君と私の事(ミオ)2
ほわほわと暖かくて柔らかい丸い毛玉のような子猫をむぎゅむぎゅと離し難く抱きしめながら、徐々にある事柄に気がつき始めたミオは、ドキドキし始めた。
こ、この猫はあの時の猫と一緒じゃないかな。と、いう事は…
背中や耳の周りを撫でられて気持ち良さそうにしている子猫は、グレーのフワフワした毛並みに、目が合うと緑の綺麗な目をしていた。以前は薄汚れて痩せてしまっていたけど、今はふかふかのピカピカで健康そうだ。すっと首を伸ばした様子は高貴さもあって、そこらへんの野良猫とはだいぶ雰囲気が違っている。
前は、猫を撫でていたらその後王子が現れたんだった。王子は、猫の姿から戻ったとか言ってたっけ。そんなまさか。だとしたら。と、猫を抱いたまま考える。
ポン!と音がして腕の中の子猫が消え、逆にミオは真っ赤な顔の王子の腕の中にいた。
「も、もう無理…」
と、呟いて、王子はミオをぎゅーと抱きしめた。
「え、えええー!」
やっぱり、もしかしてもしかすると王子だったりと思ったがそうだった。ぎゅうぎゅう抱きしめられてワタワタしてしまう。頬が熱い。心臓がバクバクして、頭の中まで響いてくる。
「く、苦しいです。」
「あ、ごっごめん!」
王子はパッと手を離し、心配そうな顔でのぞき込んできた。息は楽になったのに、腕がほどかれて少し寂しく感じた自分にびっくりする。
心配そうな王子の目と目が合う。王子も真っ赤で、ちょっと照れたように笑った。
「ミオ、急に来て、ごめんね。」
「え、ううん。ちょっとビックリしただけだから。…あの子猫、本当にクリストファー王子だったんですね。」
「うん。そうだよ。あれから自由に姿を変えられるようになって、あちこちこっそり遊びに行くのに便利なんだ。」
「こっそり?…ふふっ」
思った程、品行方正な王子さまじゃなかったのかなと思って少し笑うと、王子も眩しそうな目をしてから輝くような笑顔で笑った。
いやもう、眩暈がするようなキラースマイルだから。倒れそうだから。後ろに花が舞ってるから。
「ミオ、誰にも内緒で、お散歩に行こ?」
ん?なんですと?夜だけど。2階だけど。
王子はシュルンと子猫の姿に戻ると、グルグルと光の粒に包まれ、それから人より少し大きい程まで大きくなった。ライオンやチーターのようであったが立て髪は無く、背中には白い大きな羽根が生えている。
「ミオ、乗って!」
えええー!ど、どうやって?というか、今朝も同じ様なやりとりがあったような。
大きな羽根の生えた猫は、ゴロゴロと喉を鳴らしながら姿勢を低くして、背中を見せる。振り返った緑の眼差しは、優しく細められている。
「俺が乗せてあげようか?」
と、突然ムサシさんが現れる。ヒョイっと抱えて背中にぽふんと乗せてくれた。
…どこから現れた?ここ2階だけど。
猫が、不機嫌そうにムサシさんを睨む。ムサシさんは、
「うへっ!こえー。」
とか言って、全く怖くなさそうに笑いながらどこかに消えていった。
大きな猫の背中はモフモフのフワフワで、夢のような乗り心地だった。暖かくて、猫が動くとホワンと上下する。
「ミオ、落ちないように魔法をかけてあるけど、しっかり掴まっててね。」
猫の姿のまま、クリストファー王子が言った。私はぎゅうと、背中につかまる。
「うん。それでいい。」
猫は、翼を広げる。力強く羽ばたくと、フワリと夜空に舞い上がった。




