から2つ椅子を用意し、座って話そうと遥希を促す。
「俺、また手ぇ出しちゃった…」
やはり自分の嫉妬心にイライラし、行動に出てしまう遥希。
「今度は何したんだよ、」
と言いながら話を聞く奏多。
そして遥希は今日の午前中の出来事を奏多に伝えたのであった。
そして丁度奈々未が稽古場に着いて中に入ろうとしたが、二人の男の影と話し声が聞こえたので入るのを止めてロビーに向かう。
奈々未はロビーに座り、一人で考え事をするのだった。
「奏多と遥希だった…愛姫ちゃんの話かな…」
そうボソッと呟いているのだった。
シティーホールを探索している愛姫と出会う。
「あっ!!奈々未ちゃんだー!来てたんだー!誰も来ないから時間間違えたのかと思っちゃって探索して暇つぶししてたんだ!!奈々未ちゃんはー?」
と奈々未の顔を覗いて聞いてみた。
「稽古場に遥希と奏多がいた。」
遥希と奏多が稽古場で話をしているのを見ていた奈々美は行きづらくてここに居ると愛姫に伝えた。
「奏多くんと何かあったの?」
不思議そうに聞く愛姫。
「モテてる愛姫ちゃんには分からないよ」
「モテてる?」
自分がモテていると自覚をしていない愛姫は何故奈々未がそう言ったのかが理解出来なかった。
「私は誰とも付き合う気は無いよ」
そう愛姫が言った。
「付き合う気は愛姫ちゃんに無くても相手は好意を抱くものだよ。好意を抱かられるイコールモテてるだからね。鈍感だよ、愛姫ちゃん…」
奈々未が何に悩んでいるのかが分からない愛姫。
どうして元気が何のかも心が読めていない。
「奏多くんは、奈々未ちゃんの事大事にしてくれてると思うんだけどな」
奏多と何が起こったのか分からない愛姫はどんどん聞いてこうと考えた。
「ううん、私昨日振られたの。」
突然重たい言葉が奈々未の口からこぼれた。
恋愛対象では無いと、言われた事を愛姫に伝えた。
伝えてくれた事を嬉しく思う愛姫。
優羽の次に仲良くなれる気がしてきていたのだった。
「私ね、好きな人が居るんだ…」
そう言って話を始める愛姫。
幼なじみで、自分が強くなる為に芸能界入りした事も言うに言えず、地元を経つ前にお互いの気持ちを知り、両想いだった事を話した。
両想いだったが、愛姫は自分が芸能人になる事によって、付き合う事は無理だと伝え、好きだけど気持ちに答える事は出来ないと好きな人に言った事まで話をした。
愛姫はこの話を奈々未に聞いてもらいたくてひらすら話す。
二度とモテてる愛姫が羨ましいと思わせないように。
「それってただの自己満?」
冷たい返事をする奈々未。
「自己満かもしれない。けどこれが私の恋愛なの。奈々未ちゃんにも諦めて欲しくないの」
奈々未には頑張って欲しいと願っている愛姫は奈々未の話を聞こうとする。
「私で良かったら話聞くよ?」
そう言って携帯の連絡先をメモし、奈々未にメモを渡した。
「電話の方が良いかなって思ったから。何時でも話聞くよ」
と言って立ち去る愛姫だった。
これ以上今の愛姫には話をしてくれないと悟ったからである。
そして、稽古場に戻ろうとしたがやっぱり方向音痴の愛姫。
「稽古場っそっちじゃないよ!あっち」
と言いながら方向を指さしてくれた奈々未。
「奈々未ちゃん、ありがとう!」
とお辞儀をしながら奈々未が指さした方に向かった。
稽古場に着くと男性2人がまだ、話をしていた。
「奈々未ちゃんが入りづらいのもわかるなあ」
とボヤきながら稽古場に入る愛姫。
朝の遥希との事があってから、遥希と目を合わせる事が出来ない愛姫。
遥希と奏多の傍に寄り、話をかける。
「奏多くんちょっといいですか?」
と言い、遥希から奏多を借りてステージの方に向かう愛姫。
そして、ステージに座り込む。
「ここで話しましょう?」
と言い、隣を座ってもいい合図をする。
ステージをトントンと叩きここに座ってと合図した。
奏多は連れられたままに動き、愛姫の隣に座った。
「話って何?」
と話の内容が気になる奏多。
「昨日、奈々未ちゃんと何かありました?」
奈々未が告って振られた話は聞いていたが、詳しい内容は知らなかった愛姫。
やんわりと話を奏多に聞いてみることにしたのだ。
「なんで君に言われなきゃならないのかな?」
奏多的には昨日の出来事に触れられて欲しくなかったみたいだった。
「奈々未ちゃん、ロビーにずっと座っててね、落ち込んでるように見えたから…気になってしまって」
愛姫は奈々未の心配をしてる事を伝える。
「俺が…奈々未の事を恋愛として見ていないと言っただけだよ。」
その言葉がとても重たく聞こえてきた愛姫。
もう、どうする事も出来ないんだとも思えた。
ステージで話をしている二人の様子が気になっている遥希。
遥希はじっーと二人の事を見ていた。
奏多は遥希が見ていた事を知っていた為、試そうと試みる。
「君は好きな人いるの?」
奏多に何故それを聞かれたのかが分かっていない愛姫。
好きな人はいる事を伝えた。
「へぇ~~~好きな人ってどんな人なの?」
奏多の質問がどんどんとエスカレートしていく。
「奏多くんには関係ないです…」
顔を逸らしていると、顔を近づけてくる奏多。
その様子がいつもの奏多じゃないと感じとった。
──なんか変──
そう、心の中で思っていた愛姫。
「そういう奏多くんは好きな子居るんじゃないですか?」
こういう事をしていると相手に勘違いされますよ。
とアピールするかのように聞いてみた。
「好きな人は居ないかな…気になっている人はいると思う…自分でも分かんないんだ…」
手で頭を支えながら考え込む奏多。
その様子を見て、悩んでいるんだと感じた愛姫だった。
「気になっている人が居るなら尚更その人にアピールしなきゃですね」
と言いながらステージから降りる愛姫。
「ちょっと待って、まだ俺が話したい事がある」
と言って愛姫の腕を引っ張った。
「は、話って何ですか?」
呼び止められた事に吃驚している愛姫は首を傾げて聞いてみた。
「敬語…やめてくんね?同い年だろ?タメで話さね?」
奏多は自分だけ敬語で話されてるのが嫌だったみたいだ。
「あ!敬語…つい癖で…これからは敬語使わないように努力しますね」
と言い奏多の腕を解いた。
「せ、せめて…俺があ…りす…って呼んでもいい?」
少し恥ずかしそうな顔をして言う奏多。
「いいよ!」
と奏多の顔を見ながら愛姫は答えた。
恥ずかしそうな顔をしているのは全く気づいていない。
「ありがとう…愛姫…」
名前を呼ぶだけでも緊張している様子の奏多。
「奏多くんどうかしたの?」
愛姫が奏多の顔に顔を近づける。
──やべっ──
そう思いながらも、愛姫の顔をじっと見ている奏多。
「そ…そんな顔近づけたら俺、照れる…」
見た目はジャニーズに居そうなくらいのイケメンな奏多。
少し照れ屋さんな部分もあるらしい。
「ふふっ、奏多くんて照れ屋さんなんだね」
微笑みながら愛姫は言った。
微笑んでいる顔がとてつもなく笑顔で奏多には可愛く見えたらしい。
「か、可愛すぎる…反則だって」
そうつい口に出して言ってしまった。
「可愛すぎる??そんなの、目の錯覚だってば!」
愛姫自身もそう言われた事に少し動揺していたみたいで、話をそらそうとし、奏多の肩をバシバシと叩きながら言う。
「錯覚なんかじゃない、仕草が可愛いの…遥希がどうして君を好きになったのか理解出来るよ。」
真剣な顔をして愛姫に言った。
「待って待って、どうしてそれを奏多くんが知ってるの?」
奏多がその事を知っていた事に吃驚している愛姫。
「男同士の会話さ!」
男同士の会話に愛姫が出てくる事自体が不思議に思えた愛姫。
「別に私は好きになってと言ってないし」
ややツンデレっぽく言ってみる愛姫。
「人は気づいた時には人を好きになっているもんだよ。愛姫は人を惹きつける何かを持ってると思ってる。俺も惹き付けられそう」
愛姫の様子を伺いながら話す奏多。
愛姫の反応を確かめようとしていた。
「私にはそんなもの要らない。好かれるのもただ一人だけ…がいい…何で邪魔するの…?」
颯の事が好きすぎて気持ち的に辛くなった愛姫。
我慢出来ないと思い、涙流しながら話す愛姫。
「はい、ハンカチ」
泣いているのが分かった奏多はポケットからハンカチを出し、愛姫にハンカチを渡す。
「あ、ありがとう…」
ハンカチを受け取り涙を拭う愛姫。
「愛姫は魅力的な女性だから…好きな人を想ってて辛いなら俺にしな…」
急に愛姫を抱きしめる奏多。
「あ、あの…こういう事をするのやめていただけませんか?」
抱きしめる強さが痛くて我慢出来ない愛姫。
「奏多くん?ねぇってば、見られてるって」
他人に見られようがお構いなしの奏多。
愛姫からは稽古場に入ってくる人々が見えている。
──お願いだから、奈々未ちゃん…まだ来ないで──
奈々未に隠し事が出来てしまった事に罪悪感を覚える愛姫。
「奈々未ちゃん、私の事嫌いになっちゃうのかな…」
奏多の事よりも奈々未の心配をしている愛姫。
「奈々未には関係ねぇ、それより俺と付き合わね?答えるまで離さない」
その言葉にイライラする愛姫。
「奈々未ちゃんに関係なくはないの!奈々未ちゃんの気持ちを知ってる癖に!何で私にこういう事をするの?気になる人居るんでしょ?なら、そっちに行けばいいじゃない、私の気持ちも知らないで!!よくそんな事が言えるね。私は誰とも付き合う気はない。二度とこういう事をしないで。奏多くんには幻滅しました。」
イライラしていた事をぶつけ、奏多の事を押し飛ばした愛姫。
「奏多くんには奈々未ちゃんがいるでしょ…大事にしてあげないと…」
と言い捨てセリフを言って稽古場から出ようとする愛姫。
周りの人は奏多と愛姫の様子を見ていてザワついている。
ザワザワしているのも納得いかない愛姫はイライラ度がMAXになっていた。
「愛姫ちゃん…!」
愛姫を呼んだのはずっと様子を見ていた遥希だった。
「は、遥希くん…」
名前を呼ばれたくなかった、話を今してしまうとイライラをぶつけてしまうと思ったからだ。
ステージの上で倒れ込みながら愛姫が遥希に話しかけられている所を見ていた奏多。
「遥希には渡さねぇ…」
と言いながら立ち上がった。
そして、ステージから降りて遥希と愛姫の所に向かおうとするが遥希がそれに気づき、愛姫を別の場所へと連れていく。
「愛姫ちゃん、着いてきて」
愛姫の手を引き、別の場所へと急いで走る遥希。
──何、こんなに慌ててるんだろう?──
繋がれている手を見ながら考える愛姫。
考えている間に場所に到着した。
「はい!此処」
愛姫が、連れられてきた場所はロッカー室だった。
「何でここ?」
不思議に思う愛姫は辺りをキョロキョロと見渡していた。
「奏多と何話した?何で抱き合った?」
最初から最後まで様子を見ていた遥希には誤魔化せなかった。
「奈々未ちゃんの話。」
奈々未の話をしていて何故そういう展開になったのか読めない遥希。
「奏多の好きな奴誰か知ってんの?」
男同士で話をした内容なのか。
奏多の好きな人は知らない愛姫。
「気になる人はいるって言ってた…だから、俺にしなって言われたけど気になる人の所に行ってって言った」
その言葉で確信した遥希。
「奏多の好きな奴は愛姫ちゃんだよ…前から気になってたんだよね…奏多の目線が毎回奈々未じゃなくて愛姫ちゃん見てるの。そして俺も愛姫ちゃんが好きだから、此処に連れてきたのはまた2人っきりになる為。あんなステージ上で抱きついてるの見せつけられてたらさー、俺だって我慢ならないわけ。」
遥希の話がノンストップで、話に割り込む隙もなかった。
「だから私にどうしろと?」
そう愛姫は答えた。
「奏多には渡さないよ…」
と言いながら愛姫に近づいてくる遥希。
「怖いっ…誰かっ」
助けを呼ぼうとする愛姫の口を手で塞ごうとする遥希。
「んっ…」
まるで助けを求めても無駄だと言っているみたいだった。
「い、息がっ…」
口を塞がれていて息が出来なくなっている愛姫。
呼吸困難になり、パタっと倒れ混んでしまう。
「そ…う…」
颯の名前を呼びながらロッカー室で倒れる愛姫。
息切れして呼吸困難になると思っていなかった遥希は、慌てた表情をするが、冷静になり、愛姫の横で座りこむ。
「ごめんな…俺って大人気ねぇな…」
意識を失っている相手に声をかける遥希。
自分が酷いことをしてしまったと自覚しているようだ。
すると、ドンドンっとドアを叩く音が聞こえた。
「おいっ!!遥希!!中に愛姫といんだろ??」
遥希はすぐにこの声が誰だか分かった。
ドアの叩く音があまりにもうるさいのでドアの鍵を開ける事にした。
──ガチャ──
ドアを開けて中に入ってくる奏多。
中に入るとロッカーの前で倒れている愛姫を見つけた。
「てめー、やって良い事と悪い事の区別ぐらいつけらんねーのかよ」
遥希の胸ぐらを掴み威嚇する奏多。
そして、倒れている愛姫を起こそうとした。
「愛姫!!愛姫!!お願いだから起きてくれ」
愛姫の身体を優しく揺らしながら起こそうとする奏多。
「俺が医務室に運ぶから遥希は事情を後で話せ。これ以上愛姫に何かしたらいくら先輩の遥希でも許さないからな。恋愛に歳は関係ないしな」
そう言って愛姫の事をお姫様抱っこをしながら医務室に運ぶ奏多だった。
ロッカー室に取り残された遥希はロッカーを蹴っ飛ばす。
──ドンッ──
「いつの間に呼び捨てになってんだよ…親密になりすぎじゃね?俺の方が先に好きになったのに…」
奏多が愛姫の事を呼び捨てにしていたのが気に食わなかったらしく、イライラしていた。
「愛姫ちゃんが全部悪い…俺を好きになってくれないから…そうって誰だよ…」
そう、ブツブツと独り言を言いながらロッカー室から出る事にした遥希。
ロッカー室から出るとロビーから稽古場に向かおうとしている奈々未と遭遇する。
奈々未は今までの出来事を知らない為、遥希はある事をしようとした。
「奈々未!!」
大きな声をあげて奈々未を呼ぶ遥希。
奈々未は呼ばれたことに気づき、振り向いた。
「遥希??どうしたの?」
奈々未が遥希に突然呼ばれた事に吃驚し、首を傾げながら相手を見る。
「奏多の好きな奴…知ってる?」
何かを企んでいるかのように奈々未に聞いてみる遥希。
薄々気づいているであろう奈々未は頷いた。
「愛姫ちゃん?」
奈々未の口からその名前が出ると思っていなかった遥希。
それなら話は早いと考えた。
「俺は愛姫ちゃんが好きで奈々未は奏多が好き…俺が何を言いたいか分かるか?」
まるで、お互いの好きな人を奪い取る為にタックルを組もうと考えている遥希だった。
そして、それには動じない奈々未。
「どうするのか決めるの愛姫ちゃんだし、私は奏多に振られたの…だから協力は出来ない」
そう、きっぱり答えて奈々未はその場を立ち去った。
これ以上話をしても、上手い具合に調子良い事を言われるだけだと思っていたからだ。
「人の気持ちも知らないで…」
そう、呟き稽古場に入る奈々未だった。