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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

これが私の運命。

作者: あいすべあ

聞こえない、聞きたくない。

母の泣き叫ぶ声に父の怒鳴り声と激しい物音。


もう何度目だろうか、既に精神も体も可笑しくなってきている。

服の下に出来た痣。手首に残る切った痕。


周りの笑っている顔を見る度、腹が立つ。

どうして周りと違うの?何で私だけ?

どんなに羨ましいと、どんなに悲しいと思っただろうか。


ただ、思って幸せを願っているだけなのに自分の望む結果には動かない。

分かっている筈なのに知っていた筈なのに、何故か涙が出る。

止まれと願っても止まってくれない。強くなろうと思ってもそうはなれない。


こんな葛藤を知ってくれている人は居ない。聞こえていない。届かない。知ろうとも思わない。

なぜならば、皆、巻き込まれたくないからだ。面倒だと思っているからだ。自分だってそうだ、人の喧嘩になんか出来れば関わりたくない。あの時だって…


昔、父が母に暴力を振るっている所を目撃した。父は私に気付かず目の前の"相手"しか見えていない。普段は優しく穏やかな人だったのに…まるで人が変わった様に…


私は床に転がっていた物に当たり音を立て両親に気付かれた。だが、その代償に二つの事の疑問が解けた。


一つ、床に落ちていた物だ。酒。とても強い物だと思う。

二つ、普段と性格が違うのは酒を飲んでストレスが爆発してしまったからだ。


気付いた物はいいが知りたくなかったのが正直。親の最低な部分を知り幼かった私は感情が溢れてしまった。


瞼が熱くなり震えが伝わる。涙だった。


今まで泣いたことの無かった自分だったが人の醜い部分を知り、出た本当の気持ちだった。


さすがにどんなに馬鹿な親でも今回だけは納めてくれるだろうという私の密かな願いは次の父の一言で掻き消された。


「うるせぇ、黙れクソガキ。」


頭が真っ白になった。そんなこと言われたと未だに信じられない。


混乱して泣いている私を見て苛立ったのか標的を移した。

自分の子供に。


痛い痛いと泣き叫ぶと更に殴ってくる。「嫌だ、やめて。」それすらも言えない。言わせてもらえない。


母は私の殴られてる姿を見て必死に「だめ、やめて!!その子だけは…」と言っている。自分だって暴力を振るわれるのは嫌だろう、が父とは違い私に愛を持って接してくれる母は声をあげてくれている。


…その時はその気持ちなんて分からず標的が変わったら押し入れへ逃げた。自分の事で精一杯で助けてくれた母を置いて逃げてしまった。私は微かに音だけが聞こえるその場所で気付いたらその場で寝ていた。


翌日、母は青い痣を作っていたが笑顔で私を迎えてくれた。朝、家族で食べる朝食。その時の私は仲直りした。と勘違いをして明るく会話をした…が、あれだけの事をして穏やかに笑っている父を見て背筋に冷たいものが走った。


昼、学校ではいつも通りに休み時間に"おもちゃ"にされる。殴られ蹴られ、周りも同い年の子供なので痛みは昨日よりは無いが精神的にも辛かった。


誰にも喋っていない事だし喋ろうとも思っていなかった。

悪化するだろうと思ったからもあるが一番は親の為だ。母の方だ。

家事も子育ても人付き合いも父の事も…。そんな母にこれ以上負担は掛けるものか、と幼いながらに思ったのだ。


だから泣く事も我慢していたし言うこともちゃんと聞いていた。

いじめだって後に終わると信じていたから。


放課後、傷を洗い持ち歩いている救急セットで手当てをして帰る。これが日常。

だが、夜にはいつもと違う物が起こった。


再び始まった、父の暴力。毎晩毎晩怖くて寝たフリをしてはやり過ごしどうしても喉が渇いた時やトイレに行きたかった時はリビングを音を立てずに通り目的を済ます。が、戻ろうと油断をした隙にバレる。


こんな生活は嫌だ、と思っていたが当時はどうすればいいのか分からない様な子供だったので何も出来なかった。


だけど、今は違う。


父が祝日に家を空けた頃、寝室から泣き声が聞こえた。


「いつかきっと、優しかったあの人に戻ってくれる。そうしたら一人で頑張らなくても…」


初めて見た親の涙。それをきっかけに私は変わろうと思った。絶対に母を残さない。一人にしない。悲しませない。と…


だが、遅かったらしい。母は、逃げるように消えるように…私の前から居なくなった。


父はソレを隠し、燃やした。最低だ、消えてほしい。そう思った奴は消えないのに何故、傍に居てほしい人は消えてしまうのだろう。


でもね、大丈夫だよ。お母さん。

やることが終わったらすぐいくよ。


一人にしないからね、これからは二人で…空で頑張って行こうね。

それで休んだら新しい人生で一緒に暮らそう。


本当は手紙の内容も書き足りない位だしお母さんの気持ちも書いてあげたかったんだけどね、読んでる内にあいつ逃げちゃうかもしれないから。


ちゃんと郵便で警察に送るよ、私達の人生をめちゃくちゃにしたんだから自分もそうならなくちゃね。


じゃあ、これで手紙を終わります。警察の方も協力宜しくお願いします。


----------


『先日、両親を殺害したと報道した少女ですが、牢を抜け出し逃走し、飛び降り自殺を計りました。警察に残した手紙を見て更にこの事件について調べていく模様です。なお、この少女の家では……』


ねぇ、お母さん。ごめんね、私はお父さんと同じ場所に来ちゃった。一人にしちゃったけど待っててね。


次の人生で一緒に暮らそう。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました!


面白いと思って貰えたなら幸いです。

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