いつか王子さまが(ミオ)1
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私はパニックになっていた。何故なら王子…を名乗る人が私の前に跪いて手にキスしたからだ。
しかも、愛しい人とか、魔女の呪いから救ってくれたとか言っていた。
初めて会った人なのに?どどどうして?
へ、変質者なのか?こんなにかっこいいのに!残念すぎる。自分が猫とか王子とか。
でも確かにさっきの猫の瞳の色と同じではある。そしてサラサラの灰色の髪。もう一度撫でたくなる色だ。
…で、でもでも、ここはヤマトイ国、挨拶にキスする習慣なんてないのだ。そんなものは、子供の頃読んだ異国の物語の中の出来事のはず。
バンッッ!
急に音がして我に返る。ジルが、自分のカバンを、地面に叩きつけていた。カバン壊れるよ!ジル…。
「くそっ!ミオから離れろ!変態野郎!」
血の気の多いジルは、そのまま掴みかかりそうで、思わずジルの腕を引っ張り止める。
昨日だって、クラスの友達と殴り合いになって、先生に別室でこってり絞られていたのだ。まぁその友達とはまたケロっとしてバカ話してるんだけど。男子はワカラナイ。
でも外で問題起こしたら、停学や退学だってあるかもしれない。それが私が巻き込んでしまった事だったら、後悔してもしきれない。
「ジル!帰るよ!」
ジルは、私の手を振り解かなったが、腕から手を離したら暴れそうな勢いだ。片手で掴んだ腕は離さないまま、もう片手でカバンを拾い、後ろに引っ張る。
私の力なんてジルに比べたら大した事ないはずなのに、それでも引っ張られてくれる。ジルは、優しい…というか、まあ、女子一般に弱い。私が女子扱いかどうかは別だけれども。
「良い、ナイトを持っていますね。」
ニコニコと、笑顔で見送ってくれる緑の目。こっちは必死なのに何故そんなに余裕なの…。しかも、ナイトって!この国ではそんなの無いです。
「ミオさん、と呼ばれていましたね。それでは、また、近々お会いしましょう。きちんとしたご挨拶はその時に。」
それどころじゃないです。今はこの猛獣を家に届けないと。