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(番外編)ジルの失恋、そして世界平和

 青く輝く水面が揺れる。海は今日も凪いで平和だ。ジルがドラゴン達と海辺で見張り番をしながら、岩に腰掛け海を眺めていると、ドラゴンが話かけてきた。


「何考えてる?ご主人さま。」

「ミオの事かな。」

「ミオの事だろ。」

「まぁ元気出せよ。」

「結婚式綺麗だったな。」


 結婚式とは、先日挙げられたミオと王子の結婚式だ。小さな島に王族や国賓、ヤマトイ国の友達や親兄弟が溢れかえり、賑やかに祝福されてミオはとても幸せそうだった。


 赤、白、黄、緑、青のドラゴン達はそれぞれゴツゴツとした岩に乗り、ジルと一緒に海を眺めながらのんびりと語りかけてくる。

 ジルは、空と海の境目を探しながら答える。



「俺さあ。もしかしたら、ミオの事、好きだったのかもな。」



「ご、ご主人さま。い、今気付いたんですか。」

「ええっ!まさか。」

「まさかの…本人だけが気付いてないやつ。」

「いや、今気付いたんだから抉っちゃダメ。」

「き、キットイイコトアルサ…」


 ジルは思い出す。結婚式の時、クリストファー王子に頬にキスをされて真っ赤になっていたミオを。可愛くて綺麗で、…何か胸が痛かった。

 ずっと、何だか気になるご近所の同級生のままいるんだと思っていたのに。不思議に時間は次へ次へと流れていく。


「まあ、だからって別に何も変わらないけどな!」


 俺は強がって笑う。でも嘘じゃない。こうして騎士にもなったし、ミオも守れる。しかもドラゴン達が勝手に懐いて何処にでもついてくる。ちょっと面倒くさい時もあるけど、憎めないヤツらだ。 

 それに、あの戦いを知る他の国からは勇者だの救世主だの言われてるらしいしな!やっぱスゲエな俺!


 そういえばあの戦いの時の学園の方の様子を、ウエノ先生が後で教えてくれた。

 

 俺達が屋上から皆に見送られて、王子達と一緒に黒い霧の城にむけて飛び立った後だ。

 俺達が空を渡った道筋を辿って渡ってきた魔物がやはりいたんだそうだ。屋上に現れた魔物を、レオナルド王子の守護を受けたウエノ先生が素手でバッタバッタと凪倒し、こぼれた魔物を木刀の魔剣を持った悪ガキどもが嬉々として討ち倒していったらしい。ほぼそれで全滅と思ったが、脇をすり抜けて校舎に入っていこうとした魔物を家庭科の先生がフライパンでバチーンと叩き潰したそうだ。家庭科の先生。かっこいい。いつも授業中ふざけててごめんなさい。

 

 フライパンは、王子達に守護も魔力も込めてもらってないのに、何故魔物を倒せたか、後で議論になったそうだ。魔力がないと思っていたヤマトイ国の人たちも、微かに身に纏っているのだろうという事や、この国で「気」と言われるような物もそれに近いんじゃないかとか、第六感というのも、魔力に近いのかもなあというような事をウエノ先生は言っていた。まあ、俺には、本当に無いんだがな!


 ミオのかあちゃんには、結婚式の時にも会ったが、戦いの時もかなり心配していたらしい。そりゃあそうだろう。いつも守ってくれてありがとうと何度もお礼を言われた。ただの近所の悪ガキだった俺に、あんなにお礼を言うなんて。ちょっとジーンとしてしまったのは内緒だ。

 

 でも、今は、家に置いてあるすずらんが、綺麗に咲いているのを見ると安心するのよ、とミオのかあちゃんは言った。


 すずらんって、あのすずらんだよな。クリスが学園に来た日に、俺にミオの好きな花を聞いたんだ。それで作った魔法の花。二人の気持ちが通じ合っている限り枯れないんだとか。

 俺達は戦いの後、学園に戻り卒業まで過ごしたが、ミオが卒業して島へ渡る前にすずらんを家に残していったそうだ。

 ーミオのかあちゃん、良かったな。

 

 海を見ながら思いを馳せていたが、ふと、空にうかぶ黒い点が二つ、近づいて来るのに気がつく。あれは何だ。

 

 みるみるうちに接近してくる。それは天龍と、黒いドラゴンだった。黒いドラゴンは、あれからずっと天龍についてどこにでも行くようになり、今はほぼヤマトイ国に住んでいる。何やら修行してるんだそうだ。


「よお!元気か!」

「土産じゃぞ。ほれほれ。」


天龍にはばあちゃんが、黒ドラゴンにはムサシが乗っている。

 

「失恋しても、だいじょうぶだあー!」

「今日は、一緒に、飲み倒そうかのう。」


え、何で知ってるのさ。さっき、気づいたのに。


「みんな知ってるよおーーー!」

「ふぉっふぉっふぉ。」

「修行だーーー!」


 ヤマトイ国の、炭酸が弾ける米酒の新作が美味しいと、沢山持ってきてくれて、果物もつまみも肉もあって、大騒ぎだ。


「たまには、ドラゴン達に警備を任せて、旅に行こうぜ。」


 行こう。それもいい。そしてまた戻ってくるんだ。


「そういえばさ、新事実が発見されたぜ。」


何だ?


「黒い霧は、色んな人のちょっとした悪意や負の感情で、常に世界中で僅かに沸いて出ているって事。」


目に見えない程に薄く。気が付かない程に漂う。え、それはちょっと…大丈夫なのか?


「そして、目に見えないくらい薄く小さい魔物が産まれてるのさ。人知れず世界中至るところで。」


 いやそしたら、だんだん増えて大変な事になるんじゃないか。


「いや、今も昔も一定以上増えないで均衡を保っているらしい。」


どうやって。


「ほら、よく、見えない敵と戦ってる子供達がいるだろ。」

「ああ。」

「あれでかなり減ってるらしいよ。」


ええーーー!!

ちびっ子。ーーすごいな。

あれ、確かに超真剣に戦ってるもんな。


 世界の平和はちびっこ達が見えない敵と戦っているお陰だったのか。


今日も世界は平和だ。


 よし、旅に出よう。新しい世界に。戻ってくる場所があるから。




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