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もぐもぐタイム   タヌ子さんって、グルメだね

 猪突猛進のタヌ子の勢いで、あれよあれよという間にオープンテラスのオシャレなレストランに連れ去られてしまった。

「朝ね~、テレビ見ながらお掃除してたら、ここのお店の紹介してて、いいなー、オシャレだなー、美味しそうだなー、ヒロキと一緒に行きたいなー、と思って、思い切って事務所にお誘いに来たの。」

タヌ子はもじもじそう言っている。ニッコニコしている。用意周到、テレビ見た後ソッコー予約も入れていたようだ。


「“シチリア風カジキのインヴォルチーニレモンと香草のソース”でございます。」

ウェイターが料理をテーブルの上に乗せると、タヌ子の丸くて大きな目がもっと大きくなって、スワロフスキーのクリスタルみたいにキラッキラに輝いた。いただきまーす!と手を合わせて、美味しそうにパクパク食べている。一口食べるごとに、顔全体で幸せを噛みしめているようだ。


…かわいいな…。


 ニコニコしながら美味しそうに食べているタヌキを眺めていたら、なんだかすごく心が和んできて、癒された。そんなに美味しいのか?もっと食べろ、タヌ子。俺のもあげようか?なんだか愛するペットにエサをやっている気分になってきた。

 並木道沿いのオシャレなオープンテラスのレストランで、信楽焼き風の大ダヌキと向かい合ってランチを取る。考えてみたら異様な光景だが、悪くない。いや、心地いいとさえ感じてしまう。俺にしかタヌキに見えてないようだし、もし仮に本当にタヌキだったとしても、この心地よさで回りの目などなんだかどうでもいいような気分になってきた。

「ヒロキ、お腹すいてないの?美味しいよ。食べて、食べて!」

タヌ子がニコニコ話している。ニコニコタヌキ、かわいいなぁ。

「ここは、タヌ子がお支払いしますよ。誘ったのタヌ子だし、今日はお給料も入ったしね。」

ん!お給料?そういやタヌ子、何の仕事してんだ?そもそも俺はタヌ子のことをほとんど知らない。

「タヌ子、仕事って何やってんの?」

「私…タヌ子、占い師やってます。」

「えーーー!タヌ子、占い師なの???」

「意外?占い師やってるっぽくは見えないよねーってよく言われるの。」

たしかに。タヌキの占い師なんて見たことない。


 タヌ子は、昔は占い館みたいな場所で占い師として仕事をしていたらしいが、数年前からネットでの相談や電話相談に切り替えて、今は主に自宅で仕事をしているらしい。ウェブ雑誌に占いコラムみたいなものも書いていると言っていた。

「だから時間と仕事する場所は、けっこう融通きくんだ。」

タヌ子はもぐもぐ食べながら言った。

「占い師って、タヌ子なんか霊感みたいなものとかあるの?」

「霊感ってほどじゃないんだけど…野生の感、というか、昔からけっこう感がするどいとこはあったかも。そういう第六感的なものもあるんだけど、計算して出すものもあるし、お客さんの話聞いてアドバイスしたりするカウンセラー的なものもあるんだよね。」

「占い師やってる人、初めて会ったよ。」

正確に言うと、占い師をやっているタヌキに初めて会ったよ、だけど。

「ほんとはね、占い師になるなんて思ってもみなかったんだけど、よく友達から相談されること多くて、相談してきた友達からね、私のアドバイス的確だし、占い師さんに占ってもらったみたいに当たってるって言われること多くて。それからね、私に相談すると、元気になってパワーもらえるって言ってもらえること多いの。それがすごく嬉しくて、たくさんの人に元気になってもらいたくて。それでね、占い師になろうって、思ったんだよ。」

「そうなんだー。すごいなタヌ子。」

「そんなことないー。」

誉められた嬉しさと料理の旨さでタヌキ顔がデレデレダルダルになっている。

「私、暇なときヒロキのお手伝いするよ!」

ヤル気に満ちたタヌキ顔の目の奥に炎が見えた。


こうして、タヌキの飼育生活は始まった。

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