情報収集(クリストファー)
ミオが僕を好きだと分かって、すっかり浮かれている僕を尻目に、ジーヤとアカリナは着々と周辺国の情報を集めていた。
「やはり周辺国ではケルリア国と連絡が取れないらしいですね。友好国のフォーラ国やオピニオ国は使者を出して状況を把握しようとしています。それからこれは友好国ではないのですが、ビルト国の王が暗殺されたそうです。」
ビルト国との関わりは少ない。賢明なケルリア国王は、あえて距離を保っていたのだ。
ビルト国王は、種族による差別的な発言を繰り返し、他国に対しても諍いを煽るような挑発的な言動を取り続けた。各国と一触即発な緊張関係となり、いつ何処と戦争になってもおかしくない状況にしつつ、水面下では大量の武器を他国に売りつけていたのだ。
きっと暗殺される理由については、身に覚えがありすぎる程ある事だろう。
今度はアカリナからの報告だ。
「王城の他の魔術師とは連絡が取れないから、王都に住んでいる魔術師と水鏡で話してみたの。取り引きのある商人がいつもの様に城を訪れたところ、門番もいなくて入れなかったらしいわ。予定されていた行事もなく、出入りもなく、まるで城に誰もいなくなってしまったかの様だって。」
と、そこに急にばあちゃんが現れる。
「ケルリア国のシノビと連絡したんだがの」
「どうやって!」
「色々あるんじゃよ。」
ばあちゃんは、サユリさんの姿のままでもばあちゃん言葉で話すようになってきている。見た目とのギャップが甚だしい。それでも隣のクラスではギャップ萌えだのと言ってますます人気らしく、ばあちゃんは非常に楽しそうだ。
「ケルリア王の王城の中は、人っ子ひとりおらなんだそうじゃ。」
「入れたの?!!」
「入ったのじゃ。」
シノビ、すごい。結界とか関係ないんだろうか。
いや、それよりも。
「誰もいないって…。」
「王や王妃は?使用人は?魔術師や騎士達は?」
「誰も、いなかったそうじゃ。」
ガランとした城内。抜け道になりそうな所まで見たらしいが、誰もいなかったらしい。暗殺かとも思ったが、誰かの死体も、騎士が闘った跡も、家具が壊れた様子もなかったそうだ。
まるで、人だけが消えて、そのまま取り残された様な城内だったと。
「父上、母上…」
「予定通り、週末の明日、朝から様子を見に行ってまいりましょう。全てはそれからです。」
何かあった時のジーヤは心強い。先王の時もその前も、有事の際はいつもジーヤが近くにいて王族を守ったと聞いている。…ジーヤ、本当に何歳なんだろう。
「クリストファー王子、王から預かっていた物があります。お守りだと思って持っていてください。」
そう言って手渡されたのは、定規だった。えー。ここはカッコいい短剣とかくれる所じゃないの。定規って。
僕は、15cm位の、紋章の入った小型の定規をポケットに入れた。
父上、ありがとう。僕はガッカリなんてしていません。大事に使います。ちょうどこの後の授業は数式と計測だし、しっかり勉強しろって事ですね。ジーヤも、僕がわざと定規を忘れてミオに貸してもらおうと思ってたの、バレたりしてないよね?タイミング良すぎない?
ジーヤは優しげな、ちょっとイタズラな顔でふふっと笑った。




