32. 剣聖
「コン、ちょっと待ってくれ」
「え?お父さん、王都はあと少しですよ?」
「いや、知り合いを見つけてな」
王都はもう見えてるんだけどなぁ。まぁ、お父さんの知りたいだったら良いか。
「皆さん、少し、下へ降ります」
え~と、何処だろ?全く見えない。前世で言う、飛行機が飛んでるくらいの高度なんだけど。
この距離で見えてるの?
「あ、いたいた。お父さん、僕の記憶が正しければ、王の側にいる人なんですけど」
「ん?あいつ、そこまで出世したのか。まぁ、俺はそういうのが嫌で村に来たんだけどな」
「どんな関係なんですか?」
「......い、いや、まぁ、ちょっとな」
んー?まぁいいか。よし、そろそろ減速しないと。
「.....よし、到着!」
「お?あんたはあの時の子どもじゃないすか~。調度よ.......くないなぁ、てめぇ......!」
え?
「久しいなアーモレット!何年ぶりだ?」
「8年と165日だ!」
え?え?
「そんなに経ったのか!ははは!お互い歳をとったんだな!」
「あぁ歳をとった!そのせいで、俺より強い奴等が皆脱落していくんだ!」
え?え?え?
「安心しろ!俺はまだまだ脱落はしない!」
「ふんっ!そうでなきゃ困るな!」
.......なに、これ?
「コン、知っているとは思うが、こいつは王の近衛隊隊長、アーモレットだ」
「...ふぅ。いやぁ、お久しぶりっすね~。お見苦しい所をお見せしたっす」
「は、はぁ」
「アーモレット、コンは俺の息子だ。よろしくやってくれ」
「.......まぁ、子に罪はないっすからね~」
.......お母さんとシビアスさんしか、理解出来てないみたいなんだけど。
何なんだろう?罪?え?
「ま、そんなことよりもっすよ。コン殿、王都の危機を救って頂きたい。これは、貴方の国にも関係することです」
「え?」
なに?なんなの?危機って?僕の国にも関係する?
「詳しい話しは、王城で。一刻を争うのです」
.......一刻を、ねぇ。
「皆、僕らには目的がある。それが出来なくなってしまったら、かなり困ると思うんだけど、どうかな?」
何が起きてるのかは分からないけど、まぁ、冒険者として稼ぐ事が出来なくなったらブイさんに怒られるし。
なにより、ディーネの悲しむ顔を見たくない。
「反対者はいないね。よし、行こうか」
「ありがとうございます。では、早速」
ん?馬に乗ろうとしてる?
「あ、飛んでいきますんで良いですよ。馬も連れていきましょう」
「え?は?あ?ん?」
これでも練習したんだから。対象に触れなくてもフライの魔法をかけるの。
「アーモレット。こいつに魔術師の常識は通用しないからな」
「み、みたいだな....本当に、お前の息子か?」
「ミーチェの血を濃く受け継いだんだろう」
「あぁ、ミーチェさんの...なるほど」
知りあい?昔の仲間なのかな?
「まぁ、行きますよ。皆、全力で行こう。補助は全部僕がやる」
加速と、空気確保。あとは、王都がおかしいらしいし、見つかりにくくする、隠蔽魔法も使うかな。
「いたぞぉ!討ち取れぇ!」
なんでこうなった?
確かに、相手に魔術師がいたよ?でもさ?精々中級だよ?
いや、それ以前に、なんで僕が狙われてる?殺しちゃ駄目だよね?問題になるよね?
僕は王城に行きたいだけなんだけどなぁ。
「あーもう、面倒だなぁ。お母さん、魔法を使っても良い?」
「駄目よ。凄く弱くしたって、あの人たちからすれば即死級だもの」
「そんなにですか.......?」
「そんなによ。それに、こっちには剣聖が二人いるんだから、問題ないわよ」
...まぁ、確かに。向かってくる人全員を木刀で倒してる。
木刀っていっても、そこら辺に落ちてた木の棒を、相手の剣で削って剣の形にしたんだけど。
攻撃で剣を作る。これも剣聖の称号を貰うためには必要なのかな?
「うおおお!...アーモレット!コイツら何人いるんだ!」
「知らない!お前達を排除する派閥の兵士全員分だ!」
「多すぎる!何万人いるんだ!流石に疲れるぞ!」
「スケルトンの軍勢よりマシだろ!あの時は10万はいた!」
「あの時は、ミーチェやシビアスも手伝ってた!今は殺せないんだぞ!」
「分かってる!兎に角、コイツら皆やるしかねぇだろ!」
「そうだな!」
.......元気だなぁ。実は仲良いんじゃないの?連携取れてるし、互いのカバーが完璧だし。8年以上も会ってないとは思えないよ。
「あの2人はね、幼馴染みなんだよ」
「シビアスさん?」
え、どうしたの?...まぁ、気になってるからうれしいけど。
「互いに、親が厳しかったらしくてね。2人は、一緒に家を捨てたんだ」
そのあと、王都で冒険者になって、仲間も増えて。一番凄い冒険者のパーティーだと言われていたらしい。
解散する1ヶ月前には、2人共剣聖の称号を貰っていた。
解散する日、剣聖の順位をきめる大会があって、2人は戦った。
当時は、アーモレットさんの方が弱かった。でも、結果はアーモレットさんの勝ち。4位と6位の順位になった。
アーモレットさんは手を抜かれたと怒っている。最後は、本気でやり合いたかったと。
「だから、アーモレットさんはダン君を恨んでるし、ダン君はあの時の事を後悔している。けど、アーモレットさんは謝罪を望んでる訳じゃない。ダン君も、それを分かってるから、ああやって接してるんだよ」
そんな事があったんだ.....。確かに、怒っても良いのかな。
「ほら、危ねぇ...ぞっと!」
「それは、お前も...だ!」
「「最後の1人、覚悟しやがれぇ!!!」」
「ひぃぃ!た、助け!誰かぁ!ぐぼはっ!?」
「ふぅ.......コン、終わったぞ。行こう」
「あ、はい。行きましょう」
.......この人たち、スキルにもよるけど、スキル持ちに対抗出来るほど強い気がする。
剣聖って、やっぱり強いんだ...。
リオさんが異常なんだね。うん。
王城に着いて、王から説明を受けた。
かなり劣勢らしい。どうやら、アーモレットさんがいなくなったから、攻め時だと判断したらしい。
「おぉ!よく来てくれた!本当にすまぬ!」
「いえ、僕は冒険者としてここに来たのに、この有り様ですからね。協力しますよ」
「助かる。今は、ガウェイスという者に頑張ってもらっておっての...ん?アーモレットよ。妻はどうしたのじゃ?」
「.....体調を崩してまして、安全な場所に避難させてるっす」
お~。奥さんいたんだ。
体調を崩したねぇ?大丈夫?捕まってないかな?
「おっと、話が反れたな。今、私は僅かな家臣と共に籠城しておるところじゃ。相手は約5万人程なのに対して、こちらは3百人。本当に、ガウェイスがおらねばやられておった...」
「まぁ、あいつは剣聖で、2位だからな。そうそうやられないだろう」
「おぉ!ダン殿ではないか!.....老けたのぅ」
「あんたに言われたくねぇよ、おっさん」
「おぉ、随分と変わったの。昔はあんなに可愛かったのにのぅ」
「子どもの時だろう!?あれから何十年も経ってるんだ。変わるだろう」
「......お父さん、顔広いんですね」
「まぁな。だが、知り合いが王っていうのはなぁ。働きたくない」
あ~。まぁ、僕もリオさんやミルズ君の下で働きたくはないなぁ。それと同じかな。
...まぁ、リオさんの下で働いてるようなものなんだけど。
「さて。まぁ、少し気が楽になった。......そろそろ、話し合うとするかの?」
そうだね。今は何よりも王都を元に戻さなきゃ。
「はい。...ところで、何故5万人なんですか?王都にしては、少ない気がしますが?」
王都の人工は、大体40万人だったかな?
「うむ。皆が皆向こうについているという訳でもないからの」
「と、いうと?」
「市民や冒険者は参加しておらん。それと、少数の貴族も」
.......まぁ、良いや。少ないならその分楽だし。
「ガウェイス、只今戻りました」
「おぉ、戻ったか。ご苦労」
「敵は、もう2万程しか残ってはいません」
「うむ。となれば、包囲してくるか...」
なんでそうなるのか分からないけど、もう良いや。
「ディーネ、ちょっと、席外すね」
「え?うん。..........あ、無茶はしないでよ?」
「わかってるよ。すぐ冒険者になろう」
さてと。ガウェイスさんの相手はお父さん達がするだろうし。
僕はちょっと働いてこようかな。




