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君と私の事(ミオ)3

ふわふわとした猫の背中にぎゅっとつかまると、窓からふわりと飛び立つ。

 

 落ちるような錯覚に胸がひゅっとしてますますしがみつくが、落ちないように魔法がかけてあると言っていたのを思い出し、少し安心して周りに目を向ける。


 自分の部屋の窓がだんだんと小さくなり、家々の灯りがつぶつぶと輝く。銀色の満月にぼうっと照らされたパッチワークのような畑や、淡い光を反映してチラチラと水面の光る川が見える。


 綺麗な夜だった。


 声にならない歓声で頭の中でわあとかキャーとか言っていたつもりのミオだったが、知らないうちに声に出していたようで、猫の姿のままクリストファー王子がふふっと笑う。


「寒くない?ミオ。」

 

 何か外気を遮断しているのか、風の流れは感じるが、肌に直接切り込んではこない。


「温度調節バッチリです。」

「良かった。」


「…どこに行くの?」


 上空に吹く風にうまく乗りながら、猫が答えてくれる。


「ミオの行きたい所に。」


 満天の星と銀色の満月の下をゆっくりと駆ける。


「はああー。もう綺麗すぎて。今ここが最高です!」


 元気いっぱいのミオの返事に、王子はつい吹き出す。


「じゃあ、ちょっと美味しい物を調達して来て、一緒に星を見よう。…少しチカチカするけど、気にしないで。」


 チカチカって?とミオは疑問に思ったがすぐ解った。急に、周りの景色が細かい光の粒になりぐるぐると周りはじめ、空気がぎゅうと圧縮されたかのようになる。そしてとたんにカッと粒が弾け眩しい光に包まれた。

 

 ミオは驚いて目を閉じたが、そのとたん空気が変わり、目を開けた時には、全く違う異国の景色の中を飛んでいた。そしてすぐ目の前にある塔の上に猫は降り立つ。


「ふふっ。ミオ。静かにね。お城の厨房に、ちょっと、お菓子を取りに行くからね。」

 

 猫からクリストファー王子に戻りながら、いたずらっぽく笑うと、ミオの手を取って歩き出す。


 子供の頃からお世話になっていたメイド長が、クリストファー王子のために内緒で戸棚に様々なお菓子を入れてくれていたそうだ。今はたまにしか帰らないけれど、いつ行っても必ず新しいお菓子を入れてくれてあるらしい。愛を感じる。そして、王子可愛い。ミオはふふっと笑う。


 塔からそっと階段を降りてかなり下まで降り厨房まで行くと、戸棚の中には、赤いベリーの蜂蜜タルトが入っていた。

二切れを近くにあったカゴに入れる。それから王子はどこからか林檎のソーダ水を2本持って来てカゴに入れた。


 ミオと王子は目を合わせて笑うと、また階段を登り、塔の上に出る。誰かに会わないかヒヤヒヤしたが、あえてなのか、たまたまなのか結局誰にも合わなかった。


 王子はまた翼の生えた猫に変わる。ミオは今度は自然に背中に登ると、カゴを抱えながらフワフワの背中にしっかり捕まった。


「ミオ、行くよ。」

と、嬉しそうに猫が言う。


 塔から飛び立ち、もう一度チカチカのぐるぐるの光をくぐると、もう元の場所だった。ヤマトイ国の、満月の夜だ。


 猫は、近くにあった木の、ちょうど太い枝が3本交差している上に降り立ち、安定の良い場所を選ぶと、猫の姿のままミオを包むように丸くなった。

 

 ミオは、猫の毛皮に包まれて、フワフワのモフモフで嬉しくなり、近くにあった尻尾をぎゅうと抱きしめた。

 王子は、何か小さい声で

「おお、3000超え」とか呟いていたが何だろう。

  

 それからは、銀色の満月と、満天の星を眺めながら、赤いベリーの蜂蜜タルトを食べたり、(王子は猫のままだったので、ミオが口まで運んであげたが、とても恥ずかしかった)林檎のソーダ水を飲んだりした。

 手がベタベタになると、猫が舐めて綺麗にしてくれたが、ミオはもう心臓が爆発しそうだった。


 そのうちに、流れ星が増え始め、モフモフの毛皮に包まれたまま、二人で眺めた。一度に5、6個の星が同時に流れた時にはびっくりして歓声を上げてしまった。

 優しく、楽しい時を過ごしながら、ミオは毛皮に包まれてうとうとしてしまう。

 

 猫は、そっと、ミオを背中に乗せるとミオの部屋へと送り届けた。王子の姿に戻り、ベッドにミオを下ろすと、そっと頬にキスをした。部屋に飾ってあるすずらんの花が輝き、光を放つ。王子は嬉しそうにそれを見つめた。


「ミオ、おやすみ。良い夢を。」



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