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双天のステルラ  作者: なまけもの
世界への旅立ち
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第8話

仕事が忙しくてなかなか執筆に集中出来ませんね。他の社会人の人達はどうなんでしょうかね、実は意外と早い更新速度だったりするのかも。

今回で8話目なのですが完結までには普通に100話を越えていきそうで怖いのですが。一応、物語の全体的な構成は出来てはいるのですが中々文章にする事が出来ません。

もっと色々な小説を読みこまなければなりませんね。頑張れ俺!!

 ファゴット王国の城下町で起きた強奪事件の一部分に遭遇したアイルとアイラは吃驚していたが落ち着きを取り戻しつつあった。しかし、城下町は騒然としており人々は不安を隠しきれず慌ただしく過ごしていた。王城が建っている方から十名弱の兵士を引き連れた騎士が歩いてきた。見た目は渋く熟練の戦士の風格が漂い、町民は皆その騎士が表に出てきた事に安心し静かになっていく。

 双子も騎士という立場に就く者を見るのは初めて。と言うよりも双子は初見のモノの方が圧倒的に多く、兎に角関心を示しやすく町民に混じって騎士を凝視する。頭髪や瞳の色は世界中どこにでも溢れる色なので旅人の服を着ている以外は町民の中に混じっても見分けがつかない。


「エルドーク様だわ…渋くて素敵」

「まさに騎士って方だよな!」


((ふえ~、凄い人なんだ))


 老若男女問わず敬われるエルドークと呼ばれる騎士。双子は随分と慕われている人なんだなと周りの声を聞きながら同じ事を心中で思い一度だけ瞬きをする。そして、瞬きをして再びエルドークへと視線を向けるとエルドークと視線が重なったが、特に双子とエルドークに接点はないのでエルドークは全く気にせずに言葉を発する。


「皆落ち着くのだ。盗賊は我々が必ず捕えてみせるだから安心するのだ」


 盗賊からの被害を二度と受けないように捕えると宣言して人々を安心させる。やはり一般兵が言うのとでは信憑性や安心感は別物で双子も周囲の人々と同様にエルドークが居るのならば大丈夫だと思った。


「騎士って凄いんだ。たった一声でこんなにも町の人達を安心させてるんだから」

「うん、カッコいいよね。騎士は男の子たちが憧れているのをよく聞くよ私」」


 一声で沢山の人々を安心させる事が出来るエルドークに否、騎士という立場にアイルは感激していた。それはアイラも同じでカッコいいという感情を抱きながら、山奥の村で生活を送っていた時はアイルと同年代の子供達の憧れの対象だった事を思い出していた。騎士は少年たちにとってそういう夢に近いものでもある。誰もが慣れるわけではなく才能とそれを向上させる意思そして、相応の訓練が必要になる。


「うんうん。って、ああ! お城に戻りに行ってるよ!?」

「え、え、えっ!? アイルはあの人に用があるの?」


 引き連れていた兵士と共に一旦、王城へと戻って行く後ろ姿を見てアイルは慌てて走りだす。突然走り出すアイルに驚きつつも追い掛けながら何か用があるのかを訊ねる。


「勿論だよ! 騎士っていうくらい偉い人なんだから王様に会えるかもしれないじゃん!」

「騎士の人に言ったら…あ、会えるのかな~?」


 関所を通る為に王様に会い許可を貰う事が今の目的だが騎士エルドークに話せば会えるものなのかとアイラは疑問に思いつつもアイルに着いて行く事にした。もしかすると本当に王様に会えるかもしれないという淡い期待を抱いたのも事実であった。

 速力があるのでアイルとアイラはすぐにエルドークに追い付く事が出来て、アイルは大きな声でエルドークの事を呼ぶ。アイルの声が届いたのかエルドークは歩くのを止めて後ろを振り向。


「待ってー、エルドークさん!!」

「お前達、エルドーク様に何か用があるのか?」


 だが先に双子に声を掛けたのは極普通の一般兵士だった。


「そうだよ。王様に会いたいから騎士のエルドークさんに話せば会わせてもらえるのかなって思っただけ」

「国王様に? 何故、子供のお前達が国王様に会いたがる」

「だって王様から許可を貰わないと関所が通れないんだもん。普通に通れるのなら王様に会う必要はないと思うけど」


 王様に会いたいから声を掛けたと兵士に答えると兵士は何故だと問い返してきた。アイルは素直に自分の目的を伝える。関所の通過には王からの許可が必要なわけで許可が不要ならば王に会う理由はないのだ。そのままオブラートに包み込まずに言うものだからアイルは兵士に睨まれてしまう。


「お前は王をなんだと思っているんだ!」


 兵士からすれば尊敬の念を抱く王の存在価値が通行許可以上はないと言われたように感じるのでついアイルに叱責してしまう。それは誰もが見聞きしたとしても同じように批難されていただろう。


「な、なんでそんなに怒るのさ? なんか変な事を言ったの?」

「うん…もう少しオブラートに言わないと怒られちゃうよ。アイルだって王様が偉い人だって知ってるでしょ」

「そっかぁ、それなら気を付けるよ。えっと、変な言い方をしてごめんなさい」


「分かれば良いんだ。これからは言葉を気を付けろよ」


 咎められた理由が分からないアイルは吃驚し戸惑いながらも隣に立つアイラに理由を求めた。アイラは苦笑いを浮かべながら言葉を選んだ方が良いと教えて、王様が一番偉い人だという事をアイルに再認識させる。呑気な部分は相変わらずだが納得し自分の非を認めたアイルは兵士達に頭を下げて謝罪した。

 素直にアイルが謝り相手はやはり幼い子供なので兵士はそれ以上言う事はなかった。すると兵士達の間を通ってエルドークが双子の前に立つ。すると何故関所を通過したいのかを双子に問いかけてきた。


「そんな幼い身でなぜ関所を通りたいのだ。町の外には凶悪な魔物が生息しているだろう」

「お父さんとお母さんを探してるんだ。だから関所を通って色んな場所に行きたいんだ」

「そうか、ならば一度王に会ってみるのも良いだろう。許可を貰えるかどうかは王次第だとは思うが」


「ホントに?! やったー、王様に会わせてくれるんだってアイラ!!」

「やったね! けど、こんな格好で失礼じゃないのかな……」


 アイルから旅をしている理由を聞いたエルドークはそれ以上の追求はせずに王様に会えるように話をつけると伝えた。王様に会える事になるとアイルは嬉しそうに喜び、アイラも喜んでいた。しかし、服装は王様に会うには少々粗い服装なのではないかと不安にしていた。


「説明すれば王も分かってくれる。お前達も一緒に着いて来ると良い、他の者達は城に戻り次第会議を開け」


 王様に会わせる約束を双子と交わすとエルドークは兵士達を引き連れて一度城に戻っていく。恐らく盗賊団を捕える為の会議を国王交えて行うのだろう。城下町に来てまで金品の強奪を行う程に大胆かつ凶悪なので会議を開く必要があるだろう。

 エルドークを先頭にして、それに続くように兵士達は横に三名、縦に四名の列を作る。その後ろを着いて行く双子は中々幸先の良い旅に喜んでいた。


「なんだか話が出来そうで助かるねアイラ!」

「凄く幸先が良いね私達。お父さんとお母さんにも直ぐに会えたら良いのに」

「だよね~。でも何でボク達を森に捨てたんだろうね」

「経済的に不安定だったからとか、かなぁ?」


 簡単に両親を見付ける事が出来ればと淡い願望を抱くアイラに共感しながらアイルは頭を捻らせていた。考えれば考える程に両親については不明な点が多いく、鈍いアイルでもつい疑問を抱いてしまう程だ。幼い自分達を捨てなければならない程に家計は火の車だったのか、それとも不思議な夢に出てきた美しい女性が告げたように出生に大きな関係があるのではないかなどと色々と予想してしまう。だからと言って両親を恨むという気持ちは一切湧いてこないのは、両親の記憶が全くないからなのかもしれない。

 アイラと両親について談義していると巨大な王城が見えてきた。灰色のレンガで建設されており屋根にはファゴット王国の旗がたっている。城というものを挿絵以外で見るのは初めてで、その圧倒的な雄大さと尊大さに口を開けて突っ立っていた。


「で、でっかーいっ!! 絵で見るよりもずっと大きいし綺麗だよっ!!」

「わぁ~…これがお城なんだ……」


 二人とも非常に興奮し目を輝かせて城を眺めていた。子供らしい反応を見せる双子に兵士達は満足げにしていたのはファゴット王国に高い忠誠心があるからだ。でなければ興奮される事に満足するはずもない。


「お爺ちゃんの家の何倍も大きいし、走り回れるぐらい広いね!!」

「えっ、アイル絶対に暴れたら駄目だよ!? 何か一つでも壊したら一生掛かっても払えないかもしれないんだよ」


 走り回れるぐらい広いと言うアイルにアイラは必死に暴れるのは禁止だと注意する。城内にある物を一つでも壊してしまえば想像出来ない額の請求書を受け取る事になってしまう、そうならない為にも厳しく注意をアイルにする。



 城の床には高級な赤い絨毯が敷かれており城の中には幾人もの兵士が厳重に警備しており、使用人もせっせと各々の仕事をこなしていた。

 城内はこんな感じなのかと見学しながら玉座の前までエルドークと一緒に歩く双子。玉座の間に到着すると双子は例にならって跪いて豪華な椅子に座っている王を見上げる。様々な宝石が散りばめられ職人技によって作られた王冠を被っている事が特徴だ。


(ふへ~、あんなの被ってたら肩が凝りそうだよ)

(…き、緊張してきちゃった……!)


 王と謁見するという経験にアイルは完全にズレた感想を抱き、アイラは普通の感想を抱いていた。同時に王様と話す事に緊張し顔が強張っているのは誰が見ても分かる事であった。


「エルドークよ盗賊の件はどうなっておる。このファゴット国領からは出ていない事は分かるが早急に対処するのだ」

「分かっております。それとハヴァン王に会いたがっていた子供達を連れて参りました」

「私に会いたい子供? ほう、そこの子供たちか…ふふ、中々の面構えをしておるな」


「えっと……」

(あ、あれ?! こ、声が出ないよ~……)


 すぐに追いだされると思っていたアイラは意外だと思いながらも王の視線に身が固まる。声を出そうにも緊張して出てこないので心中で余計に焦りを覚える。


「ボクがアイルでこっちがアイラだよ。宜しくねハヴァン王」


 どんな環境でもマイペースでいるアイルは何時もの様に言葉遣いなど気にせずハヴァン王に自己紹介をした。隣で聞いていたアイラは今ので簡単に緊張が解けてすぐにアイルの口を塞いだ。


「むーむーっ!」

「こ、言葉遣い…言葉遣い…。私達の身分は旅人だよ……」


 王を放ってその眼前でアイルに注意をするアイラも充分失礼にあたるのだが、双子はお互いに全く気付かないままで流石に見兼ねたハヴァン王は一度だけ咳をして双子に気付かせる。


「ゴホンッ!」


「あっ!」

「えっ」


 ハヴァン王の咳で漸く気付いた双子は恐る恐る上を向く。身長差から双子はハヴァン王を見上げる形になるのだが表情を直視し辛いのだがハヴァン王は特に気にとめる様子も無く口を開く。


「それでアイルとアイラは私に一体何の用なのだ?」

「えっとですね、関所を通るには王様の許可を貰わないと駄目だと言われたんですけど」

「確かに物騒な世の中になってきるからな兵士にはそう命じておる。つまりアイル達の用はその許可が欲しいから私に会いにきたと」


 関所を通過するにはハヴァン国王からの許可証が必要だと関所に居た兵士から言われた事を伝えると、ハヴァン王はその為に会いに来たと双子の真意を読みとった。


「そ、そうです。それでもし良かったら許可を貰えたら嬉しいのです」

「――武器だけを見れば一端の旅人には見える」

「そ、それじゃ……!」

「だが許可するわけにはいかん。お前達はまだ幼く魔物に遭遇し殺される事も考えられる」

「「そんな……」」


 気持ちを汲んでくれるのではないかと淡い期待を抱くアイラだがその期待は見事に打ち砕かれた。身形は幼いながらも武器のお陰で充分旅人には見えるのだが、二人はいまだ十もいかない子供で王はそんな幼い双子に許可は出せなかった。許可を貰えなかった双子は落胆して非常に落ち込んだ表情を見せたのだが玉座の間に居る者達は皆、ハヴァン王の意見に同意していた。

 いくら武器が一級品でも周囲からの評価は何も無い。高名な騎士であればこの大陸の外に行っても名を聞く事は出来たり英雄でもあるのならばハヴァン王は快く許可を出していただろうが、双子はやはりまだ幼くどうしても危険だと周囲からは思われてしまう。


「ならボクとアイラの二人で盗賊を懲らしめる。そしたら王様もボク達二人の実力を認めてくれるでしょ!!」

「え、ええええっ!? な、何を言ってるの…アイル!?」


 見かけだけで判断されたアイルは関所の許可証を貰う為に大見栄を切った。アイルらしい思考なのだがここまで見栄を張るとは思わなかったアイラは非常に驚愕をしてアイルの方を向きながらもう一度だけ確認する。


「だってこのまま旅が続けられないんだよ? それに盗賊に負けるくらいならこの先旅なんて出来っこないし、盗賊を捕まえたら王様だって認めてくれるよ!!」

「そ、そうだけど…二人だけで出来るの? 子供だからって盗賊はきっと容赦しないよ……」


 アイラから本気なのかと再確認されたアイルはご立腹ながらも答えを返した。その答えを聞いたアイラも納得はしていた。この先の旅の中で魔物達もより凶悪化するだろうし見知らぬ魔物にも遭遇する上に道中では連戦や数の暴力という危険な目にも遭うのはアイラにも予測出来る自体である。さらに本当に盗賊を懲らしめる事が出来たのならアイラ自身にも大きな自信となる。しかし、城下町で見た盗賊は皆、屈強そうでアイラは委縮もしていた。


「きっと大丈夫だよ。根拠とかはないけどボクとアイラならやれる!」

「う~…分かった。それなら私も頑張る…!!」


 アイルの勢いに流されながらもアイラもまた決断してしまった。


「ハヴァン王見ててよ! ぜったいに盗賊を捕まえて見せるからね!!」

「わわっ、待って…アイル」


 ハヴァン王に大見栄を切ったアイルはそのまま玉座の間から走って出て行く。それを追ってアイラも出て行き、残された王や大臣、兵士その他大勢の者は口を開けたままであった。


「オイオイ、あの子供なんて馬鹿な事を……」

「盗賊団を相手に二人でなんて無謀すぎるだろ」


 盗賊なのだ明らかに鍛え抜かれた野蛮そうな男というイメージを浮かべる兵士達は頭を抱えた。


「くっ…くくっ!! おもしろい子供達だ、エルドークよお前はやる事は分かっているな?」

「ええ、勿論ですハヴァン王」


 子供にここまで見栄を切られるとは想像出来なかったハヴァン王は面白可笑しく笑ってしまう。だが、何故かそれを絶対に無理だとは否定せずにその将来性に期待した。そしてエルドークに何かを命令するとエルドークは姿勢を正し敬礼する。

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