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ネトゲな彼女を攻略したい! ~Over The Dimensions !!~  作者: 尾所杉治国
プロローグ
4/22

プロローグ『そして僕のリアルが終わりを告げた』04

こちら本日二話目となります。

 突然だが、僕はカレーが好物だ。

 特別に好きって訳じゃないが、三食カレーでも問題ないくらいには好きだ。

 何より白米が好きで、和食全般が好きでもある。

 カレーは確かに元々インド発祥だが、僕らが差すカレーとはイギリスを経て日本で開花した準和食と言っても過言ではない代物だろう。

 そう、より明確にするならカレーライスと呼ばれるそれは日本の味なのだ。

 数多の香辛料が織り成す絶妙な美味さと辛さ、隠し味に加えるチョコのコクや蜂蜜の甘さ、ヨーグルトの酸味なども良いアクセントになる。

 トロトロに溶けそうなほど煮込んだ肉の柔らかさは、本来なら手間暇を掛けなければ得られない贅沢だが、圧力釜という文明の利器により今では身近な存在と言えるだろう。

 ……そう、一言で表現するならば至福。

 ごろっとした大振りの野菜の歯応えもまた、味を楽しむ上で重要なファクターだ。

 大皿に大盛りで二杯。

 ルーは気持ち少なめに、白米がちょっと多いくらいで丁度良い。

 それが僕のカレーライスの黄金比だ。


 お腹を一杯まで満たした幸福感と、少しの眠気を感じながら自室まで辿り着く。

 VRマシンを再び起動し、端末をセットしてベッドにゆっくりとダイブする。

 そして、僕の意識もゆっくりと遠退いて行き――


 ※ ※ ※


 ――気が付けば、そこはゲーム開始地点の広場……『HeavenSward Online』の中だった。

 襲い来る睡魔に負けず、僕は無事にゲームを起動できたようだ。

 腕を回したり、足を伸ばしたりと軽くストレッチをしてみる。

 よし、特に違和感とかは無いようだ。

 まだ二度目のログインになるが、気持ちには大分余裕があるような気がした。

 実はあの後リリアと別れてから、ドッと襲い掛かってくる疲労感があったのだ。

 やはり、初めてのVR体験、VRゲーム体験、VRMMO体験、更には初対面の人とのコミュニケーションや、果ては戦闘までとぎゅうぎゅうに詰め込んだ内容を経験したのだ。

 それなりに体力や気力に自信のあった僕でも、気付かない内にそれなりに消耗していたと言う事なんだろうな。


「さて、何から始めようか」


 口に出して考えを纏めてみる。

 前回のログイン時の最後にリリアとショップを回ったおかげで、必需品の大体の価格は頭に叩き込んである。 その場で購入しなかったのは、単純に所持金に余裕がなくなってしまうから買い控えておいたからだ。

 つまり、優先すべきは購入の為の資金の確保だ。

 お金を稼ぐ方法は幾つかあるが、生産系のスキルを持っていない僕が可能な手段はフィールドで狩りをするか、クエストを受けて報酬を得る事の二択だろう。


「よし、まずは冒険者ギルドでクエストでも受けてみようか」


 ひとまず、僕は一番近い冒険者ギルドでクエストを受けてみることに決めた。

 僕たちプレイヤーはゲームの設定として、世界を旅する冒険者という職業になっている。

 このリヴァイラはそんな冒険者が数多く集まる中心都市であり、街のシンボルにもなっている『女神の噴水広場』のすぐ近くに『冒険者ギルド会館』は存在している。


 ゴシックとかルネッサンスとか言うだろう装飾に凝った洋風建築の外観をしており、それでいて10階以上はあるだろう巨大な建造物だ。

 一目見ただけで分かる威風堂々とした佇まいは、まさにこの街を象徴するに相応しいだけの存在感を放っていると言っても過言じゃないだろう。

 ファンタジー世界においては異質な例えかもしれないが、ビジネス街にありそうな歴史を感じる洋風ビルという印象もある。

 エントランスも大きく、まず扉が高さ4m近くはあるんじゃないだろうか。

 中のホールも高級ホテルのようで、床の石材は磨き抜かれているのか照明の光を反射しているし、高い天井に吊るされたシャンデリアは映画の中でしか見たことが無い様な巨大なものだった。

 柱も大小さまざまなサイズがあるが、一つ一つにシンプルながらも意匠が凝らされているようだ。

 ゲームの知識だと冒険者ギルドとかは大抵が場末の酒場みたいな雰囲気、または荒くれ者のアジトみたいな印象を植え付けられているものだから、前回のプレイ中にリリアに連れられて魔結晶の換金に訪れた時はイメージのギャップに驚かされたものだ。


 二度目の来訪となる今回だが目的はクエストの受注なので、まずはクエストボードと呼ばれる受注可能なクエストの一覧を確認できる掲示板の前へと移動する。

 ここで、自分に合ったクエストを探して選ぶことからクエストの攻略は始まっているんだとか。

 一人用から複数人でのパーティで挑むものまで、雑多にある情報の中から今の自分に見合ったものを探し出すのも楽しい遊びなんだとはリリアの言葉だ。

 一応、掲示されているクエスト依頼書には推奨難易度として人数であったり、パーティ構成であったりは記載されている。


「……よし、あまり悩んでも仕方がないし見覚えのあるクエストを受注することにしよう」


 僕は一つ頷くと、ゴブリンの討伐依頼を受けることにした。

 ゴブリンはファンタジーではお馴染みの子鬼のようなモンスターで、この世界でも緑の小さな亜人として登場する。

 リリアとの戦闘訓練で襲い掛かって来た棍棒を振り回していたアイツがそうらしい。

 地味に武器を扱って戦う知能があるので、決して油断はしちゃダメだよとリリアに教わった。

 確かに、背後に回り込んで襲い掛かろうとしたり、体勢を崩したタイミングで襲い掛かろうとしたりと、中々に狡猾な相手だったと言う印象はある。

 それは裏を返せば戦闘に慣れる相手としては最適な難易度と言えると思うのだ。

 別の理由を挙げるなら、あの時一緒に居たウサギ型のモンスター……グラスラビットだったかな? あれが逃げだすと僕には仕留める手段が無いと言うのが辛いだろうと思うのだ。

 まさか、ひたすらウサギを追いかけて平原を駆け回る訳にはいかないだろう。

 ゴブリンよりも格段に弱い相手だが、近距離での殴り合いしかできない自分が狙うにはちょっと難しい相手なんじゃないかと思うのだ。


 掲示板から剥がしたクエスト用紙を持って受付に向かう。

 ギルドの職員はNPCだと言う事だが……ぶっちゃけ、プレイヤーキャラとの違いなんて見た目では分からない。 アバターと同じ程度の3Dモデルを使っているという事なんだろう……そりゃ、同じ世界の中なのだから当然の話だな。

 何となく見渡してみると、クエスト受注の窓口でも行列があるところと無いところがあるのだ。

 不思議に思って観察してみると、どうやら受付NPCの外見が違うようだ。

 人気なのは金髪ツインテールのエルフっぽい女の子のところと、黒髪ストレートの爆乳の女の子のところ、あとロマンスグレーの髪をオールバックにした紳士っぽい男性のところが混んでいる気がする。 人の流れを見るに受付NPCの処理速度に違いは無さそうなんだけど、何とも現金なプレイヤー達だなぁって思うわけで。

 僕はそんなちょっとだらしない顔をしている他のプレイヤーを横目に、適当に空いている受け付けNPCのところに並んでしまう。

 担当になったのはダークブラウンの髪の、特にこれといって特徴が無い女の子だ。

 ぱっと特徴が見当たらない、ともすれば地味な印象こそが特徴のようにも思える。 村娘Aとか言われてもおかしくないぐらいに地味なのだ。

 他のあまり並んでいないNPCでも割と美人さんだったりする中で、ここまで見た目が大人しいと言うのはある意味すごいことなのかもしれない。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。 クエストの受注ですね?」


「はい、このクエストでお願いします」


「かしこまりました……はい、登録は終了です」


「ありがとう」


「それでは、良い冒険を。 いってらっしゃいませ」


 やり取りとしてはたったのこれだけだ。

 クエスト用紙を手渡すと、それにハンコをポンと一つ。

 同じように、プレイヤーの手の甲にハンコをポンと一つ。

 そして見送りの言葉で終了となる。

 別に長々と説明が入ったり、世間話をするわけじゃなく、まさに淡々と事務処理をこなすだけみたいな感じなのだが……ちらりと振り返って様子を窺って見る。


「うっひょー、やっぱネルシャたんのすべすべお手ては最高!」


「あぁ、今日も間近でセルハさんの谷間を拝めたぜ! たまんねぇ!」


「あぁ、ヴァシムトさんの微笑みだけで今日も生きられる! テンション上がって来たー!」


 ……うーん、彼らは実にこのゲームを楽しんでいるようだ。

 装備を見る限り彼らはもう駆け出しでは無く、一端の冒険者としてそれなりに装備を整え終っている様だったから、おそらくはアーリー組が多いんじゃないだろうか。

 もちろん、比べると少数派ながらも初心者装備のプレイヤーも居たのだけど。

 そうやって自分がこのゲームを楽しむ術を見つけていると言うのは、決して誰かに悪く言われるものではないのだろう……が、何だか釈然としない気分がある。


「あー、あれか。 アイドルの握手会みたいな感じか」


 ようやくもやっとしていたイメージが合致する。

 そう、彼らの態度はどことなく握手会を楽しんでいるアイドルファンを彷彿とさせたのだ。

 彼らがそんな風に楽しむのは別に構わないが、それに自分を巻き込んで欲しくないような何とも言えない気分を感じているんだと思う。 多分。

 別に悪く言うつもりはないんだが、何となく一歩離れた場所に立っていたいと思ってしまった。

 それくらい、彼らは満ち足りた表情を浮かべていたのだ。


「本当、何故か釈然としない……」


 変なもやもやを振り払うように、急ぎ足で僕はギルド会館を後にするのだった。


 次に僕が向かったのは、リリアから紹介して貰った東口外周にあるプレイヤーショップ『Newbie's』だ。 前回の散策でチェックした時にも感じたのだが、やはり初心者支援を謳うだけあって『Newbie's』の価格は一段安い設定になっている。

 その分、効果も控え目ではあるが駆け出しの冒険者にとっては丁度良いのだ。

 まだ収納系のアイテムを購入できていないので、それほど持ち運ぶことは出来ないが予備の購入をしておこうと思うのだ。

 回復魔法を覚えていない自分は、ソロでの戦闘だとヒーリングポーションに頼るしかない。

 その生命線がたったの三つでは、流石に厳しいだろうと判断してだ。

 扉を開けると鈴の音が鳴り響く。


「……ぃ、ぃらっしゃぃませ……」


 ぼそっとした声で出迎えてくれたのは、店長のデイジーではない。

 僕と同じ駆け出しのプレイヤーであるカラーだった。

 生産職をメインに活動するらしく、初対面時にもこの店にポーションを卸しに来ていたはずだ。


「あれ、カラー? 何やってんだ?」


 僕が声を掛けると、あからさまに吃驚した様子で肩を竦める。

 おどおどしたその様子はまさに小動物の怯えたような雰囲気だ。

 もしかしたら、知らない相手にいきなり名前で話しかけられたと思われたのだろうか。


「ほら、俺は昨日……さっき……前回? 何て言えばいいんだ……とにかく、カラーがこの店にポーションを卸しに来た時に、リリアと一緒に居た新米冒険者のセイロンだよ」


 そう言うと、彼女の雰囲気が幾分か和らいでいったような――気がしたが、また同じように硬直してしまった。


「えっと、覚えてない?」


 あれー? 何か不味かっただろうか。


「いえ、ちが……お、覚えてます! わ、私をお姫様抱っこした、セイロンさんですよね!」


 僕の戸惑う姿を見て慌てて彼女がフォローしてくれる。

 あぁ、なるほど。

 僕は彼女の中ではいきなり抱きかかえた変な人と言う印象なんだろう。

 確かに急に触ってくる異性プレイヤーとか、字面だけでも十二分にヤバイな。

 ここは重ねて詫びを入れておく必要があるかもしれない。

 そう思った僕は、すぐに腰を折って謝罪の意を示す。


「あ、あー、うん。 そうだけど、その節はどうもご迷惑をお掛けしました」


「ち、違います! あれは私が不慣れだからで、その、えっと……重くありませんでしたか?」


 余計に慌ててしまった彼女が、おずおずと言った風に問いかけて来る。

 顔を上げると、相変わらずフードの陰で彼女の表情は伺えないものの、何となく角が取れた様な柔らかい雰囲気が漂っているように見えたのだ。

 何が上手く働いたのか理由は分からないが、何とか彼女の緊張感は薄れたようだ。

 僕は彼女の問いに、どんと一つ胸を叩いて自信を持って答えた。


「全然、こう見えて体鍛えてますから!」


「……ぷっ、あはは! ご、ごめんなさい、何だか面白くて……」


「そう? 俺って何か変なこと言ったかな?」


「えっと何だろう、アバターなのに自信満々で鍛えてますって言ったからかなぁ……セイロンさんがあまりにもいい笑顔で言うから、何だか可笑しくて……くすくす」


「そ、そうか……そんなに顔に出るのか」


「セイロンさんって、見た目はちょっと怖いけどお茶目な人なんですね」


 彼女の人物評は自分ではしっくりこないので納得しかねるが、延々とこの話を続けても仕方がないと思い話題を戻すことにした。


「ところで、何でカラーがここの店番してるの?」


「えっと、デイジーさんが急に呼び出しされたとかで、丁度店に来ていた私が代わりに店番を任されちゃったんです」


 はにかむように答えた彼女の仕草から、何と言うかその場面が想像できそうな気がした。

 カラーって少し引いた位置にいるからか押しに弱そうな雰囲気あるもんな。

 知らない仲でも無いだろうし、デイジーに頼み込まれては嫌だと言えそうにもない。

 まぁ、引き受けた以上はしっかりやろうと思っているからこそ、こうしてカウンターの向こうで接客を頑張っているんだろうけどな。


「へぇ、そいつはまた災難だったな……と言うか、そんなに簡単に店番任せられるものなのか?」


 僕が気になったのは店番を他のプレイヤーに任せたと言う点。

 ショップの運営がシステム的にどういう仕組みなのかは知らないが、少なくとも彼女が共同経営者とかそういう立場では無いのは確かだろう。

 だとすると、そんなに簡単にクランなどの関連性の無い他のプレイヤーを代わりに店番を任せたりが出来るのかが気になったのだ。

 もしかしたら、プレイヤーがカウンターの向こうにただ立っているだけの状態を店番と表すのかもしれないし。


「店番は簡易クエストとして発注できるから、その場でクエストを受注すれば簡単に引き受けることが出来るんだそうです。 実際、デイジーさんも私の前でクエスト発注書を作成して、私に手渡す形で店番をお願いされましたから」


「簡易クエストね、そう言うのもあるんだ」


 僕の疑問に、カラーは丁寧に説明してくれる。

 最初に会った時の緊張も解れて来たのか、彼女の声にも弾みが出て来る。

 そして、簡易クエストか。

 冒険者としてギルド会館で受ける以外にもクエストってあるんだな。


「簡易クエストはプレイヤー間でのみ発注と受注が可能なシステムで、このお店に私の作ったポーションを卸すのも簡易クエスト経由でやっているんですよ。

 あとは、簡易クエストを使うことでプレイヤー同士で素材アイテムの売買が出来たりもするそうですよ」


「なるほど、そういう風に使うんだ……じゃ、とりあえずこれを貰おうかな」


 僕は物色していた棚にあるポーションを見繕ってカウンターに並べる。

 丁度良いので、情報ウィンドウから製作者のラベルを確認してカラーの作った物を選んでみた。

 特に深い理由は無いが、折角こうして店番をしているのだから彼女の作ったアイテムを買って見るのも悪く無いかなと思ったのだ。 袖振り合うも他生の縁と言うしな。


「あ、はい! えーっと、『ヒーリングポーション』が3つで5400リールですね。

 ……もしかして、セイロンさんはこれから狩りに行かれるんですか?」


 カラーが驚き混じりの声を掛けて来た。

 何か気になる点でもあっただろうか?

 そう思いながら、腰のポーチに手を突っ込むと『財布』を取り出す。

 この『財布』は特殊アイテムで、中から任意の金額を取り出すことが出来る便利なアイテムだ。

 5000リール紙幣と100リール硬貨が4枚、財布に差し込んだ親指と人差し指の間に重なって出て来きたので、それをカラーに手渡す。


「あぁ、ちょっと腕試しがてらクエストでひと稼ぎしようと思ってな。 はい、これで頼む」


「はい、お預かりします……お代は確かに頂きました。 パーティの方は一緒じゃないんですか?」


 彼女は辺りを軽く見渡して、不思議そうな声を上げた。

 なるほど、初心者が狩りに出るならまずはパーティを組んでからの方が良いとリリアも言っていたからな……おそらく、カラーもそう教えられたから同伴者が居るだろうと思って訪ねて来たのか。


「いや、俺は一人だぜ」


「えぇ、一人で狩りに行かれるんですか!? ……凄いなぁ、私なんてまだまともに外に出た事すらないのに」


 驚いたような、呆れた様な、彼女にしては大きな声で反応される。

 むしろ、その内容の方に僕は驚愕していた。

 彼女はまだ街の外に出たことがあまりなかったようだ。


「え、マジで?」


「生産職をメインでやっていると、都市内で素材を購入してアイテムを作っているだけでも何とかなっちゃいますから……セイロンさんの行動力に尊敬しちゃいます」


 んー、確かに彼女はアバターの操作がまだ上手く馴染んでいないと言っていたし、パーティメンバーに迷惑を掛けるかもしれないと思うと一歩を踏み出す勇気が沸かないのかもしれない。

 少し影のある彼女の雰囲気に、僕は何となくだがそう感じたのだ。

 折角のVRゲームなのに、フィールドの凄さを体験できないのは勿体ないと思う。

 そう考えると、自然と言葉が口に出ていた。


「そんなに言う程じゃないと思うけど……もしカラーさえ良かったら、今度俺と一緒に狩りに行ってみようぜ?」


「……え、えぇ!? む、無理ですよそんなの! 私、絶対に足を引っ張っちゃいますから!」


「それくらい別に良いんじゃないか? 少なくとも、俺はそういうの気にしないし……ま、気が向いたらってことで考えて置いてよ。 折角知り合った仲だしな……それとも、迷惑だったか?」


 良かれと思っても無理強いは良くないからな。

 彼女が外に出たくないと言うなら、それは無理矢理にでも曲げさせる必要がないことなのだ。

 それに、まだ良く知りもしない異性のアバターに誘われると言うのも、心象は良くないのかもしれない。

 カラーって人見知りしそうな雰囲気があるし。


「いえ、迷惑とかじゃなくて、ちょっとびっくりしたって言うか……誘ってくれて嬉しかったです……えっと、じゃあ、また今度都合があえば、その時は是非ご一緒させて下さい」


 色々と考えていたが、全てはどうやら杞憂だったようだ。

 顔を上げた――と言っても、やはりフードの陰になって口元ぐらいしか表情は伺えないのだが――彼女には微かな笑みが浮かんでいた。

 アメジスト色の二つの瞳が、こちらをじっと見つめてくる。

 彼女なりの精一杯の答えに僕は内心でホッと一つ安堵の息を吐く。


「はは、了解! んじゃ、ひと狩り行ってくるわ」


「いってらっしゃいませ」


 彼女のエールを背に、僕は初めてのソロハントに出かけるのだった。

更新速度を上げた方が良いかと思い試行錯誤中。

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