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俺はジルだぜ

 ほんと、ミオはバカだ。いつもいつもどこか抜けてるし、小さい頃はコケて泣いてたし、可笑しい事があると爆笑してたし、ヘビを持って追いかけると必死で逃げてたし。

 ペン忘れて借りれば、返せと言うから返すフリして逃げたら追いかけてくるし、…面白いからやめられなくなって散々逃げたら怒ってたし。

 笑うし泣くし怒るし。ホントにミオは。


 あの時、ミオは泣いてた。アイツがミオを泣かせた。アイツはいい所の商家の息子で、色んな女子にいい顔してた。運動神経もいいし身長も高くて相手の気持ちにも敏感だったから、実際モテモテだったが、一人に絞らなかった。勘違いした子は多いし、ワザとそうさせたのはアイツだ。

 男子同士なら、一緒に遊ぶのは楽しいヤツだった。でもだからこそ、目の前でミオに声をかけているのを見て微妙な気持ちになった。

 ―ミオは、大丈夫か?まぁでもミオだし、分かってるだろ。そう、思っていた。


 ある時、ミオはアイツの本当の事に気付いて、傷ついて泣いていた。ああ、ミオは、アイツの事が好きだったのか。―そう思ったらめちゃムカついて、アイツを殴った。アイツも殴り返してきて、ケンカになり、ウエノ先生が止めにきた。

 俺もアイツもこってり絞られて、夕方になってやっと帰された。


 帰り道、アイツは笑って言った。

「ジル、頑張れよ。」

 何をだよ。

 それからこうも言った。

「俺、もうすぐ家の都合で転校するからさ。後はジルがミオを守れよ。」


 しばらくしてアイツは転校していった。アイツの本当の事は、もっと別の所にあったのかもしれない。…もしかしたら。



 ***


 ほんと、ミオはバカだ。俺は、また、窓に向かって泣きそうな顔をしてるミオを見つけてしまった。

 王子は、アイツとは違う。いや、一緒なのか?難しい事は分からないが、ミオを泣かせるな。いや、ヘビ持って泣かせてた俺が思うのはおかしいか。でも俺が泣かせるのはいいけど、他のヤツが泣かせるのはムカつく。―なんでだ?


「昨夜は途中で寝ちゃって」

 とかいうミオの声が聞こえてきて、バッとそっちを向く。王子と話している。

 は?何?危ないだろ。何だよそれ。ミオに手を出すな。ミオも夜とか無用心だろ!そんでまた泣くんじゃねえか。


 廊下にミオを連れ出した後、結果ミオを怖がらせてしまったが、何であんな事をしてしまったかよく分からない。

 ただ、俺の腕と腕の間の空間に囲いこんだだけで、少し震えたミオが、思っていたより小さくて、細くて、…一瞬抱きしめてしまいそうになった。

 ミオは必死で逃げて、それから笑って、冗談だった事にしようとしてた。ごめん。ミオ。


 その後、逆上した王子は、空き教室で俺を睨みつけた。いつもは上品な涼しげな緑の目が、怒りで爛々と輝く。 

「ミオに、触るな。」

 と王子が言う。空気が振動し、空き教室にあるイスや机が勝手にぶつかり合ってゴトゴト音をたてる。

「触ってねえし。―っつーか、お前こそ、ミオを泣かせるな!」

 ガラスがピシッとひび割れる。

「泣かせてない!」

「泣かせてるんだよ!アイツと同じだ!」

「…アイツって、誰。」

 あ、しまった。王子はアイツを知らない。思わず口ごもる。

「……アイツって、…誰。」

 ガラスがピシピシッとひび割れていく。

「…ミオを、泣かせたヤツだよ。ミオは、そいつを好きだった。だから、また、泣くんだったら俺は…。」

 俺は?俺何言おうとしてる?


 ガラスが割れて、飛び散る。腕にかすり、痛みがはしる。

 やられた。卑怯なヤツめ。ガラスで狙うなんて。カッとして、飛びかかる。拳で、綺麗な頬に、一発きめてやった。


 それから、ジーヤさんが来て、さらさらっと場を収めてくれたけど、だいぶ前からニコニコと眺めてたのを知ってる。


 後で、「若いっていいですねぇ。」とか

「保護を破って殴るとはなかなか。」

「魔法が効かない体質か?」

 とか楽しそうに言っていた。ジーヤさん、何物?


「ちょっと、この頃王城で気掛かりな事がありましてね。もし何かあったら、ジルも一緒に来てくださいね。」


 ジーヤさんにスカウトされた。ひゃっほう。俺やっぱりスゲエのか?やっぱりな。そうだと思ってたぜ。


 それから、ムサシが来て、

「お前、おもしれえなあ。しょうがねえヤツだ。」

 とか言って、俺の頭を撫でくりまわした後、修行だー!とか言って山とか川とかに遊びに誘ってくれるようになった。 

 ムサシの遊びはいつも無茶で命掛けだ。木から木に飛び移ったり、滝から飛び込んだり。一緒にやって、死にそうなると、サラッと助けてくれて、

「生きてるじゃん、スゲエ、スゲエ。」

とめちゃ笑って褒めてくれる。そう。俺スゲエ。

…でもムサシ。俺、一回死んだら終わりだから。ギリギリで遊ぶのやめない?

 そして、たまに隣のクラスのサユリさんがニコニコして木の上から眺めているんだがあれは何なんだろう。あんな可憐な美少女が6メートルもありそうな木の上で微笑んでるの、なんか背筋が寒いんだけど。もう色々理解不能だけど、まあ、俺は楽しいからいいか。

 

 王子とは、仲直りして、ミオを泣かせない事を約束した後、アイツの事を根掘り葉掘り聞かれた。ガラスがまたミシミシいっていた。止めてくれ。




いつも読んでくださっている方、本当にありがとうございます!!!!

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