7.コンの魔法
今、この部屋にいるのは8人だけ。
勿論。ヒュドラの事で集まった。一応、僕とディーネもここにいる。
まずは、今の状況を話すことになってる。
「じゃあ、コン。今の状況をまとめてくれ」
「はい」
お父さんが進める事になっていて、いつもと少し違うお父さんだった。
本当に、戦う戦士のような目をしてるんだと思う。
「ヒュドラは7体いました。今は、村を火、水、風、雷、音の魔法で5重に覆っています。ヒュドラは色んな耐性を持っているらしいですからね。
ですが、その壁も、あと1日持てば良いほうでしょう。
村の皆は、即席のシェルターに避難してもらっています。幸い、食料が無くなるのは1ヶ月はさきになるでしょう。
今の段階では、これ位しか把握出来ていません」
「うん。それだけ出来ていれば上出来だ。次はウンディーネの族長。お願いできますか?」
お父さんが視線を向けた先には、ウンディーネ族の長がいる。
族長さんは、難しい顔をしながら答えた。
「私達ウンディーネも、協力は致しましょう。が、相手がヒュドラとなると、精鋭部隊でも厳しいものがありましてのぉ。それに、今の時期はセイレンや海竜種がおります故にこちらにまわせる人材は約20人程しか......」
「そうですか......。いえ、20人でもありがたいです。なんせ、人族は5人しか戦える者がいませんから..............................」
族長さんは驚いてお父さんに聞き直した。
「ご、5人ですかな?人族側は、それしか戦える者がおらぬと......?」
「えぇ、ここにいる。5人です。私と妻。それと、元戦士のレオールと執事のセルベア。そして、息子のコン」
「その子も戦うのかい?」
「えぇ。コンは、この5人の中で1・2を争う程です。村の壁も全てコンがはったものですし、シェルターもそうです。全種類の魔法が上級以上の聖級魔術師でありながら剣士でもある。なかなか優秀ですよ」
お父さんが目で「すまない」と伝えてくる。
多分、優秀という所で物扱い、または便利な人間扱いのように言ってしまった事だと思うけど、流石にこれは怒らない。というか、嬉しい。ちゃんと認めてくれてる事が素直に嬉しい。
「ほ、本当かね?この村のものは全て君が?」
「はい。1日もったらいい方というのも、魔力切れではなく破壊されるか耐性を利用して無理矢理入ってくるかというものです。ただ張るだけなら、あと3日位ですかね」
まぁ、村を覆う壁5枚とシェルターの維持だから、そこまで間違ってないはずだね。
「ヒュドラは聖級の魔法は防ぎきれないと言うが、君が倒す事は出来ないのかね?」
「族長様!?コン1人にヒュドラ7体と戦わせるんですか!」
ディーネが族長さんに詰め寄る。
いけないなぁ。ディーネは笑ってなきゃ。
「ディーネ、大丈夫だよ。1度、やってみましょうか。9年前に使った魔法、使ってもいいですか?セルベアさん」
「良いのではないでしょうか。あれを受けて無事でいられるのは、それこそ神位のものでしょう。魔王だと、対処の仕方を間違えただけで死ぬでしょうし」
「だが、コン。あれは連続してうてる物ではないだろう?」
「そこは抜かりありません。拘束系の魔法で動きを止めながら一体ずつ仕留めます。最悪、禁忌とされている呪死魔法も使おうかと」
呪死魔法は、本当に使いたくはないなぁ。上級の呪死魔法で草木まで枯れてしまうんだから。
「まぁ、相手はヒュドラだ。無理そうなら戻ってくればいい。無茶だけはするな」
「わ、私も行く!私も戦うよ!」
「っ!駄目だディーネ!僕だけで何とかしてみせるから!............ディーネは、念のために村に残って。もしかすると、僕を振り払って村に行くヒュドラがいるかもしれないからね。そうなったら、レーラや皆を守って欲しいんだ。......頼める?」
ディーネは、優しいから。皆を守ってと言ったらちゃんと守ってくれる。
これで反対する人は......お母さんが若干言いたそうにしてるけど、分かってくれてるみたい。
「ウンディーネの皆さんは余波を防いでもらえますか?お父さん達は村の人達の安全確保を。魔力が多く残ってる方が良いので、今から行ってきますね」
魔法で飛んで、壁越しにヒュドラ達と対面する。
「手加減は出来ないよ、ヒュドラ」
魔力を色んな所に干渉させていく。
空には黒雲がかかり
海は荒れ
大地が揺れる
この光景を見たら、皆絶句するんだろうなぁ......。
雷が空を翔け、海水を巻き込むハリケーンが海を覆い、大地には小規模ながら地割れが起き、炎の竜が飛び、氷の刃が降り注いでいる。
と思ったら、とてつもない程の重力に襲われる。
まぁ、人が出来る範囲では、無いよね............
でも、まだまだこれからだし......ヒュドラが相手なんだから良いよね?
被害は出さないとは言ってないし、この為に村の人達の安全確保を頼んだ。
ここにいたら死んじゃうかもしれないからね。
ヒュドラに殺されるならまだ本望かもしれない。
けど、僕に殺されるのは嫌だろうからね。
さて、魔力消費も激しいしから短期決戦と行こうかな