表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

お仕事タヌ子   がんばっております

 仕事途中だったが、家に忘れ物をしてしまったので取りに帰ることになった。

今日はタヌ子は仕事があると言っていたので家にいるはずだ。

「ただいまー。タヌ子―、忘れ物しちゃったー。」

部屋に入ると、中はカーテンが閉められて暗かった。テーブルの上にはロウソクが灯っていた。そして奥にゆらゆらクルクルと動く人影が見える。

目を凝らしてみると、タヌ子が不思議な踊りをしていた。

「タ、タヌ子ちゃん?」

タヌ子は踊りながらクルっと振り向いて、指を口の前にたてて「シッ!」っと言った。そして踊り続けた。

なんか面白そうだったので、俺はソファにそっと座り、タヌ子の行動を観察することにした。一通り舞い終わると、タヌ子は頭から大きな布を被り、その上から頭にペンダントのような物を被った。

そして白目をを剥いて天を見上げたかと思ったら、

「フアァァァァァーーーーーーーー!」

と、叫んだ。俺も

「ウワアァァァァァーーーーーー!」

と、驚いて思わず悲鳴を上げてしまったが、口を押えて静かにした。

タヌ子はケータイを床に置き、その上で手をぐるぐる回し始めてまた、

「フアァァァァァーーーーーー!」

と、言った。

すると、電話がかかってきた!

「はい、もしもしぃー、アンドロメダリー・タマラですぅ~。本日のご相談は何だったりしますかぁ~?」

アンドロメダリーって!

しかもその話し方、JKかっ?

タヌ子の行動はふざけてるとしか見えなかったが、電話相談の受け答えはなかなかしっかりしていて、相談者も満足しているようだった。

「あぁぁぁぁぁーーーー。」

電話相談が終わり、タヌ子は疲れきった様子で、訳のわからない鳴声をあげていた。

「大丈夫?タヌ子?」

タヌ子は、ゼーハー言っていたが、冷たいお茶を飲んで少し気分もマシになったようだ。

「けっこうなエナジーヴァンパイアだったわ。」

タヌ子は眉間に皴を寄せて言った。

「エナジーヴァンパイア?」

タヌ子は、知らないの?って顔で、グビグビお茶を飲みながら横目で俺を見た。

「エナジーヴァンパイアってのはね、人のエネルギーを吸い取る恐ろしいモンスターだよ。そういう時はエネルギー使うから、私だけの儀式がいるんだよね。ラグビーの試合の前に踊るハカのような物だね、私にとって。普段は衣装まで付けないんだけど、今日は完全武装した。それでもかなりエネルギー吸い取られちゃった。ヒロキー疲れたよ~。」

「えっ!タヌ子、モンスターからお悩み相談受けてたの???」

タヌ子はクルっと振り返り、真剣な顔をして俺を見た。

「相談してきた人はね、普通の人だったんだけど、エナジーヴァンパイアに纏わりつかれて感染しちゃったの。人にうつるんだよ、コレ。」

「怖っ!」

俺はタヌ子にしがみついた。

「ねー、俺憑いてない?憑いてない?」

「大丈夫、憑いてない。」

タヌ子はハードボイルドな感じに言い放った。

「一緒にいるとすごくグッタリしたり、体調悪くなったりする人っていたりしない?そういう人って、エナジーヴァンパイアの場合が多くて、人のエネルギーを吸い取って自分だけ元気になるような人なんだよ。吸い取られた人も、エネルギーを求めてヴァンパイア化することもあるの。」

「……。」

「心当たりあるの?」

「前の彼女、そうだったかも…。」

「お気の毒に…。」

タヌ子は俺の頭をポンポンとした。俺は「うわーん」と、タヌ子のモッフモフなお腹に顔を埋めた。

「大丈夫、大丈夫。」

タヌ子は俺の頭を撫でながらそう言った。

この肉球とポヨンポヨンでフサフサなお腹があれば、どんな物も怖くないような気がしてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ