ドラゴンとジル
ドラゴンを拾ってしまって懐かれました。
ジルは赤いドラゴンを従えて、未だ完全には晴れない霧の中を歩いていた。行く先々に霧で動けなくなって倒れている動物達や騎士達がいるので、上空に合図を送ってはムサシに雲で降りて来てもらい、霧の外へと救出してもらう。霧に害されて命の危機を感じていた者達は、赤いドラゴンを連れて霧の中を平気で歩き回り助けてくれたジルを、救世主の様に思い勇者として目に焼き付けたとか。
「ご主人様、城の回り八方にドラゴンの像があります。片っ端からぶっ壊してしまいましょう」
「俺の事は親分って呼んでくれっていってるだろ」
「イヤです。ご主人様って呼びたい」
ジルにとても懐いた赤ドラゴンは、ジルと共に歩き回っては今だに時々湧いてくる魔物をひとなぎで吹き飛ばした。ジルは、霧を噴き出している像を殴ったり蹴飛ばしたりして壊して回り、赤ドラゴンの時と同じ方法で、白、黄、緑、青のドラゴンを従えた。像を壊す度に空気中の霧の濃度は薄くなっている様だ。でもまだ3体残っている。
「残りのドラゴンは、手強いと思います。」
「どんなヤツだ?」
「封印される前は、ドラゴンの中でも桁外れに強かった……。」
城の周りのドラゴンの像は、その昔、当時の王宮の魔法使いに封印された8頭のドラゴンの魂を閉じ込めた物だったそうだ。千年王城を見守れば許され、人を襲わないと誓いを立てれば解放されるはずだった。今年がその最後の千年目だったのだが、突然何者かの魔力に支配され、魔力の黒い霧の噴出口にされていたらしい。
「嫌な魔力だったんだ。がんじがらめにされて、力を吸い取られて、生きる希望が無くなって。……だからジル、ご主人様、全てをぶち壊した君が、魔力の全くない君が、どんなに眩しく見えたか。」
ウンウンと、他のドラゴンも頷く。ジル、ドラゴンにはもてもてだった。
その頃、アカリナ達は、城の入り口近くで濃い霧に阻まれて、お互いが見えなくなっていた。
アカリナは身体の痺れが限界まできていた。クリストファー王子とジーヤを呼ぶが、全く返事がない。視界も音も遮られている様だった。
ふらつく足を一歩前に出す。城の手前まで来られたのは、それでもアカリナの魔力が桁外れに多く、防護を重ねがけしたシールドが有効だったからに違いなかった。他の大多数の者達は、もっと手前で引き返していたのだ。
仲間とはぐれてしまったが、とにかく霧の元を断ち、霧を操っている術者を捕らえなければならない。何としても止める。王宮の魔法使いなんだから、自分がやらなければ。責任を果たす。…
アカリナに、黒い霧の塊が一気に襲い掛かった。アカリナの前方には、何故か城の入り口ではなくドラゴンの像があり、次々に霧が吹き出している。
アカリナはシールドを強化しながら風魔法を発動して霧の噴き出す像にぶつける。反動があるかと思えば、そのまま魔法は吸い込まれ、黒い霧が増える。アカリナはほぼ力を使い果たし、地面に倒れ込む。そこに霧の中から5体の魔物が現れ同時にアカリナに襲い掛かる。
身体の痺れと、魔力切れですぐに反応できない。
しまった!とアカリナは思う。こんなところでやられる訳にはいかない。皆を、守らないと、私が、やらないとーー
「全く、困った子だねぇ。一人で頑張らなくていいんだよ。」
誰かが、アカリナの前に立ち、魔物を吹き飛ばす。
ばあちゃんと、龍だった。




