プロローグの前に
日が傾き世界が染められてる中、その部屋も赤く染まっていた。
「う、嘘だ…………嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ____」
床で足を抱えながら同じ言葉を口に出して現実逃避しようとしている男の姿は憐れだった。
「……………………………」
現実逃避している男の視線の先には室内なのに雨合羽を着ている人がいた。
そして、濡れていた。
部屋を染めているモノは夕日だけではない。
______血______
おびただしい量の血が壁に張り付いている。床に溜まった赤い水溜まりには蛍光灯が映っていた。
「ま、ま、待て待ってください!か、金を!金庫を俺が開けます!そして二度とアンタに近付かないし関わらないことを誓うから!頼むから殺さないでください!」
男は現実に戻り、見苦しく騒ぎ出し命乞いをしたが無理もないだろう。
たった今、額に黒光りする拳銃を突きつけられたのだから。
「……………………………」
それでも雨合羽を着た人は無言のままで、そして指に掛けた引き金を引くこともしなかった。
引かれない引き金に男は希望が見えたのか頭の中で金庫の開け方から助かってからの身の立て方まで考えていた。
が、前向きな思考と共に冷静になった所為か、部屋に充満していた血の臭いが鼻に突き刺さった。
そして何でこんなことになったのか考えて頭にある二文字が浮かんだ。
______後悔______と