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モノクローム・サガ~彩色の御子~  作者: 鮎川 渓
三章 太古の森で
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本当の『森』と『鼓動なきもの達』


古木の巨神(マ・マダンネール)に会いに行こう』


 そう言うローに連れられて、兄弟はクラライシュ郷を訪れて以来、初めて郷の外へ出た。

 山腹を緩やかに蛇行する杣人道を、二頭のネール馬達は軽快に駆け上がる。

 身体の大きなネール馬は当然胴幅も広いため、小柄な古森の民が鞍をかけ騎乗するには不向きな馬だ。けれどその中でも上背のあるローは、強引に跨り先導していく。ローより大柄なセトは難なく乗ることができたが、小さなシャルカはそうも行かず、兄の腕に挟まれるようにして横座りに乗っていた。

 それでもわざわざネール馬で出かけたのは、傭兵達と一悶着あったせいで出発が遅くなってしまったためだ。


 森に踏み入ってからこっち、セトは不思議な感覚を覚えていた。

 森ならば機織の民の郷周辺や街道沿いでも見てきたが、この森はそれらの森とは明らかに異なっている。

 平地に生えていた木の表は、一様にひび割れ厳めしい様相であったのに対し、この森の木々はするりと滑らかだ。それでいて幹はどっしり太く、白灰色の葉にはハリがあり、木よりも樹と表すのが相応しい。

 樹の種類が違うと言ってしまえばそれまでなのだが、そうではなく、森全体から受ける印象が違うのだ。けれどそれをどう言い表せばいいか分からずにいると、シャルカが大きく深呼吸をした。


「空気が瑞々しいですね、あに様。原野の湿り気のある空気とは違いますけど……平地では森の中でさえ乾燥してましたから、ちょっぴり懐かしい感じがします。樹も草も、とっても生き生きしてますね」

「それだ」

「はい?」


 己が言葉にできなかったことをするりと口にした弟に、セトは思わず膝を打つ。目を瞬くシャルカを、ローが自慢げに振り返った。


「そうだろそうだろぉ、良いだろ森は! おれに言わせりゃ、オマエらが道すがら見てきた痩せっぽちの木の集まりなんざ、森じゃなく雑木林ってなモンだ。『森』ってのはこういう場所のことさ」


 セトもシャルカに倣って深く息を吸い込み、改めて周囲を見渡してみる。

 乾燥。シャルカは空気をさしてそう言ったが、空気ばかりではなく下草の一枚一枚、樹の枝の隅々まで、清らな水の気に溢れているように感じられた。


「これも水に恵まれた土地だからか」

「そうさ」


 ローはネール馬の足音にも掻き消されぬ大声で言う。


「山頂の雪を見たろ? 雪は春から夏の間にゆっくり解けて地にしみ込む。この山ン中にゃ、地面から浅い所に水脈が走ってんのさ」

「スイミャク? が、走る?」

「地面の下に河が流れてるっつったらいいンかな」

「地面の下に?」


 首を捻るばかりの兄弟に、ローは何と説明したものかと頭を捻る。


「あー、つまりだ。地面の中をあちこち雪解け水が流れてんだよ。それこそ山の血管みてぇにくまなくよ」


 分かったような分からないような顔で曖昧に頷いたセトに対し、利発なシャルカは深く頷いた。


「なるほど。岩盤の大地……いえ平地では、人の手でいくら地面を掘ろうが水など出ないと聞きます。木々はそれよりも深い所まで根を下ろして、少ない水を懸命に吸っているんですもんね。この山の樹々は水に恵まれているから、こんなに瑞々しいんですね」

「おう、やっぱりシャルカは飲み込みが良いな! だがセト、オマエはだめだ」

「…………」


 セトは黙って手綱を繰り続ける。

 聞こえぬフリを決め込んだのもあるが、実際この豊かな森の景色や、時折茂みの向こうから姿を見せる見慣れぬ動物達に心奪われ、半ば上の空だったのだ。

 原野育ちのセトにとっては、梢の上を駆ける栗鼠や、尖ったくちばしでしきりに幹を突いている啄木鳥(キツツキ)の類でさえ珍しい。

 樹々の根元で顔を覗かす、春が旬だという白茸。見るからに柔らかで、千切れば水が滴りそうな下生えの群。そしてその陰に蠢く虫達のなんと多様なことか!

 返事がないことを訝り振り向いたローは、ろくすっぽ聞いていないセトをまたからかおうとしたようだったが、少年のように照る灰色の瞳に口を噤んだ。弟が建築物や人々の服装――文化の違いに興味を示すのに対し、兄は自然物に強く惹かれる質なのだ。

 代わりにシャルカが言葉を継ぐ。


「どの樹も本当に立派です。ここの樹々は随分長いこと生きているんでしょうね。……ぼく、実はずっと不思議だったんです。どうして山に住んでいるのに『古森の民』なんだろうって。こういう樹々に囲まれて暮らしているからだったんですね」


 その言葉に、ローは手綱を引くとわざわざ馬を隣に並べ、低い鼻をそびやかす。


「いンや、この辺りはまだ『古森』じゃないぜ。おれらの祖先が材木を得るために伐り拓いて、その後植樹した新しい森さ。それでもま、ここいらなら百年近く経ってるかな」


 そろそろ伐り時だとさらり呟くローに、シャルカばかりか上の空だったセトも目を見開いた。

 原野の民の平均寿命は、およそ五十歳程度。長生きしても六十がせいぜいだ。他の民もそう変わりあるまい。

 つまりこの樹々を植えた人々は、自分達の代でその樹を利用することがなくとも、後の子孫のために植えたということになる。


「森を保つためでもあるんでしょうが……何だかとっても、こう、」

「百年……それを『新しい森』と呼ぶのか、古森の民は。凄いな」


 長い長い時間をかけて繋がる古森の民の営み。それを思うと眩暈がした。


 地に根差し、生きるということ。

 兄弟はその本当の意味を垣間見た気がした。

 原野で狩猟物に次ぐ交易品と言えば麦や雑穀だが、あれらはあくまで原に自生している物であり、沃野の恵みをいただいているにすぎない。浮島は広大な泥の原を常に彷徨しているため、その場から動かぬ植物を育てようなど思いもよらないのだ。狩りの際に幼獣を逃してやることはあれど、仔が成獣になるまで、待つのはほんの数年だ。


 ひとところに生きるということ。


 子が、孫が、その先の子孫もずっとこの地に住み続けるだろうと当然のように考え、豊かさを維持し、次世代へ繋げていく。それを享受した世代も更に次へ、次へ。

 途方もない歳月をかけ紡がれる言外の約束の連鎖。義務ではなしに、ごく当たり前のように繰り返される営み。

 歳は兄と同じでも、子を持ち、受け継ぐ側から残す側へ緩やかに進み始めているローの口から聞かされることで、一層しみじみとした重さを持って兄弟の胸に響いた。

 ローは傍らの樹々を指す。


「よく見てみろ。樹は好き勝手に生えてるようで、きちんと間隔が開いてるだろ? ある程度育った所で間引いてるからだ。それでも込み入ってくりゃ枝打ちして、病の樹が出りゃ治療して……樹ってのは植えっぱなしじゃあダメなんだ。ちゃんと手間かけて手入れして初めて、陽も風も入る森が保てンのさ。それは何もおれら人間のためだけじゃねぇ。山にとっても、動物たちにとっても必要なことなんだ」


 とても誇らしげな口ぶりに、シャルカはくすりと微笑む。


「古森の民は、この山の管理人なんですね」

「そうとも!」


 入れ墨だらけの腕をまくり上げ、ローはにっかりと白い歯を見せた。


「おれら古森の民は、このエレウス山のり役を古木の巨神(マ・マダンネール)から仰せつかった民なのさ」

「古木の巨神、」


 その名に、セトは出発前にローが言った不思議な一言を思い出す。


「古木の巨神に『会いに行く』と言ったな。前に言ってた、巨神が宿るというご神木を見に行くのか?」

「お、セトにしちゃよく覚えてたな」

「お前はどうしてそう、」


 余計な一言が多いのか。言いかけて止め、代わりに片眉を跳ね上げる。


「随分大仰な言い方をするんだな。神に『会いに行く』だなんて」


 冷やかしたつもりだったが、ローはいつものように乗って来るでもなく、酷く驚いた顔でセトを凝視した。


「え、ホントに会いに行くんだぞ?」

「ん?」

「だって古木の巨神が()()場所に行くんだぞ、挨拶しに。会いに行くであってるよな?」


 ローは同意を求めるようにシャルカに視線を向けたが、シャルカはどう応じたものか困惑して兄達の顔を見比べる。いつものローの大袈裟な表現かと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。気まずさに、セトは咳払いをひとつした。


「すまない。古森の民はそういう言い回しをするものなんだな」

「オマエらは言わねぇのか? ……ああ、そりゃそうか。原野の民の主神は蒼穹神(カーヴィル)だもんな。空は広すぎてどこに居るか分かんねぇし、分かったって傍に寄れるモンでもねぇしな」

「どこに居る、って」


 どうも話が噛み合っていない気がする。セトは内心首を捻った。

 ローの口ぶりだと、まるで蒼穹神という()が、空のどこかに住んでいるようではないか。これも宗教観の違いなのだろうか。

 そんなことを思いながら、また前へ出て先導し始めたローの後を追った。



 そうして、手入れの行き届いた明るい森の中を半刻も駆けた頃。三人は道の終いまでやって来た。


「…………」


 兄弟は目の前にしたそれを見上げ、言葉を失う。

 杣人道の果てにあったのは、今までの樹々とは比較にならないほどの太さと高さを持つ大樹達。丁度道が途絶えた場所に生える二本の巨木の間に、境界を示すかのような丹色の綱が渡されている。古森の家々の屋根と同じ色、灰色と茶の森の中に突如として現れた赤。呪いめいた結び目が幾つも拵えられた綱が、樹々の間で静かに揺れる。

 異教徒である兄弟にも、綱の向こうが神聖な場所なのだと肌で感じられた。

 息すら詰めた兄弟に、ローは背筋を正し告げた。


「ここからが本当の『古森』だ。この先一帯は聖域で、草木を刈ることは何人たりとも許されない。古森の民の有史以来、一切人の手が入ってねぇ太古の森さ」


 行こう。そう言ってローは馬をそのまま進ませる。


「おい、騎乗したままで良いのか?」


 セトはネール馬の頑強な蹄を指したが、


「馬も人も自然の一部だ、歩いて苔を削っちまう位は問題ない。故意に傷つけるか否かの違いさ」

「へえ、」

「狩りをすることだって許されてるぜ。人の子が糧を得るために、狩りをすることもまた自然な行いってな」


 ローは軽く頷き手綱を捌いた。


「自然か」


 ローに続いて綱の下を潜りながら、セトは機織の民の教義を思い出す。

 獣の王である羊蹄神(ドードリー)を信仰する彼らは、森の獣を『神の遣い』と見なして狩らぬ。けれど異教徒が狩った獣の皮や肉は買うと聞き、釈然としない思いを抱いたものだった。

 それに比べ、古木の巨神(マ・マダンネール)の示す教えの健やかなこと。何より分かりやすい。

 先程は神の捉え方の違いに戸惑ったセトだったが、改めて古森の教義に好感を抱いた。



 神域を示す丹綱の先は、まるで別世界だった。

 一体幾本の樹木が寄り合わさったものだろう。複雑にねじくれて絡み合い、一本の樹と化した樹々は皆大きく、天辺を拝もうと思うと、馬の背から落ちそうになるほど仰け反らなければいけなかった。琥珀色の幹は、例え大人が二十人で手を繋ぎ輪になったとて囲いきれまい。

 そんな途方もない大樹ばかりが、この神域には並んでいる。

 どれもこれもが、『これぞ神木』と言われれば迷わず信じてしまう程に、力強く美しい。

 それらが茂らす葉に陽が阻まれているのに、視界はそう悪くない。

 理由は足許にあった。土が見えぬ程込み入った樹の根一面に、真白でふさふさとした苔が被さっている。その苔は薄暗い中にあってほのかな燐光を帯び、太古の森を柔らかく浮かび上がらせているのだ。

 かと思うと、突然梢の隙間からしらしらと陽が差し込み、兄弟の目を眩ませる。

 だが神秘的なのはなにも眺めばかりではなかった。

 セトは用心深く辺りに意識を巡らせる。


「……獣の気配がしない。いや、するにはする、奥の方から……だがこの辺りには何もいない。何故だ?」


 ローは黙って唇に人差し指を当てて見せ、更に奥へ誘う。街道では荒々しく黄土を蹴散らしていたネール馬達も、まるで神聖な場であると心得ているかのように、しずしずと根を踏み越えて行く。

 すると不意に、


「見えるか? あの樹の向こう」


 ローは奥の樹々を指差し、小声で言った。

 その先を目で追い、また息を飲む。

 樹々の隙間から垣間見えたのは、兄弟が知るどんな鹿よりも大きく、それでいてすんなりと細い脚をした大鹿の群だった。群を率いる雄鹿の頭には、独特の捩じれた角がある。


「トトル鹿だ。古森にだけ生息する種さ」

「トトル鹿? ああ、あのシチューの肉か……いや待て、あの大きさで草食動物だと? 頭の高さだけなら、コイツらより高いんじゃないのか?」


 ネール馬の頭に手を置きながら言った時、鹿達の頭上からガサリと声がした。それを聞き、鹿の群は巨体に合わぬ身軽さで跳ねるように駆けだす。それを追い、枝から枝へ飛び渡っていく何者かの気配。目を細めて懸命にその姿を探すと――いた。灰色の葉と全く同色の毛皮を持つ猿達が。その身体はやはり大きく、シャルカより一回り小さいくらいだ。


「あれ……猿ですか?」

「猿の一種、猿候だ。奴らは雑食で、今はトトル鹿の仔を狙ってたようだな」

「あんなに大きな鹿を、猿が獲って食べるんですか!?」


 シャルカは身震いし、兄の外套(マント)を握りしめた。 


「古森に棲む動物達は、この森に相応しく皆デカい。だから、さっきまでの森に棲む動物達と棲家を同じくすることができねぇんだよ。森と古森に棲む連中は相容れねぇし、互いに干渉もしねぇ」

「境界辺りに獣の気配がなかったのは、それでか」


 確かに、あんな図体の鹿が群れなして森に下りてきたなら、下草でも樹の新芽でも、あっという間に食い尽くされてしまうだろう。あの猿候にしたってそうだ。あの獰猛さでは栗鼠や兎などひとたまりもあるまい。その上、一匹二匹で奴らの胃を満たせようはずもない。森の動物達の方も、古森で生き延びることはできぬと当然分かっている。

 原野のヒレ持つ馬が岩盤の大地に上がれぬように、巨躯を持つ彼らもまた、この巨大な古森の中でしか生きられないのだ。

 隣あっているのに、森には森の、古森には古森の生態系があるのだと知り、なんとも不思議な心地になる。けれどこの巨木ばかりが居並ぶ古森を見ていると、確かに先程までとは違う世界なのだとすとんと腑に落ちた。


 古森を進めば進むほど、奇妙で大きなものどもが姿を見せる。

 瑞々しい空気の中を泳ぐように舞う墨色の蝶。手のひらよりも大きな羽根で飛び回る蜻蛉達。ネール馬の立てる振動に戦慄(わなな)いたかと思うと、爆ぜるように花開き、大量の花粉を撒いて散ってしまう焔花。前脚と胴の間に羽毛を覗かせた半鳥蜥(ハンチョウセキ)に、若い狼など蹴殺してしまうという長脚兎――

 ありのままの自然というのはなかなかに過酷であるらしいと、動植物の姿から窺い知る。皆この森で生き延びるため何がしかの特技を持ち、尖った性質を備えていた。原野の兄弟には珍しいものばかりだが、純粋に生きることだけに注力したかのようなその姿かたちは、奇妙でありながらも美しくないということがない。

 いつしか兄弟の口から言葉が消える。

 ただただ圧倒され、ローの導くまま森の深くへ、山の上へと向かっていく。


 ――と。


 ふわ、と何かがセトの頬を掠めていった。


「?」


 振り向けど、そこには虫すら見当たらない。首を傾げ向き直ろうとした途端、今度は反対の頬を何かが撫でた。また首を巡らせるも、いない。向き直ろうとするとまた何かが頬に触れる。が、その姿を捉えることはできない。

 おちょくられているような気がして、セトは苛々と宙を見回した。シャルカが外套(マント)をついと引いたが、


「何だ」


 セトは不躾な何かの姿を見出そうと忙しい。が、シャルカは声も発さず一層強く引っ張った。


「だからなん――、」


 膝に座らせたシャルカを見下ろそうとしたところで、セトは言葉の続きを失った。

 いつの間にか歩みを止めていたネール馬の足許。淡い光を放つ無数の毛玉のごとき球体が、三人を取り囲んでいたのだ。


「なっ……!?」


 それは小石程の大きさから拳程度のものまで様々で、ただひたすらに丸い。目も口も見当たらない。手も足も何もなく、その上羽根もなしにふうわり地面から浮かんでいる。時折弾むように高く跳ね、兄弟の足や肩を撫でた。

 動くからには生き物なのだろうが、生き物らしき器官の欠片すら見当たらぬこの毛玉もどきどもは、完全にセトの生物の概念の外にあった。

 得体の知れぬものどもに囲まれ、無意識に腰の剣へ手が伸びる。


「おいロー! こいつら一体何だ!?」

「怯えるなぃ、人に危害加えたりはしねぇよ」

「馬鹿言え、怯えてなんか……! いや、ならこれは何なんだ? 動物か、それとも虫か!?」


 ローもネール馬達も落ち着き払った様子で毛玉達を眺めている。


「…………」


 シャルカは紫紺の瞳でじぃっとそれらに見入っていた。騒いでいるのはセトばかりだ。そのことに苛立ちが募った所で、球体のひとつがシャルカの鼻先目掛け飛んだ。


「弟に触るな!」


 セトは反射的に剣を抜き、その球体を両断する。……が。


「な、」


 ふたつの半球と化したそれは地に落ちるでもなく、見る間にふたつの球体となって宙を漂う。そして戸惑うセトをからかうように、顔の周りを忙しなく飛び回り始めた。

 生き物ではあるらしいのに剣で斬ることができない。理解など到底できぬ事象を目の当たりにして、セトはもう気が違いそうだった。


「おいっ、だから何なんだこいつらは!? 血も流さなきゃ死にもしないぞ!?」


 囂々と吠えたてるセトへ、ローは呆れたように肩を竦める。


「落ち着けってセト。言ったろ? ここは古木の巨神(マ・マダンネール)のお膝元、神が宿りし巨木のそばだ」

「だから何だ、はっきり言え!」

「だからコイツらは、古森の言葉で言うところの『デゥス・ナ・シェンテ』なんだって」

「いや解るかよ、俺にも理解できるように説明しろっ」


 斬れぬと分かっていても剣を振り回すことをやめられないセトに、ローはだんだん可笑しくなってきたらしく、肩を震わせながら言う。


「そうさなぁ。『デゥス・ナ・シェンテ』は、直訳すりゃ『鼓動なきもの達』。分かるように言い換えンなら、精霊や神霊の類ってトコかね」

「――……は?」



ご無沙汰しております。更新に間が開きましてすみません。

1月から始めたWTRPGのMS業務に少しずつ慣れてきましたので、合間合間にぼちぼち更新していきたいと思います。

まだなろう用のツイアカも再取得できていない状態ですが、またお付き合い頂けましたら幸いです。

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