ヒロキのモトカノ(パート1)(タヌ子) タヌ子、フルボッコにされる?
最近ヒロキ疲れてるな。
仕事忙しいのかな?
今日の晩ごはんは、何かスタミナがつく料理にしよっと!
ヒロキが元気になれるようなごはんを作ろうと、昼過ぎに駅前のスーパーに買い物に出かけた。歩いていると、何かちょっと焦げるような甘いいい匂いがした。その匂いにつられて行くと、クロワッサンのお店に辿り着いた。そのお店のクロワッサンは、プレーンはもちろん、チョコや抹茶や、サツマイモなど、いろんな種類があった。一口サイズなので、パクパクいけちゃう!
イートインできるのがわかったので、中に入ってプレーンとチョコとカフェオレを注文した。
まずはプレーン。パクッ。おいしぃ~。
次はチョコ。パクッ。あまぁ~い。
カフェオレ飲んでホッと一息。
ふぅぅ~、落ち着くなぁ~。
そうだ!これ、ヒロキとウッチーにも買って、持って行ってあげよ!うんうん!
……。
ハッ!!!
スーパーに買い物行くんだった!
またやっちゃった。
なんでこう私は食べ物の誘惑に勝てないんだろう…。
スーパーで買い物中、ふと思った。
ヒロキにとって私は何なんだろ?すごく優しくしてくれるし、プレゼントもしてくれたりするし、かわいいって言ってくれる。でも、でも、ヒロキの家に住むようになってからずっと一緒に寝てるけど、いつもヒロキは「おやすみ、タヌ子」って言って、頭なでなでしてくれて、そのままイビキかいて朝まで寝てる。
これは、私が女として魅力がないということですか?
それとも彼女として認められてないということですか?
単なる同居人ということですか?
考え込みながら歩いていたら、いつの間にかヒロキのマンションに着いていた。ドアの鍵をさして開けようとしたら、何故か鍵はかかってなかった。
あれ、かけ忘れちゃったかな?
泥棒に入られてないかな?
もしかして、ヒロキ帰ってんのかな?
なんて考えながら靴を脱いでいると、ふいに声をかけられた。
「あんた誰?部屋間違えてない?」
見上げると、キレイな、でもちょっとキツそうな感じの女の人が眉間に皴を寄せて私を見ていた。
「す、すいません!間違えたみたいです!」
急いでドアを開けて外に出た。驚いて動悸が激しくなっていたので、少し深呼吸してからルームナンバーを見直した。
「302…、あれ?」
ヒロキの部屋は302号室だったはず。
やっぱり間違えてない!
でも、あの女の人?
勇気を振り絞って、恐る恐るもう一度ドアを開けた。
「あのぉ~。」
さっきの女の人が怪訝な顔をしてまた出てきた。
「何?うちに何か用?」
「あの、ヒロキさんのお姉さんですか?」
「はぁ?」
「あ、あの、やっぱり私、お部屋間違えてなくて…。」
女の人は私を上から下までなめ回すようにジロジロ見た。
「私がヒロキの姉に見える?あんたこそ誰なのよ?」
「わ、私はヒロキさんとお付き合いさせてもらってて、い、一緒にここに住まわせてもらってます。」
「はぁ~???あの男何考えてんの!」
「あの~、どうかされました?」
「私はねー!ヒロキの彼女よ!もう4年も付き合ってるの!」
動悸が激しくなって、頭の中が真っ白になった。体の力が抜けてきて、やばい、倒れそう!
その時、ドアが開いてヒロキが帰ってきた。
「ただいま……!」
ヒロキは時間が止まったみたいにしばらく硬直して動かなかった。
「ちょっとヒロキ、なんなのこの女?私ってものがありながら、よく家に女連れ込んだりできたよね!」
ヒロキの自称彼女さん?は、そう言った。
「サ、サキ~?」
ヒロキは声が裏返っている。足もガクガクだ。
「何で?何で?%$#&*……。」
ヒロキは驚きのあまり言葉になってない。
「あなた!わかったでしょ?私とヒロキは付き合ってるの。ここはあなたの居場所じゃないの!帰ってくれる?」
ものすごい威圧感でサキさんというその人は言った。
「ちょっと待てよ!俺たち別れたんだろ?さよならって言って去っていったじゃないか?その後も音信不通だったじゃないか!」
ヒロキが怒ってそう言うと、サキさんは呆れたようにため息をついて言った。
「ヒロキ、あのさぁ~、長い付き合いなんだから私の性格わかってるでしょ?今までだって、別れる!って言っていつも別れなかったじゃない。いい加減学びなさいよ!」
「はぁ~?何言ってんだ!一ヶ月二ヶ月とかならまだわかるよ。一年だぞ、一年!音信不通になって!電話着信拒否されて、SNSも全部ブロックされて!」
ヒロキは怒り狂って言った。
「まぁね、今回はちょっと度が過ぎたかなとは自分でも思ってる!でもあんた男でしょ!それぐらい受け入れなくてどうすんのよ!あれだけサキーサキーって私のこと追い掛け回してたくせに!」
ヒロキ…好きになったら、追い掛け回したりする人なんだね。
けっこう情熱的なんだね。
知らなかったな。
私は、そんなことされたことないな。