3.隣村の女の子
サブタイトルに3.を付け加えました。
いつも通り過ごしていたらなんと、2年が経っていました。
時間経過は早いです。セルベアさんと一緒にいたからか、この歳のわりに言葉遣いが丁寧だと言われるようになりました。
今日から、お母さんと魔法の練習が始まる......筈だったのですが.........。
「シビアス、こいつが俺の息子のコンだ。剣や魔法はこれからだが、知識は豊富だ。幼さゆえに経験は少ないがな」
今日、この家には隣村からきたウンディーネ族代表の、シビアスさんとその娘さんが来ていた。
「この子はディーネ。ウンディーネ族の中でも............ねえ、ダン君。堅苦しいのは止めていつも通りやらないかい?」
「......そうだな、いつも通りやろう!ああ〜肩こる」
元々、同盟を結んでるらしくて、お父さん達は一緒に村の防衛をする事が多いらしい。
「案外すぐに終わりましたね。流石お父さんです」
「コン君はもう喋れるのかい?凄いな...いつ頃からなんだい?」
喋れるようになったのは一歳の時だけど、考え始めたのは......初めてお父さんの顔を見た時だった筈だから......
「1歳から喋り始めました。考え始めたのは、始めて目を開けた時です」
「あの時、やっぱり考えてたのか。コンの父親になれて誇りに思うぞ」
うん。やっぱり褒められると、嬉しくて口調が変わっちゃうな......。
さて、早く魔法の練習を始めたいから本題に入ってもらおうかな。
「それで?何かあるんでしょう?これはただのお話会ではないですよね」
「そうだよ。実はね、同盟関係をより強固なものにしようってことで、君とディーネを結婚させようってなってるんだよ」
つまり、政略結婚みたいなことをさせようと。そう言う事かな。
もしそうなんだとしたら、この親達にはあまり好感は持てないかな。
「まあ、僕はいいですよ」
「本当かーーーーーー」
「ディーネさんが良いと言うのであれば。ですけど」
この2人は何を勘違いしてるんだろう。自分の子どもの事だから勝手に決めていいはずがない。僕なら兎も角。ディーネさんは女の子なんだから、好きな人が出来たらその人と一緒にいたいでしょ。一方的に決めるのは間違ってる。それが理解出来ないんだったら、いつか。ディーネさんに好きな人と付き合わせてあげよう。
.........お父さん達とは縁を切って。
「......そうだな。シビアス、この話は無しにしよう。思い出したんだが、俺も好きにやりたいからって家を出たんだ。束縛するのはおかしいな」
「そうしようか。コン君、君のおかげで目が覚めたよ。もしディーネが君のことを好きになったら、付き合ってあげてくれるかい?」
ディーネさんが僕を好きになったら......それなら
「分かりました。その時がきたら、ディーネさんは命をかけて守り抜きます」
「ありがとう。......ダン君。それじゃ、そろそろ行くよ。たまにディーネを連れて来るから」
「おう!待ってるぜ!」
シビアスさんが部屋から出て、見えなくなるまでずっと、ディーネさんが僕の方を見ていた。そして最後に、小さく手を振った。
「ーーーーーッ!」
何なのかは分からない。けれど、何かの感情が芽生えたのはわかった。
「おい、コン?どうした、顔が赤いぞ」
「......そんな事、無いですよ」
逃げるように部屋を出てしまった。
自分の部屋で本を読んでても、浮かんでくるのはディーネさんの顔だった。そんなに長くは見てなかったはずなのに鮮明に思い出せる。
特に、最後のあの笑顔。あれを思い出すとまた顔が赤くなるのがわかる。
「こんな気持ち、初めてでよくわからないや............」
その日は、寝るまでずっとこの気持ちが続いた。