星に願いを・2007
『空想科学祭FINAL』に合わせて、【七夕一人企画】の過去作品を一挙に公開!
こちらの作品は『星に願いを・2007』で、二〇〇七年七月七日に公開したものです。
織姫と彦星が出逢う夜空に。
探査機「しちせき」はベガに向かっている。
昔から惑星の存在が確認されていた。
そして、太陽系と似た惑星の構成が確認された。
これは木星型の惑星だけでなく、地球型の惑星も存在しているのだ。
もちろん、地球のような惑星が確認されるまでには至っていない。
それを含めて総合的に調べるために探査機を派遣することになったのだ。
ボイジャーやニューホライゾンズ、ファーラウェイの成果で、太陽系の外側の様子もかなり分かった。
そして、それを越えた先の探査に目途が立ったのだ。
それは「重力推進の開発」だった。
力場の統合理論が発展・結実し、そこから導き出された重力制御理論と重力制御を具現化する技術の発明と発見、それに伴う技術の開発による所が大きい。
重力推進は外宇宙への夢を膨らませたのだ。
ベガは、地球からの距離は二十五光年ほどだ。
地球を発進してから十八年が経過した。
やっと半分の十三光年の位置まで来たのだ。
えらく時間が掛かっているように思えるが、従来のイオンエンジンやロケットに比べれば、その差は歴然である。
もちろん、推進装置だけの問題ではない。
この距離になると、こちらから指令は送れない。一つの指令だけで何年も掛かってしまうからだ。
もちろん、人間が乗り込めば良いのだが、重力推進は発進当時は有人機の開発に成功していなかった。この問題は、いずれ解決されるだろう。
それより問題なのは、この長い旅を支え、壊れない、メンテナンスフリーな生命維持装置の開発が、遅々として進まなかった。
よって、高度思考型電子頭脳による、完全自立型の探査を行わなければならない。
そう、こうして話している私は「しちせき」の「ハイ・レンジ-エレ・ブレイン」である。
旅の半ばだが、ずい分たくさんの成果を地球に送信した。
だが、私のメモリーバンクには発進当時の知識や理論しかインプットされていないので、未発見の事象や現象、事実をたくさん、取りこぼしていることだろう。
だが、そればかりは仕方のないことだ。
現在、道半ば。
一番怖いのは、地球の人間たちが私を忘れていないかどうかだ。
もし地球が滅び去っていたら、私のデータは…?
だが、私にはそんなことを心配しても仕方がない。
私にとっては、ベガに辿り着くことが最優先だ。
ベガに辿り着いて探査し、そして地球に帰る。
ミッション・コンプリートを目指すのみだ。
でも、楽しみはある。
ベガには誰かが居るのだろうか?
織姫?
そんなことを計算しながら、私は宇宙空間を突っ走っている。
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初出:ライブドアブログ『憂鬱』「七夕の夜に」二〇〇七年七月七日