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タヌ子が襲われた

 夜の街をタヌ子を探してまわった。思い当たるところを回ったが、タヌ子は見つからなかった。何か嫌な予感がして鼓動が激しくなる。途方にくれていた時、スマホが鳴った。内田からだった。

「あ、ヒロキさん! タヌ子さんうちに来てます。本人嫌がってるんだけど、やっぱり連絡した方がいいと思って。今から来れます?」

 よかった。タヌ子は無事だった! 俺は急いで内田の家に行った。

「タヌ子はっ?タヌ子はっ?」

とにかく一刻も速くタヌ子に会いたい!内田はタヌ子が寝ている部屋に案内してくれた。

「タヌ子さん今寝てますからお静かに。」

内田は、いぶかしげな目で俺を睨みながらタヌ子の寝ている部屋に案内してくれた。寝ているタヌ子に内田の彼女らしき外国の女性が付き添っていた。

タヌ子はベッドの上で丸くなって寝ていた。フサフサの毛並みは抜けてほっそりしてしまっていた。ところどころ禿ができている。すごく痛々しい。

「タヌ子。」

俺はタヌ子に抱きついた。

涙がポロポロ出た。タヌ子の背中を撫でた。しかしタヌ子はグッタリして目を覚まさなかった。

「ヒロキさん、ちょっと。」

内田がドアのところから俺を呼んだ。話があるそうだ。


 ダイニングのテーブルに内田と向かい合って座った。

「話は少し聞いてますよ。モトカノ帰ってきたんでしょ。」

「いや、追い出したし! つか一年前に別れてるよ! ほんと誤解なんだよ!」

ほんとかよ?という目で内田が俺を睨みつける。

「ま、その件はタヌ子さんと話し合って下さい。それよりも…さっき妙な事があって…。」

内田が真剣な顔になって話し出した。


 タヌ子が男に腹を殴られて、体の中に腕が入ってかき回されていた。内田たちがタヌ子を助けに行くと男は逃げて行ってしまった。タヌ子はグッタリしていたが、体に傷は無く、もちろん腹にも腕が貫通したような形跡すら無かった。

「ゆ、ゆるせん!!!」

俺は怒りで震えた。

俺の大事なタヌ子がそんな暴力を振るわれたなんて!俺があの時躊躇などせずタヌ子をかばえていたら、タヌ子に追いついて引き止められていたら、タヌ子はこんな目にあわなかったはずだ!目から涙がポタポタ出た。

 タヌ子ごめんよ。

 さぞかし痛かったろ?

 さぞかし怖かったろ?



 俺が取り乱していると、奥から内田の彼女がやってきた。

「タヌ子、モウ起キナイカモシレナイ。」

エマという内田の彼女は心配そうにそう言った。

「それ、どういうこと?」

俺と内田が同時に聞いた。

「実ハ私ハ、霊感ガアッテ、見エナイモノト話ガデキル。サッキ タヌ子ノ魂ト チャネリング シテキタ。」

「えーーー!」

俺も驚いたが、内田はもっと驚いていた。

「アソコニ寝テイル タヌ子ハ 実体ジャナイ。本物ハ他ニイテ ココニイルノハ 魂ノ半分。半分ニ ナッタ 魂ハ モウスグ死ンデシマウ。 タヌ子ハ 死ンデシマウ。」

そんな…。

タヌ子が死んでしまうなんて、俺嫌だよ。


 その時、居酒屋ぽんぽこで会った、大将の話と不思議な信楽焼のタヌキの事を思い出した。

 魂の半分? 

 三ヶ月前…?。

 居酒屋ぽんぽこにいた信楽焼のタヌキが言ってたのって、もしかして!

俺の中でストーリーは合致した。


「モウホントニ 時間ガ無イ。 急イダホウガイイ。」


 エマの話は、こういう事だった。本物のタヌ子は、以前さっきの暴漢に襲われて、その時魂の半分がその男に奪われてしまった。残り魂の半分と体はすごく強い力がある何者かが守ってくれた。タヌ子の体はどこかにあって、魂が抜けた状態になっている。守りが強かったので今まで生きてこれたが、それも限界になってきている。


「どうしたらタヌ子を助けられる?」

エマに聞いた。

「ソノ男ニ会ッテ、タヌ子ノ魂ヲ 取リ返ス シカナイ。男ハ必ズ タヌ子ノ魂ヲ奪イニ行クハズ。タヌ子ノ魂ノ半分ノアリカガ 分カレバイイノダケド。」

エマはため息をついて言った。

「わかる! 俺、タヌ子の魂がどこにあるか知っている。」

俺は寝ているタヌ子のところへ行った。

「タヌ子、俺が絶対助けてあげるからな!」

俺は内田の家を飛び出して、居酒屋ぽんぽこへ向かって全速力で走った。




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