第6話
いよいよ双子の旅が始まりました。もっとも旅が始まっただけで物語自体は全く進展していませんけどね。というよりも最初はあまり物語よりも双子の旅を書く事の方が多いと思います。
そして戦闘描写ェ…なによこれ。一撃で終わりってまあこれは剣が凄いからなんですけどね。アイラの特別な力に関してはそろそろ出したいなと思いますけど、それ程特別な力ではないです、多分。
それでは今回も見てやってください
まだ見ぬ両親を探す為に山奥の村を旅立った双子は草原を歩き続けていた。草原とは言え山奥の村から次の街までの道はファゴット王国によって開拓されており迷う事は先ず有り得ない。一応、山奥の村もファゴット王国の領土の内になるので道が開拓されているのだが少々粗いのが目立ち随分と放置されているのが分かる。
既に山奥の村が見えない程度は歩いた双子。特にアイルは今まで村周辺までしか見た事がないので活き活きしているのだが、アイラは少々不安そうにアイルの後ろを着いてきている。
「村から離れた事がなかったから凄いワクワクするねアイラ!!」
「そう、だけど……アイルは不安じゃない?」
楽しそうに話しかけてくるアイルを見ながらアイラは不安そうな表情を見せ、これからの旅に心配はないのかと聞いてみた。するとアイルは何時ものように深く考え込まずににこやかな笑顔で答えた。
「だいじょーぶ! アイラと一緒に旅をしてるんだから怖いものなんてないよ」
「その自信はどこからくるの…?」
「それは分からないけど旅をしてるんだから楽しんだもの勝ちだよ」
一緒に居るから怖くないと言うアイルにアイラは嬉しさ半分と呆れ半分が混ざっていた。アイルが考える程、アイラ自身は自分にあまり自信を持っていないので役に立てるのか非常に不安なのだ。さらにアイルの自信に恐らく根拠はあまりないのも呆れる理由の一つである。
もっともアイル本人は根拠などなく単純に楽しめたらそれで良いと語る。後の事はその時々に考えるのがアイルだ。それを知っているからこそアイラは深く追求はせずに目的地を聞く。
「そう、だね。それよりも行く場所は決まってるの?」
「何処に行けば良いんだろう。やっぱり一番最初はファゴット王国に行くのが一番だと思うんだけど」
「本格的に旅をする準備も城下町で整えないと駄目だからね。持ってるのは武器とお金ぐらいでまだ準備万端じゃないから」
「それじゃファゴット王国に向かってレッツゴー!!」
現在二人の持ち物は最低限だけで身を守る為の武器と金銭類、衣類なものである。荷物が少ないのは比較的早く行動する為でもあるのだが旅人初心者の双子には旅には一体何が必要なのか見当もつかないでいた。
その為、双子は先ずファゴット王国の城下町に向かい旅の準備を本格的にしようと決まり双子の進路はファゴット王国に決まった。まだ太陽が昇っている頃なので双子は小休憩をいれずにファゴット王国を目指して歩き続ける。
ファゴット王国に向かう途中には当然、行商人も通ったりするので水を売ってもらったりしている。流石に長時間歩き続ければ喉も渇くので竹で作られた水筒に二人分の水を補給してもらっている。
「おめえたち子供なのに旅をしてるのかい?」
「うん、そうだよ。今日の朝早くに旅立ったんだよ」
「ということは山奥の村から来たのかい。それなら真っ直ぐ道なりに進めばファゴット王国の城下町が見えてくるから気を付けるんだよ」
「それなら迷う事はないんだねっ!」
初めて出会う人でも気軽に話せるアイルは行商人から買った水をその場で飲みながら他愛のない話をしていた。人見知りなアイラはアイルの後ろに隠れてアイルと行商人の話を聞くだけである。
「おじちゃん、お水を売ってくれてありがとねー!!」
「あの…さようなら」
話し終えると行商人にお礼を述べてファゴット王国へと再び歩み始める。その道中で初めて双子は魔物と遭遇した。血色の悪い肌をしており右手には棍棒を持っており体格は双子よりも大きい魔物ゴブリン。それを目の前にしてアイルは即座に剣の柄の部分を握り鞘から抜こうとする。が、それよりも早くゴブリンが双子に襲い掛かり双子は左右に別れて避けた。
「きゃ……」
「アイラ、だいじょうぶっ!?」
アイルはグランと日々剣の稽古をしていたので易々と避けたが戦闘訓練などした事ないアイラは避けた拍子に自分の足に引っ掛かり転び小さな悲鳴を漏らした。倒れ込んだアイラを見てアイルは剣を抜こうとした動作をやめてゴブリンの横を素早く走り抜けてアイラの元へと駆け寄った。アイラはすぐに起きあがって転んだだけだと言う。
「だ、だいじょうぶだよ。足に引っ掛かって転んだだけだから」
「それなら安心だね。いくぞーっ!」
転んだだけなので特に擦り傷は見られず安心するアイル。流石に突然の攻撃に吃驚して今の様だったがアイラは一応、弓に空色に輝く細い弦を発現してゴブリンを見据えて構える。成りの部分は金色でその部分からは黄金の粒子が煌めいているのが見えた。アイルも鞘から剣を抜いて片手で持つ。長さはアイルが持つにしては少々長いが何故か初めて使用する武器でありながら双子の恰好は何故か様になっていた。
武器が特別凄いのかゴブリンは見えない威圧感に圧倒されて先程のように襲い来る事は無くそれをチャンスと言わんばかりにアイルは地面を蹴って一気に攻め寄り素早くゴブリンの体を斬る。決して殺す気はなく攻めてこなければ双子にとっては万事解決な事なのだがアイルが今の武器を使えきれていないのか軽く振った斬撃でもゴブリンに致命傷を与えるには充分だった。
「ええっ!? そんなに深く斬った覚えはないよ!?」
ゴブリンの体を裂いた部分から鮮血が飛び散りアイルは予想以上の攻撃に自分自身が驚いていた。たった一度の斬撃で終わった戦闘だがアイルは自分の持つ剣を見ながら不満そうにしていた。
「どうしたの…アイル?」
「なんだかこの剣に振り回されてる気がするんだよ。さっきは深く斬ったつもりなんてなかったのに」
不満そうなアイルを見てどうしたのかを聞くアイラ。その理由を答えるアイル。アイルが剣の所有者なのだが今は剣が自ら意志を持ち勝手に攻撃を行っている印象を抱いていた。その為、不満げにしていたのだ。
「ずっと使って行けばちゃんと使いこなせるよアイルなら」
「そうだね! これからもっと訓練して使いこなして見せるぞー!!」
まだまだ使いこなせていないアイルだがアイラからきっと大丈夫だと言われて笑顔になった。使いこなせないのならば使いこなせるように努力をしていこうと単純思考のアイルは戦闘が終わったので剣を鞘に戻した。アイラもまた弓を入れる袋にきちんと直した。空色の弦はアイラの意思一つで発現と消滅が可能なのだが今回は攻撃する事はなかった。
ゴブリンとの戦いから五時間程度歩いた双子。既に日は沈み空も暗くなってきており双子に疲れが見えてきた。
「一本道って言ってたけど…まだ…全然見えないね」
「う、うん…歩き疲れた……」
小休憩を入れつつファゴット王国を目指しているのだが全く見えない。調子に乗って歩き続けた結果、非常に疲れており叢の上に座り込んでいた。山奥の村はファゴット国領の中では辺境の分類に入るので到着するのには時間が掛かるのだ。その事もあってか山奥の村から旅をする者は稀である。逆にファゴット城からの使者が来る事も年に一度ぐらいだった。
「山奥の村から大分離れたんだ。なんだか夢のように感じるよ」
通って来た道を座ったまま振り返って見るアイルはまだ夢のように思っていた。まだまだ世界は広いのだがアイルにとって自分達が座り込んでいる場所から山奥の村は遠い場所になる。それはアイラも同じで果てしなく広がる夜空を見上げる。
「うわぁ~…星空がきれい」
「すっごいなぁ~……」
夜空を見上げると無数の星が光り輝いておりアイラは見惚れてしまう。アイルもアイラと同じように星空を見上げて感嘆の声を漏らす。星空を見上げているだけで先程までの疲れなど忘れる双子はただジッと星空を眺めていた。
※
少しばかり長めの休憩をとった双子は再び歩き始めそこから四時間程経った。既に真夜中の時刻だが双子は漸くファゴット王国の城下町に到着した。しかし、二人とも非常に眠たそうな表情をしていた。
「やっと到着だね~。けど…もう眠いや……」
一日を歩く事に使ったので強烈な眠気に襲われていた。アイルは大きく口を開けアイラは右手で口を塞いで欠伸をして町の中へと足を運ぶ。山奥の村とは違い城下町は深夜帯でも町には活気に溢れ人々が行き来する。もっともその大半の年齢層は双子よりも年上ばかりで双子と同じ年代の子供は親と一緒に歩いていたりする。
「ふえ~…人が多いし大きい」
「村とは全然違うや」
城下町というものを初めて見た双子はその町の広さや人の多さに驚愕していた。山奥の村では見る事がない武器屋や防具屋の看板が掛けられていたり、兵士達が五人一組の隊を構成して町の見回りをしており双子は眠気と戦いながら挙動不審のように周囲を見渡していた。
双子は田舎者でそれは今の行動を見れば誰でも分かる事なので町に住む人々からは小さく笑われている。もっとも双子はそんな事を気にしている余裕はなく生まれて初めて見る城下町に圧倒されていた。
「今日はもう夜遅いから宿屋に泊ってから明日の朝色々と見て回ろうよ」
「賛成…もう眠いもん……」
流石に眠気には勝てなかったようで町の探索は明日に延ばし双子は宿屋へと足を進めた。
宿屋の看板はすぐに見付かったものの、城下町というだけあって宿屋の数は多くどの宿屋に宿泊するのか考えていた。値段や建物の大きさもそれぞれ違うのでどれが一番良いのか分からないのだ。
山奥の村に暮らしていた人達から貰ったお金があるのだが高級宿屋だと一気に減らしてしまうので即座に却下になったのだが一般的な宿屋に泊まろうとした。しかし、その一般的な宿屋の数が中々多いのだ。
「う~ん…どれが良いんだろ」
「これだけ…大きな町だから安い宿屋でも充分だと思う…よ……」
アイラよりもアイルの方が比較的体力に余裕があるのでどの宿屋にしようかと眠たそうに目を擦っているアイラに問うと眠たそうに安い宿屋でも充分ではないのかと案を出した。一応、宿屋の平均的な値段も知っているので双子は近くの極普通の宿屋の扉を開けた。
「夜遅くに旅の宿にようこそ。って…子供二人だけなのかい?」
宿屋のロビーで座っているふっくらとした体型のオバサンがマニュアル通りの挨拶をすると双子しか居ない事に少々驚き大人は居ないのかと双子に問いかける。
「うん、ボクとアイラの二人で旅をしてるんだよ。朝方からここまで来たんだよ、ねっアイラ! …アイラ?」
「すぴー…ふにゃっ!? お、起きてたよ? 私、起きてた…?」
「少し寝てたけど仕方ないよ。今日は沢山歩いたから疲れたもんね」
「ぅぅ~……」
子供二人だけなのかと女亭主から訊かれたアイルはにこやかに笑いながら頷き肯定した。そんなアイルに女亭主は素直な子供だと思いながら双子を見ていた。
アイルは眠たそうにはしているもののアイラ程ではなく意識もハッキリしており、眠っていたとアイルから指摘されるとアイラは恥ずかしそうに顔を紅潮させて下を向いた。
「それではベッドはシングルとダブルのどちらが良いですか?」
「えっとねー、シングルで良いよ。シングルでも充分二人で眠れるから」
子供がお客といえどもれっきとした仕事なので女亭主は言葉遣いを改めてベッドの大きさ即ち部屋をどうするのか双子に質問した。少し考えてアイルはシングルの方を選んだ。理由としてはシングルでも充分二人で眠れるのが理由である。
「アイラもそれで良い?」
「大丈夫、だよ」
「シングルお二人様で300Gですけど、子供二人だから半額にしてあげようかね」
「ほんとに? わー、ありがとー!」
「あの…ありがとうございます」
だが、子供相手だとついつい言葉遣いが崩れてしまう。しかも子供二人旅なので何か事情があるのだろうと女亭主が勘違いをしアイル達は通常価格の半分で宿に一泊する事が出来た。折角、半額になったのだから双子はありがたくその施しを受ける事にした。150G払うと女亭主から部屋の鍵を受け取り部屋へと向かっていた。宿屋は二階建てで双子が一泊する為に借りた部屋は二階の一番奥の部屋から三番目である。
「わぁ~、ふかふか! 気持ち良いや!」
部屋に入るとアイルは荷物や剣を置いてベッドへとダイビングした。材質が山奥の村とは違うのでその気持ち良さにアイルは若干興奮していた。アイラも荷物を置くと疲れていたのでベッドへと足を運びそのまま横になった。
二人とも慣れない旅をしたので普段ならば色々と喋るところだろうがそういう気配も無くそのまま寝入った。




