備えあれば憂いなし（内田） 戦には準備が必要だ
ヒロキさんは「居酒屋ぽんぽこの信楽焼のタヌキだ！」と叫んで家を飛び出して行ってしまった。ヒロキさんをそんな危険なところへ一人で行かすわけにはいかない。
ヒロキさんに何かあったら俺の給料は？
生活は？
また就活か？
…小っちぇえーーー！俺―！
いや、そんなこと微塵も考えてない！ ヒロキさんのことを本当に案じているし、何よりタヌ子さんが心配だ！
「エマ！俺はヒロキさんを助けに行くから、君は危ないからここに残りなさい。」
そうエマに言うと、エマはブルースリーのようなツナギに着替えてヌンチャクや木刀を持ってさらにいろんな武器を物色していた。
「エ、エマちゃん？」
恐る恐るエマに声をかけると目をカッと見開いて睨まれた。
「内田！ココハ戦場ヤ！ キサマ丸腰デ戦エルト思ットルンカ！！！」
「あ、あの、お相手は、そんなにお強いのですか？」
ビビリながらエマに聞いた。
「強イニ決マットルワ。サッキ、タヌ子ノ体カラ読ミトッタラ、マトモニ勝テル相手ヤナカッタワ！ キサマ、私ガ彼女デ、命救ワレタデ！」
やばい…。チビリそうだ…。
エマが言うには、その男は魂を乗っ取られているという。何か邪悪な霊が、同じ波長の悪霊や浮遊しているネガティブな思いなどを吸い取って、巨大化した怨霊がその男を意のままに動かし、他人のエネルギーを吸い取って生きながらえている。エネルギーを吸い取られた人間は抜け殻のようになり、そこに悪霊が入り込み人が変わったようになるか、体が耐えられずに死ぬか、とにかくまともな状態ではいられなくなるらしい。せっかく取り込んでも、体から離れたエネルギーの寿命は短く、男は常に人からエネルギーを奪い続けなければ生きていけない。タヌ子さんの発しているエネルギーはとても強いらしく、全て取り込めば、男は永遠に生き続けられるくらいの力があるらしい。なので男は執拗にタヌ子さんを追っていたそうだ。
「私タチガ マトモニ戦ッテモ 勝テル相手ジャナイ。ヘタニ近ヅクト、逆ニコッチガ魂ヲ奪ワレテシマウ…。」
エマがため息をつきながら呟いた。
「どうすればいいの？」
「低イ波長ヲ出シテイル ヤツラヲ 弾キ飛バスホドノ、強イ ポジティブナ波長ガアレバ、ナントカナルカモ。」
「俺、超ポジティブだよ！」
「ソリャ、ノー天気ッチューモンダ。ソウジャナイ！ モット威厳ノアル 圧倒的ナ 波長ジャナケレバ ダメダ！ ソシテ、一人ジャ ダメダ！ 大勢イナイト 負ケテシマウ！」
エマは悔しがるように行った。
俺も少し違う意味で悔しがった。また小っせー！俺！
「デモ、ヒロキヲ 一人ニ シテオクノハ イケナイ。内田！ 行クゾ！」
悪霊を弾き飛ばすほどの…
強い…
ポジティブな…
威厳がある…
大勢の…
圧倒的な波長…
