学園(ミオ)4
ガタン、と音を立てて立ち上がったジルは、しばらく固まっていたが、急に怒ったような顔になると、つかつかと近寄って来た。
「ミオ、ちょっと来い。」
「え?あ、うん。」
ユーノも王子も、ジルの雰囲気にビックリした様な顔をしている。
私も驚いたが、まあいつもの事かとも思う。ジルは、沸点が低いからすぐ怒ったり人とケンカになったりする。でもすぐ元通りだ。悪いヤツじゃないのだ。
基本女子には優しいし。あ、でも子どもの頃ヘビ持って追いかけてきたのは許さん。
とかボーっと思いながらついていくと、ジルは廊下に出てくるっと振り返って、怒った顔のままヅカヅカと近づいて来た。こ、こわいよ。ジル。
「王子が、好きなのか?」
と、怒ったまま聞くから、ごまかせない気がして、思わず、
「うん…。」
と、答えてしまった。そうか。やっぱり、私はもう王子の事が好きなんだなと、言葉にしてしまってはっきり気づく。それが何だかホワッと嬉しくて、きっとそんな顔をしたんだと思う。ジルが、私を見つめてちょっと切なげな顔をする。
ジルは、私の最初の恋の時も、何も言わずに近くで見ていたから、心配してくれているのかもしれない。確かに、ずっと迂闊に誰かを好きにならないと決めていたのに。他国の、いつか帰ってしまう王子だなんて。また、大勢の中の一人になって忘れられてしまうなんて。
ポロっと、涙が零れる。
あ、しまった、心配かけちゃう、ごまかさなきゃ、と頭の中でぐるぐると慌てる。
ジルはプツッと切れたように、さらに至近距離に来る。
―しまった怒られる!え、でも何で?―
と思いながら後退り、背中が壁にあたる。キレたジルはコワイのだ。に、逃げなくちゃとキョロキョロしたが、
バン!と両側に手をつかれてしまう。ジルに逃げ道を塞がれて、自分より高い身長や、筋肉質な腕に囲まれ、思ったより動けなくて焦る。
あ、なんだかマズイ。
「俺なら、ずっと守るのに。」
苦しそうな声で至近距離で言われて、非常に焦る。ジル?だってジルだよ?そんな事、真顔で言うなんて。
きっと、何かの罰ゲームに巻き込まれているに違いない。ジャンケンに負けて、女子にこういうの言ってこいとかいうやつ。それでもなんだか怖くなって心臓がバクバクしている。と、とにかくここは穏便に逃げないと!
そして、私は閃いた。横に動けないなら、下に逃げればいい!思いついたら、すぐ実行。パッとしゃがんで、腕の中から脱出する。下からすぽっと抜け出て、捕まらない所まで走って振り返る。
何でもなかった事にしたくて、
「へへっ、逃げれちゃったよーだ。」
今までのように笑ってふざける。―心臓がバクバクしているのを隠すように。
何も今までと変わらないように。
「何を、じゃれ合っているのかな?」
ヒンヤリとした声のした方をゆっくり見る。そこには冷え冷えとした笑顔を浮かべた王子がいた。
何故か…後ろに吹雪が吹き荒んでいた。




