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Prolog-2-1

プロローグだけでかなりかかりそう

「人に価値はない。けれど、人がつくる夢には価値がある……むにゃむにゃ。ん、ぶへっへぶ! んあー」


 息苦しさを感じ、俺は意識を取り戻す。思考は中空を漂い、睡魔は瞼の上でトランポリンしている。体は重く倦怠感を感じながらも緩慢な動作で周囲を半目で見渡すと、そこは見慣れた場所。我が学び舎、草薙学園高等部の教室である。そして、俺は自分の席の椅子に座っている。


 思考がじょじょにクリアー透徹としたものになっていく。そして授業の開始して速攻で眠りに落ちたことを思い出した。


 教室の喧騒が耳に入ってくる。どうやら、休み時間らしい。


 しばらくぽけーっとしていると、俺の方に指向のある足音が聞こえてくる。カクテルパーティー効果ってやつやな。


「ようやく起きたか。それよりお前、寝言具体的すぎるだろ。あとなになんかすごいこと言った後に寝むせてんの?」


 頭上から言葉が降ってくる。声の主の方へ顔を向けると、そこには俺の友人の一人である和彦が呆れ顔で突っ立ていた。


「んー……いま何時?」


 寝ぼけ眼を擦りながら、ふぁーっと間の抜けた欠伸をかき、大きく伸びをする。


「そうね、大体ね。12時」


「んー……まだはやい……むにゃむにゃ」


 なんだまだ12時か。三時間しか寝てないじゃんかよ。それはともかく、すっげぇ眠たいのに一回がっくん! てなると一気に目が覚めるよね。まあそれはおいといて、俺は三時間も眠りこけていて脳みそレム睡眠状態なんでまだ眠い。起きてよいタイミングではないでござる。というわけで、おやすみなさーい。俺は再び机に突っ伏した。ぐーすかぴー。


「おーい、まだねんのかよ。ってかお前いくつだ!? もう昼なんだし飯食おうぜ」


 気だるい俺に勝手にしんどいバッドな話を続ける和彦くん。胸騒ぎの腰つきで踊り出てやろうか。とはいえ、話しているうちに眠気もすこしずつ覚めてきた。腹の虫もそろそろ、ご飯たべたーいっていびり出す頃だしな。おとなしく飯でも食うか。

 

「ちっ、うっせーな。はいはい起きればいいんざんしょ」


 俺は悪態をつきながら、席を立った。


「やっとおきたか……。そろそろ伊織ちゃんが来る頃だぜ」


 おう。もうそんな頃かい。と、頭の中でぼんやりと考えていると、廊下から地鳴りのような音が響いてきた。そしてぴたりと俺の教室の扉の前でその音が止まると、教室の扉が勢いよく、もといぶち破られた。


「おにいちゃーーーーーーーーーちゃん!! ぎゅっと引き寄せて抱き寄せて、貴方の心にはぁっと打ち込む弾丸心眼マシンガン! 愛しのシスターザシスターこと伊織ちゃんっだよーーーー!!」


 教室の扉をぶち破ってお弁当を高らかに上げて、我が愛しき妹、伊織は颯爽登場した。クラスの山田くんがその際、扉の下敷きになるのを視認したが……、まあいいやっ! 細かいこと考えてたら飯がまずくならぁ。扉は……コマを跨げば直っているだろう。これ、カートゥーン世界の常識。 


 普通なら異常な光景だが、もはや毎日のように繰り返される光景にはさすがに皆なれてきたらしい。一瞬、教室内の生徒の視線が伊織に集まったが、いつもどおりのことであると確認すると、また彼らの日常に戻っていった。


「毎度毎度、ごくろうなこったな。まるで台風だぜ」


 やれやれと和彦はその光景に肩をすくめた。まあ無理もないだろう。ちなみに、伊織はこの暴風っぷりからヒューマノイドサイクロンと呼ばれてる。俺が名づけた。


「まぁ妹だしね。妹ってなんかそういうもんじゃね。知らんけど。じゃあ飯にすっか。彼方呼んでくるわ」


「おう」


 和彦と宇宙一の妹選手権で優勝して$$の賞金がかけられているようなスタンピードな妹をあとに、俺は自分の弁当を手にして彼方の席へ向かう。伊織の来訪から準備していたのか、既に弁当を手にしていた。ウサギ模様の弁当袋ってところがいかにも彼方らしい。


 近づく俺に気づいたのか、彼方は俺の方を向いた。


「あっ、晶。もう部室いける?」


「おう、大丈夫だぜ」


「じゃ、いこっか」


 彼方はそういってあどけない微笑みを俺に投げかけた。


「お、おお」 


 なんだか照れくさくなって俺は彼方から視線をそらすと、ぽりぽりとこめかみをかいた。


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