第4話
4話使ったにも関わらずまだ旅が始まらないって纏めるのが下手だな俺。
さて今回で老婆と老爺の名前が登場しますが物語上関係あるのかどうかを聞かれると疑わしいものですけどね。ちなみに双子の武器ですが、RPG風に言えば最初から最強武器を持っている状態で物語が始まります。もっとも持っているだけで武器の全ての力を使えるわけではないですけど今の所。
そして文章力を誰かください。
アイルが医者と神父を呼びに行って数十分の時が過ぎた。アイラは老爺から頼まれたタオルと洗面器を用意して老婆の手足を清拭していた。既に体は冷たくなっておりアイラは涙を堪えているが、それを流そうとはしなかった。大好きな老婆が亡くなっている事には気付いておりただ黙って拭いていた。老爺はアイラの頭を撫でながらせめて落ち着くようにしていた。
それから数分後にアイルが神父と医者を連れて帰宅した。手足には擦り傷が見えて上着や頬には泥が付着してずぶ濡れになっているアイルが風邪をひかないように老爺はすぐにバスタオルと新しい服を用意してきて上着を脱がして着替えさせる。
「アイル、こんなに汚れて。怪我もしてるじゃないか」
「そ、それよりもお婆ちゃんはどうなの!?」
怪我をしているアイルを心配するもアイルは老婆の事が気になって仕方が無かった。老爺から頭や腕を拭いてもらっている時も老婆の容態ばかりを心配していた。アイルが連れてきた来た医者は目や鼻、口、手首を見たり触れたりして診察していたが、医者の表情は浮かなくアイルとアイラは胸を押さえて医者を見上げている。そんな二人の視線に気づいた医者はつい目を逸らしてしまう。二人の目を見て真実を告げるのは非常に心苦しいものがあり、老爺を見据える事にした。
そしてゆっくりと閉じていた口を開き老婆の容態を老爺と双子に伝える。
「マーザさんはもう…亡くなっています」
老婆=マーザは既に息を引き取り他界した事を告げた。医者から聞かされると老爺は右手で目を覆って上を向き一滴の涙を流した。アイルとアイラは何も言わずにベッドで横になっているマーザへと両手を伸ばしてゆっくりと歩み寄る。
「う、嘘だよね…お婆ちゃん…寝てる…だけだよね?」
「おば…ぁちゃん」
何時の間にかアイルとアイラは涙を流しており視界が霞んでいた。ただ初めてアイルとアイラは悲しいという感情を抱いた。今まで喜怒楽は表現していたが哀が表現される事はなかった。いや、感情が欠けているわけではなく哀しいと思う事以上に嬉しいや楽しいという思いがずっと強く大きかったのだ。だからなのかアイルとアイラの二人は老婆の体を覆う布団に顔をうずめて泣きじゃくる。
誰も何も言えずに老婆の寝室には双子の泣き声が聞こえるだけだった。老爺は静かに双子の頭に手を置き一緒に居てあげる事しか出来なかった。哀しいのだから我慢せずに涙を流して良いと老爺は双子を抱き締める。
「アイル、アイラよく聞いておくんじゃ。母さんは二人に会う前から病に侵されていた、病を押さえる薬もないから短い命と言われていたんじゃ。じゃが二人に会ってマーザは実に幸せそうだった…二人が居たからあんなにも笑っていた。じゃから感謝しているんじゃ二人には」
「ボク達…何もしてないよっ……」
「何時も何時も迷惑ばっかりかけてたんだよっ」
マーザが最後の最後まで双子に出会えた事に感謝していたと老爺が伝えると双子は一層涙を流しながら首を横に振っいた。双子は自分達が齎した幸せに気付いていないのだ。何かをして生まれるのではなく一緒に居るそれだけでマーザにとっては幸せな事だった。それを老爺は双子に伝える。そして、それは自分も同じだと。
※
マーザが息を引き取ってから数刻の時が過ぎた。マーザの遺体は棺に入れられて葬式が行われていた。村人は正装に着替えておりアイルやアイラもその中にはいた。流石に泣き疲れたのかもう涙は流していないが二人には元気が見られない。
「グランさん、心からお悔やみの言葉を申し上げます」
「大丈夫ですじゃ。妻は元々体が弱かったんじゃ、それでも長く生きていけたのは誇るべきこと」
村人からお悔やみの言葉をもらう老爺=グラン。そして、村人にマーザは若い頃から病弱だったと伝えそれでも長年生きてこれた事は非常に誇れるものだとグランは村人に答える。思っていた以上に落ち着いており村人たちは少しばかり安心していた。しかし、双子に視線を映すと何時もの元気が見られずに声も掛けずらく、当たり障りのない言葉しか言えなかった。
特にアイルは元気の塊のような少年なので静かなのはやはり違和感を村人たちは皆同じ様に抱くが大好きな人が亡くなったのだから当然かと判断する。子供達はアイルとアイラの近くに歩み寄り話しかけていた。
「アイル、アイラ。あんまり気にすんなよアイルが落ち込んでたら俺まで落ち込んでしまう」
「そうだよ! 何時もの二人の方がマーザさんは喜ぶよ?」
「「………」」
学校の友達は二人が元気になるように励ましの言葉を贈るが双子は反応すら示さない。ただ黙ってマーザの遺体が眠る棺を見続けていた。マーザと言葉を交わす事や笑顔を見る事、ご飯を食べる事などがこれから絶対に出来ないのだと改めて実感すると胸を締め付けられるような思いで、双子は胸を再び押さえる。
「ボクさお婆ちゃんと一緒に居れた事凄く嬉しかったんだ」
「うん、私もお婆ちゃんが大好きだよ」
「だから最後は笑って見送ろうよ。お婆ちゃんが心配しないように」
「うん、涙は見せないよ」
何時までも悲しんでいると亡くなったマーザが心配し続けるからとアイルは泣くのはもう止めようとアイラに言うとアイラも涙はもう見せないと答える。すると二人は小さく息を吸って感謝の言葉を口にした。
「「お婆ちゃん、ありがとう大好きだよ!!」」
最後に笑ってお礼を述べて大好きだと言葉にした。
それを聞いていた村人たちはこの双子は強いなと感じていた。元々、双子は特にアイルは立ち直りが早く超ポジティブな奴である。
その後、マーザの葬儀は滞りなく進められて村の外れにある小さな墓地に土葬された。その際もアイルとアイラは涙を見せずに最後までマーザを見送り葬儀は終わった。その後、村人たちは解散しグランと双子も家へと戻って行った。
※
葬儀が終了すると双子は疲れたのか寝台に横になると眠気に襲われて寝入った。今日は双子だけでなくグランも一緒の部屋で寝ているのだが双子が眠ったのを確認して地下の武器庫へと足を運んでいた。こんな時でも黄金色の輝きは失われる事はなく部屋を照らしている。この輝きはここ最近見られるようになったもので何故、こんなにも輝いているのかグランには理解出来なかった。
だが午後のアイルの言葉から本当に剣と弓が双子を何処かへ導いているのではないかと考えてしまう。そんな事を考えていると剣と弓の輝きが一層強くなりグランは目を開いてる事も出来ずに目を瞑った。そして、数秒後に光も消えて目を開くとグランはその場で絶句した。
「な、なんじゃこれは一体!?」
地下に居た筈のグランは全く異なる地で立っていた。空は黒く染まっており雷雨が起きて大地は戦争の痕の様に荒れ果てている。そんな未知の場所に居る事がグランには不思議で仕方なく首を傾げる事しか出来ずにいたが人が一人も居ないわけではなかった。しかし、グランは体が硬直して動けずにいた。
(あの黒い物体は一体なんじゃ、それにこの傷だらけの男性は……?)
どす黒いオーラを纏っているせいかグランからその存在の姿を確認する事は不可能だった。だがその存在を睨みつける傷だらけの男性。アイルとアイラと同じ金色の髪でアイルと同じ様に後ろ髪が跳ねているが服は裂かれていたり破けていたりして服としての機能を果たせていない。しかし、背からは空色に輝く美しいオーラが両翼のようにもグランには見えた。何故、このような場所に居るのかと疑問を抱く半面気になる点もいくつかあった。
それは青年が手にしている剣である。形は少々違っているが地下に保管している剣と似ているのだ。
(ではこの男性は…アイルとアイラの親族? それとも成長したアイルなのじゃろうか?)
顔は確認する事が出来ないのでグランは双子の親族なのか、それともアイルが立派に成長した姿なのかと推測している再び辺り一面が輝きだしてグランを覆った。目を開けると元の地下武器庫に戻っていたが一つだけ変化が見られた。それは、今まで黄金の輝きを放っていたが消えておりランプを用意していなければ暗く見えなかっただろう。
「……今のなんだったんじゃ」
まるで夢の中にいたような浮遊感ではあったが記憶には残っているので現実なのだとグランは思う。同時に確信もした。
(アイルとアイラを旅に出させよう。今のはお告げなんじゃろうな……)
このまま村で生活し続けるよりも広い外の世界へと飛びだした方が余程、双子にとって刺激的なものになるのではないかとグランは独断で思案していた。確かに双子と暮らせる事は幸せだろうが外の世界を見て大きく育ってほしい親心というのもある。
双子を旅立たせようとする思いだけが募ってはそれを切り出せないグラン。理由はグランがまだ双子と暮らしていたいという気持ちが大きいからだ。少なくともアイルは外の世界に旅立つ事に躊躇いはないだろうし寧ろ喜びそうな性格だ。
「明日ぐらいに聞いてみようかの」
グランの中でどれだけ考えても双子にその気がなければ無理強いをする必要はない。その為、一度だけ確認という意味も込めて確認しようと決めるグラン。
双子は眠っていると不思議な夢を見た。星空の上に浮いており水色の髪を長く伸ばした美しい女性が慈愛に満ちた表情で双子を見下ろしている。一体何故自分達がここに居るのか理解出来ないままだが目の前の女性はそんな双子などお構いなしに言葉を発した。
――アイル、アイラ。私の声が聞こえますか? 貴方達は大いなる運命の下に生まれてきた者。そして、貴方達は生まれてきた意味を知らなければなりません。アイル、アイラ…旅立ちの時が来たのです。
初めて聞く声だがその慈愛に溢れた声色に懐かしいとさえ感じる双子。双子は夢を共有しているらしくどちらも同じ星空の上に浮いて女性の宣託を黙って聞いていた。それは自分達の出生を知る必要があり、それは大いなる運命にも繋がっていると。そして、旅立ちの時が来たと。それを最後に女性の体は粒子と化して天へと舞い昇って消えた。
そして双子はそのまま目を覚ました。既に夜も更けており昨日の雨が嘘のように晴れていた。今日はアイルもアイラと同じ時間に起きていたが頭を捻っていた。
「う~ん! 夢の中の人は一体誰だったんだろう?」
「私も見たよ! 知らない人だったけど懐かしかったんだ……」
「うわっ!? ビックリしたよ~」
寝台の上であぐらをかいて覚醒以前に見ていた夢の中で出会った女性の事を考えていたアイル。するとアイラもその夢を見たと言いながらアイルに詰め寄った。突然、アイラに詰め寄られたアイルは驚いて仰向けに倒れ込んでしまいアイラは四つん這いの体勢でアイルを押し倒した様な形になっていた。
「あ、ごめんね…アイル」
「だいじょーぶだよ。それよりもあの人は誰だったんだろうね、それにボク達の運命ってなんだろ?」
「分かんないけど…きっと私達に関わる人だと思うんだ」
「そうだよね。あ、それよりも退いてくれると助かるんだけど」
夢の中に登場した美しくも儚いイメージを持つ事が出来る女性が口にした大いなる運命という言葉にアイルは興味を抱いており、アイラは自分達に非常に深く関わる事かもしれないと自分の考えを述べた。アイルはそうかもしれないと納得しつつ、押し倒された体勢のままなのでアイラに離れてほしいと言うと双子の部屋のドアが開いた。
「……何をしておるんじゃ二人とも」
「「へっ?」」
決してやましい事をしていたわけではないがアイルとアイラの体勢が体勢なので少し危険な匂いがしており、それをグランに見られ双子は呆気にとられて自分達の体勢がそんなに悪い事なのかと首を傾げていた。