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サンド×リヨン  作者: 東海林 愛理
11/17

目撃者

人影が見えたので、恐る恐るステージの方に近づいてみると、奈々未らしい人物と男の人が立っていて、キスをしていたのだった。


「あっ!!す、すみません…」


勝手に覗き見をしてしまったと思った愛姫は謝った。


そしてこの場から立ち去ろうとすると、声をかけられた。


「あれ?愛姫ちゃん?どうしたの?」


どうしたの?って聞かれる意味があまり分かっていなかった。


そっちがどうしたの?だよ。


と、思っていて、愛姫は奈々未の事が心配で探しに来たのに居たと思ったら男の人とキスしていたんですから。


「ごめんなさい…見てしまいました…」


と下を向きながら謝った。


「何を?もしかしてキスしてた事?ごめんはこっちだよ…だって私が無理やりしちゃったんだもん」


自分はあくまでも悪くないと言っているような言い草をする奈々未。


その横で恥をかいてるであろう男の人…。


奈々未はその相手を探していたのであった。


「隣の方は?」


と、愛姫が聞くと


古屋(ふるや)奏多(かなた)くん!!私の好きな人」


とウインクをしてキメたポーズを取る奈々未に対して少し苦手意識が出てしまった。


付き合ってもいない人にキスをするという行為をしている奈々未に対して。


この場から逃げたかった愛姫は、


「そうなんですねー」


と棒読み口調で言いながらホールを出たのであった。


今すぐにでも出たかったのか、走る愛姫。


走る音だけが鳴り響く渡り廊下内。


走っていると誰かの肩とぶつかってしまう。


──ドォォン──


「いった…」


ぶつかってしまい、転んだ愛姫に手を差し伸べようとする遥希。


「愛姫ちゃん、御免」


と言われ、その声に反応する愛姫。


遥希の手を掴んで立ち上がった。


「こっちこそ、ごめんね。ありがとう助けてくれて」


遥希は走っていた愛姫の行動に心配していたのだった。


「走ってたみたいだけど何かあった?」


と遥希に聞かれたが、黙りしてしまう愛姫。


「ううん、何もないよ」


と言い、首を振るのだった。


「奈々未と会えたの?」


奈々未の事を探していたことを分かっていた遥希は自分も探していたのだった。


会えたのかも心配だったので、確認も兼ねて聞いてみた。


すると、頷き返事をする愛姫。


元気がないなと愛姫の様子を見て感じている遥希だったが、何かを抱えていると感じ取った遥希はそのまま何も聞かずにいた。


「愛姫ちゃんこっちに来て」


といきなり愛姫の腕を引っ張り、何処かに連れて行こうとする。


「えっ、ちょっと、待って…いたっ…」


抵抗しようとするが引っ張られる勢いの強さに圧倒されてしまう。


愛姫が連れてこられた場所は稽古練習をする場所だった。


中を覗いてみると、発声練習や戦闘シーンなどの練習、台本読みなど。様々な事をしている人達が居たのだった。


「皆…練習しているんですね」


ボソッと遥希に言った。


小さめな声だったが、遥希には聞こえていたらしい。


「愛姫ちゃんは台本貰った?」


と聞いてみたが、愛姫はまだ、台本を貰っていなかったのだ。


「愛姫ちゃん監督の話を聞いてなかったでしょ」


苦笑いをしながらも、愛姫を何処かへ連れていこうとする。


「ごめんなさい」


そう、呟きながらも遥希の後をついて行った。


「ほら、此処だよ此処。スタッフさんが配ってる紙、あれ台本だよ。貰いに行かないと」


と言いながら、愛姫の背中を押す。


背中を押された愛姫は前に進み、台本を、貰うのだった。


「ありがとうございます」


そう言いながら台本を受け取った。


あまりにもの初めての事が多すぎて驚いている愛姫。


あの時、遥希とすれ違ってなければ台本の存在すら忘れていたのだった。


「遥希くん…ありがとう」


そう、お礼を言い、台本の中身を確認する。


自分の台詞はどの場面からなのか、試し読みをしていた。


「なんなら、俺と一緒に練習する?」


台本を読んでいる愛姫に練習を一緒にしようと言う遥希。


遥希は愛姫が初めての事が多くて戸惑っているだろうと思い、一声かけた。


「この後は何も予定ないし、社長から何も言われてないから付き合うよ」


と言い、愛姫が返事をする間もなく稽古練習場所に連れていく。

この後の遥希の豹変ぶりがたまらなく好き。この強引な男め!!

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