ヒロキのモトカノ(パート2)(タヌ子) タヌ子、フルボッコにされる?
「あんた、仕事何してんの?」
サキさんは、急に私の方を向いて聞いてきた。
「あの…占い師してます。」
「はぁ?占い師?」
「どこの大学出身なの?」
「大学は…行ってないです。地元の高校出てから占いの仕事してます。」
高圧的な態度でこういう質問をされて、なんだか自分が惨めな気分になってきた。
「どうせ資格とかも無いんでしょ?あのね、ハッキリ言っとくけど、あなたのような人じゃヒロキをサポート出来ないの。ヒロキの仕事の事なんか、なぁ~んにもわかんないでしょ?」
「何失礼なこと言ってるんだよ!タヌ子はすごく役立つ子だよ!それにどんだけ癒されてるか!」
ヒロキがかばってくれた。
嬉しくて目がウルウルしてきた。
「タヌ子~?ウケル!タヌキって事? ま、目が垂れてるとこが似てるかな? ポケーっとしてる感じだけど、まあけっこう顔はかわいいんじゃない? 遊びの女だってのはわかったけど、そういうことすると、この子にも悪いじゃない。さっさと荷物まとめさせて帰らせてあげなさいよ。」
「タヌ子は遊びの女とかじゃないよ!」
ヒロキはサキさんに怒鳴るように言った。
「じゃあ、何なのよ!」
ものすごい威圧感でサキさんはヒロキに問い詰めた。
ヒロキは少し考え込んでいた。
「何…って、…ペット…。」
(ペット…ペット…ペット!!!)
もうダメだ。
終わりだ。
眩暈がする。
吐き気がする。
心臓がドクドクいって破裂しそう!
苦しいよぅ…。
涙が洪水のように流れ出るけど、そんなの構ってられない。ここから避難しなきゃ!
私は部屋の中に走っていって、最初にヒロキのとこに来たときに持ってきたキャリーバッグに自分の物をめちゃくちゃに詰め込んで玄関の外に飛び出した。全速力でエレベーターの方に走った。後ろの方でヒロキが私を呼んでいる。追いかけてくる。エレベーターのドア速くしまれ!
マンションの外に出て、全速力で大通りに走った。ちょうど止まっているタクシーがいたので飛び乗ってすぐさま走らせた。
後ろを振り向くと、ヒロキが走って追いかけてくる。でもタクシーは赤信号には引っかからずに、ヒロキには追いつけない距離に私を連れ去った。
「あの~、どちらまで行ったらいいですか?」
タクシーの運転手さんが聞いた。
「…。すみません、ここで降ろしてもらえますか?」
タクシーを降りると、もう外は薄暗かった。
当て所なくキャリーバッグを引きずるように歩いた。とぼとぼ歩いていると、後ろから同じ速度でついてくる足音に気付いた。気持ち悪かったから速度を上げた。するとその足音も速度をあげてきた。思い切って振り返ると、あの男が立っていた。
男はうっすら笑みを浮かべて言った。
「みぃ~つけた~!」