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こだから

作者: 瀬川潮

 もののけなんかは怖くない。だってそうでしょ? 例えば抜け首なんかはおとなしいものじゃない。首だけが飛んで人の血を吸うって言われているけど、これは間違いで人の血なんか吸わないってぼくは知っているし。

 でも、ウチの鬼ババは別。何かにつけおとなしいぼくを叱りつけ、暴力を振るってくる。「お前なんかウチの子じゃない」ってね。怖いのは鬼ババ。それ以外は怖くない。

 だから、村人が「近寄っちゃなんね」って言ってる村外れにある神社の巨石に来てもへっちゃらさ。ウチにいるよりよっぽど心が落ち着くよ。

 巨石の下には、恐ろしいもののけが封印されてるらしい。封印しているのは、巨石周りの7つの木球。子どもの頭くらいの大きさがあるケヤキの球は、一つ一つはつながっては無いけど大きな数珠みたい。

 その一つを、どっこいしょと両手で抱えて持ち去った。恐ろしいもののけが蘇って、ウチの鬼ババを村ごと滅ぼしちゃえばいい。ぼくは、木球を持っているから襲われないと思う。もし襲われても森に逃げ込めば大丈夫。子どもだから隠れる隙間はたくさんある。きっと、ぼくだけは大丈夫。


 その晩、赤い大きな鬼がウチに来た。

「オラの宝物、盗るでね」

 巨石の下のもののけが木球を取り返しに来たんだ。なんてこった、こいつも鬼じゃないか。どうやら7つの木球は封印してたんじゃなくて、鎮魂していたらしい。そうでないと取り返しには来ない。

 大鬼の手が「返せ」の言葉とともに伸びてきたかと思うと、むんずと掴んで来た道を帰り始めた。

 ぼくは殺されなかったことにほっとしたけど、ちょっとだけ困っちゃった。

 何せ、木球と間違えてぼくの頭だけを大事そうに抱えているんだよ。ぼく、抜け首だからおとなしくしてるしかない。

 ふと耳をすますと、はるか後方からぼくの名前を呼ぶ鬼ババの声――いや、お母さんの声が近付いていた。

 ぼくを、取り返すために。




   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 他サイトに発表したことのある旧作品です。

 当時はこれよりもぼやかした書き方でした。すこし分かりやすくなっています。

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