表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双天のステルラ  作者: なまけもの
世界への旅立ち
37/49

第37話

更新するのに長くなってしまった!!

 潮の香りが漂う城下町を海水が被っていた。空中で大爆発が生じて大津波によって襲われたもので住宅地が酷く荒れていた。

 住民達は津波の被害に遭わないように退避していた。それでも全ての住民が退避はしておらず仕事をしている者達も少なくはない。街路にまで水浸しになっており打ち上げられた商品や樽、木箱が流されている。


「酷い、こんなところまで影響が……」


 怪我人も多く治療を施している者達も見かけるエレスティス。この港町についてはアイラの戦いの影響が大きく出ているが、エレスティス達はその事を知らない。


「今は急ぎましょうエレスティス様。この港町はコルネット王国所有の船がありますので」

「勝手に使って良いの? コルネット王国の貿易船であって私有物じゃないのよ?」

「そんなことを言っておられる場合ですか? 貴方はこの大陸から逃げて力をつけて仲間を作らねば勝てない相手。このまま放っておけば世界は支配されてしまうのですよ?」

「そんなのって……」


 あるわけがない。世界の支配などお伽噺の一つでしかなく、とても実現出来るものではない。そう否定するつもりだった。しかし、エレスティスはそれを否定は出来ずに言葉を詰まらせる。

 王家の渓谷で感じた激しい大陸の震動と爆発を見た今、世界の支配は決して夢物語ではなくなってしまった。フレインの目的が何かは見当つかなくとも世界を揺るがす事は決まっている。そんな時に国が決めた規則など守っていられない。

 規則を破ることに罪悪感があるエレスティスは使う事を躊躇う。一船を使えばエレスティス以外にも助かる人物だって少なくはない。そして、戻ると約束した双子がまだ到着していない事にも大陸を出ることに躊躇してしまう。


「まだ、アイルとアイラが来てない……」

「――確かに戻ってきていませんね。ガイル様とセルシル様も戻られていないですし」


 一時間以上は経過しているが双子が来る様子がない。それどころか、ガイルとセルシルの姿も見当たらない。アイルが遅くなるのは分からなくもないが、ガイルとセルシルはコルネット王国に仕えているので港町の場所は覚えている筈である。

 そんな事を考えながら待っているとガイルとセルシルが遅れてやって来た。しかし、そこには双子の姿が見当たらずにエレスティスは顔を顰めた。そして、適度に距離が縮まってからエレスティスはガイルに双子の行方を問う。


「アイルとアイラはどこなの……?」

「うっ! アイラちゃんは――」


 アイルの元へ走って行ったなんて言えないガイルは言葉を詰まらせ目を泳がせる。

 余計にそれはエレスティスに不審感を与える事となりジト目でガイルから視線を外さない。だが、何れは答えなければならない。今、答えなければ先送りになるだけなのでセルシルは口を開きエレスティスに伝える。


「アイラちゃんは、アイル君の元に走ってしまいました――」

「そ、それで二人は!?」

「最初はそのまま二人を置いて港町に向かう予定でした。それでも二人が心配なので岩山まで戻った時には二人の姿は見当たらず、荒れた跡しか……」


 体が震えながらセルシルの両腕を掴みその続きを訊くと、双子の姿が見当たらない事を告げてそこで言葉は途切れる。強めの力でセルシルの腕を掴んでいたエレスティスはその腕を離し、呆然と立ち尽くしてしまう。

 父親と祖国を失い、唯一の友達まで失ったエレスティスの心にさらに酷い罅が走る。

 

「は、ははっ……私は……」


 急に笑い出したエレスティス。塞ぎ込んでも可笑しくない事が続けて自分の周りで起きれば人は笑うしか出来ない。小さく笑うエレスティスの顔は下を向いて見えないが、雫が落ちている事だけはアスペルやガイル達にも見えて泣いている事が分かった。

 慰めになるのかそれはガイルにも分からない事だが一つの可能性だけを提唱する。


「確かに姿は見当たりませんでしたが、同時に生きていると逆に考える事が出来ます。そもそもあの双子が簡単に死ぬとは到底思えませんし」


 ガイルとセルシルが見た光景は酷く荒らされた岩山と積み上げられた瓦礫、陥没した大地。どれもが人間では到底起こせそうにない程になっており、生きているのか疑いたくもあった。大地には赤い鮮血が染み付いているが双子の姿など見当たらなかった。あるのは引き裂かれた腕だが、それは子供の腕にしては長く筋肉がしっかりとついていて別の人物それも大人である可能性が高い。

 その事を呆然としているエレスティスに説明するガイル。果たしてエレスティスの耳に届いているのか疑わしいが、少しでも届いてくればという思いだった。


(生きている、かもしれない。それでも一つの可能性に過ぎないし……)


 ガイルの声はエレスティスにも届いていたがプラスの方に繋がる可能性はどうしても結びつける事が出来ないでいた。

 天災のようにセレナーデ大陸を震撼させ地形を大きく歪ませた爆発。遠目から見ていてもその凄絶な威力は痛感出来るもので、エレスティスはどうしても生きている可能性を選べないでいた。


「エレスティス様は何を信じますか?」


 難しい表情になっているエレスティスを見てガイルは一体何を信じるのかを優しい口調で問う。

 そして、それを問われたエレスティス本人は呆気にとられた様子で口を少しばかりあけている。双子に出会うまで他人と距離を置いて生活してきた。無論、ガイルとセルシル、アスペルの事を信じられるかと言うとそれほどの関係でもない。ただの主と従者の関係にすぎない。

 そう、今まではそうだった。以前のエレスティスならば鼻で笑い終わらせている。だが、双子の出会ってから少しずつ周りが変わり始めた。


「俺達の言葉は信じなくとも、双子が生きている事は信じられる筈です」

「けど、どうやって信じれば良いの!?」


 人を信じる方法を忘れてしまったエレスティスはどうすればと声を荒げる。

 それに答えるのはセルシル。


「信じる事に方法などないのですよ。ただ、願う祈る――それしか方法はないのです」

「な、何よそれ。い、意味が分かんない!」


 誰かを信用するというのはとても難しくリスクを背負う業。

 人は簡単に裏切るし利益を得る為に貶める。それを姫君という立場から多く見てきたエレスティスはやはり信じようと足を踏み出せずにいた。

 願う、祈るという目に見えない不確定なものをどうやって(すが)れば良いのかとつい、眉を(ひそ)めてセルシル達を睨みつける。

 するとアスペルが一歩前に出てエレスティスの頬を強めに抓る。


「い、いたっ! 急に何をするのよ!」

「エレスティス様は人を信じた事があるでしょう、それも最近のことですよ」

「わ、私が他人を信じた事がある? い、何時なのよそれは!」


 抓っているアスペルの手を退けるように右腕を払うエレスティスだが、払われた事など気にせず小さな溜め息を吐きながらアスペルは呆れたように口を開く。

 ごく最近、エレスティスは人を信じた事があると。それを聞いたエレスティスは目を丸くしてアスペルを見る。


「王者の儀式に参加する為に双子が勝たねば一緒に参加する事が出来なかった。その時はまだ双子の実力を知らずに落ちるかもしれないと疑ってたように見えましたよ私には。ですが、エレスティス様は双子が受かる事を信じた。違いますか?」

「――あ」


 無意識に双子の勝利を信じていたことを改めて指摘されて漸くその事を自覚するエレスティスは、ハッとする。間違いなく、その時に双子の勝利を信じていた。そして、それを双子もまるで当然かのように受け止めた。ガイルとセルシルはその場に居なかったので分からないが、アスペルはあの時に居て見ていたので分かるのだ。


「それならば双子が生きていることを信じる事も出来るでしょうエレスティス様?」

「そ、そうよね。なんで、諦めようとしてたのかな私――」


 失ったものばかりを見てそのまま絶望していき、双子の生死が断定されていないのに勝手に死亡したと断定している自分につい呆れ返ってしまうエレスティス。精気が戻ってきたエレスティスを見てアスペル達3名は一安心したように見える。


(それでも俺達はエレスティス様を酷使させている――せめて双子が居てくれればどれだけ助かるのだが。すみません、エレスティス様)


 セレナーデ大陸の歴史上にも稀な大事件がなければエレスティスはコルネット王家の姫君の末っ子としての生活が未来には待っていた。だが、この件を(さかい)にエレスティスの人生を大きな変化を見せ、その先の未来を少しばかり予測出来てしまうガイルは負い目を感じていた。

 前国王が死亡した今、コルネット王国の姫君としてエレスティスの双肩(そうけん)には人々の期待が込められてしまう。だが、今のエレスティスにはその自覚が足りない。それどころかそんな重荷は背負いたくない筈だ。

 王者の儀式で周囲から認められればエレスティスはコルネット王国始まって以来初の女王にもなれる。しかし、その女王にエレスティスは成りたくないと(かたく)なになって受けるのを拒んできた。今回も周りに認めてもらう為だけに参加したに過ぎない。そんな彼女が王国――それどころか世界の命運も握っているというのはあまりにも重責で。主君として立ち上がってもらっているのもコルネット王国の姫君エレスティス・コルネットとしてだ。

 そう負い目を感じる度にガイルは双子が居れば精神的な温和が見られるので居てほしいと切に願ってしまう。


「行くわ。私はアイルとアイラを探しに行く」

「そ、そうですか――それならば善は急げですね」


((本当は姫として自覚をして頂きたかった))


 思い悩んでいたエレスティスはとうとう大陸を出る事を決断する。そして、その目的は双子の探索。

 その言葉の中にはそれ以上もそれ以下も含まれない。あくまでも双子の友人エレスティスとして探しに行く。それはガイル達が望んでいない感情だが、一先ず大陸外に行くというエレスティスにホッと溜め息を零す。常に同じ場所に居ては再び狙われる可能性も多い、それならばセレナーデ大陸の外に行けばその率はグッと低くなる。

 出来るならば姫という立場で世界に旅立ち、強くなりこの地に戻ってきてもらいたかったという思いがガイルとセルシルの胸中(きょうちゅう)にあった。

 大陸の外に旅立つとエレスティスが決めると事は簡単に進んだ。王国が滅んでも王家は滅んでおらず寧ろ特異点のエレスティスが世界に旅立つという話を船乗り達に説明すると快く船を出してくれる事となった。準備も既に終わっているのでエレスティスは船にのりまだ少しばかり荒れている大海を見つめ、桟橋ではガイルとスペルが今後の事を話していた。


「アスペル、エレスティス様の事を頼んでも良いか? 俺達は生存者を集めてファゴット王国に向かうつもりだ。今回の事はファゴット王国も恐らく感知しているだろうしな」

「勿論です。敵の情報が分からない以上、今回の件に関しては世界をも揺るがす事態にもなりうるでしょうし」

「出来る事なら王都アナスタシアの力も借りたい所だ。そこはアスペル達に任せようと思う」

「分かりました。こちらも道中で今件について説明し仲間を集めたいと思います」

「ああ、それなら安心だ。それじゃ、頼むぞアスペル!」

「ええ、ガイル様とセルシル様もご無事で」


 コルネット王国が滅んだ今、残されたのはコルネット国領に点在する町や村。バラバラに点在するよりもファゴット王国に事の説明を行い力を借りるとアスペルに話していた。

 一国の話だけでは済まされなくなった今、沢山の仲間が必要になると判断したガイルとセルシル。その考えにアスペルは賛同し己も旅の途中で仲間を集めると言う。

 そして、それを期にガイル達は敬礼すると港町を後にする。二人が去っていく姿を見届けるとアスペルも船に乗り込む。

 此処からがエレスティスの新たな始まり――



 穏やかな風が瓦礫と死体の山と化した王国を通り抜けていく。

 瓦礫の上にはフレインが纏っていた黒いローブを纏う男が座り込んでいた。その男を中心に大小様々な同じ黒いローブを纏った四名の男女が立つ。

 すると黒いローブを纏う者達の前方空間が歪み満身創痍に近いフレインとディオールが姿を見せた。その姿を見ると濃艶なスタイルをした女性がフレインの姿を見て妖艶な笑みを浮かべた。


「あらあ、ボロボロじゃな~いフレイン」

「ちっ、これは油断していただけだ。一々、絡んでくるんじゃねえよテミス」

「うふふ、ホントに子供なんだからフレインは。お姉さんが暖かく抱擁してあげようって言ってるのに」

「ババアが笑わせんな」

「ババアですって!? そんな事を抜かすクソガキには調教が必要かしら、ァアッ!?」


「相変わらず二人は会えば喧嘩するのお」

「まっ、僕からすれば面白いから良いけどさ!」


 売り言葉に買い言葉。再会したというのに口喧嘩を始めたフレインとテミスと呼ばれた女性。

 ババアという単語に憤慨し言葉遣いが一転して荒くなる。そんな二人のやり取りにディオールは見て見ぬフリに徹し、他の者達は笑いながらそれを見届けていた。

 だが、ただならぬ雰囲気が急に周囲を支配していきテミスとフレインはそれを感じると急に黙り込み、瓦礫の上に座り込む男を見上げる。何も語らないが男からは畏怖するしかなかった。


「良く戻ってきたフレインそして――ディオール」


 口を開くと低い声が周囲に渡り嫌でも背筋を伸ばしてしまう。

 そして、その男から感じる強大な力にディオールはつい顔を顰めてしまう。


(な、なんだコイツが陛下なのか!? コイツから感じる力はまるであの糞餓鬼よりも上!?)


 その強大さは片翼の姿となったアイラをも上回るものでディオールは信じられずにいた。

 天壌なる星々を統率し世界を変えようとする組織のトップ。その力は既に超然たる域に達しており、種族や才能など嘲笑える力――そう感じてしまうディオール。

 だが、一番に口を開いたのはフレインだった。自分すら知らない現象が起きた事を躊躇いもなく陛下に問う。


「陛下。貴方の言う通りに俺は混沌の聖櫃をディオールに与えましたが、どういう事ですか? 魔物を創造したり、生命体の体系を無理矢理変えていた。いや、そもそも混沌の聖櫃とは一体なんですか?」

「混沌の聖櫃――それは神の力を具象化したチカラ。故に人智を超越した効果を発揮し恩恵を与えるものだ」


 混沌の聖櫃はモノではなくチカラだと答える陛下。チカラ故にその発揮する効果は神すらも恐れぬ事を発揮するのだと言う。

 そして――もう一つ混沌の聖櫃ではなく片翼の少女アイラについてを陛下に訊ねた。


「では――あの少女は一体何者ですか? まるでこちらの事を全て知っているかのような素振りと強大な力は」

「白い世界に変わった事か。あの少女ばかりは我も全て答えられんが、本気で戦っていなかっただろう。恐らく本気を出していれば世界は一撃目で終焉を迎えていた。我々と計画も全て纏めてな」


 陛下の言葉にフレインは愚か天壌なる星々の面々が驚愕の色を隠せないでいた。

 白い世界と変化した事は陛下含め全ての者達が知る事となった事柄。だが、その力もまだ本気ではなく手加減だったのではないかと語る陛下に一人の少年が食ってかかる。


「そんなわけないよ陛下!! いくら強くたって僕ら特異点――星の使徒に勝てるわけがない!」


 いくらなんでも巫山戯た出鱈目な妄言だと陛下に異論を唱える少年。そう、それはここに居る面々が皆思うこと。

 星の使徒。それは超人的な身体能力と異能力を併せ持つ特異点の中でも別格の者達の別称。彼らは星と共に生きて滅ぶ者達とも呼ばれている。だからこそ、ポッと出てきた少女如きに負けるなど認められなかった。


「お前達は確かに強い。それは事実だが、星をも超越せし者がいる。そう数千年前に姿を現した“存在しないモノ”が最たる例だ」

「でもさぁ、それって空想上の化け物なんでしょ? そんな偶像なのは強くて当たり前じゃん。数千年前に生きていたティターニアやエルトリア、エトワールも星の使徒なのにそれより強い奴なんていないと思うんだけどなあ」


 『存在しないモノ』、数千年前に現れたとする謎の存在。それは人なのかはたまた悪魔なのかと疑われていた。故にエルトリアやエトワール以上に空想上の存在と認識されている。それは星の使徒達から見ても同じで、存在しないのだから強くて当たり前の化け物とか見ていなかった。

 だが、エルトリアとエトワールは実在する人物だったと少年は語る。


「そうよねえ、陛下を除いて私達以上に強い存在は信じられないわねえ。けど、実在しちゃってるわけだし警戒した方が良いと思うけどさアタシ的には!」

「そうじゃな。わしらの邪魔をするかもしれんしの」

「まぁ、そりゃテミスの言う通りかもしれないけどさ」


 テミスと老人は陛下の言葉を聞き警戒はするべきだと納得の意を見せていた。そんな二人を見て少年はいまだ不満が残っているが同じように納得をしようとしていた。

 そんな三名とは逆に今まで寡黙を貫いた大柄な男性が陛下に対して口を開く。


「それよりも陛下。そろそろ次の計画に入った方が宜しいかと」

「そうだな。先ずはこの地とコルネットの地に我らの新たな帝国を創らねばならん、我らの計画は始まったばかり、くれぐれも失敗はせぬようにな」


 次の計画に入る事を陛下に勧めてくる大柄の男性に陛下は小さく頷くと重い腰を上げるように立つ。

 そして、天壌なる星々に今後の目的を表明すると陛下は瓦礫の上から軽やかに飛び降り、瓦礫と化した王都アナスタシアを後にする。


「そう言えば何で陛下はコルネット王国を滅ぼして国を作る気なんだろ。別にこの国だけでも良かったんじゃ?」

「そんなの陛下の気分でしょ。陛下ってたまに何を考えているのか分からない時があるしー」


 陛下の言葉を聞いた少年はふとコルネット王国を滅ぼしてそこにまで国を作る事に疑問を感じていた。

 理由は誰にも告げない。だからこそテミスは陛下の事はあまり分からないと肩を(すく)める。誰にも本音を打ち明けようとしない、それどころか経歴が一切謎のまま。



 澄んだ空が広がる空間に人間四人分ぐらいの黒い穴が広がり、その穴から満身創痍の少年と長い白髪の少女が砂浜へと落ちていく。その速度はゆっくりで二人とも眠っているのか意識がないのか、慌てた様子もなく重力に従っている。

 少年少女が落ちた場所はゴシック建築の教会が建てられた場所で、紺色の修道服を着込んだ女性達が神に祈りを捧げていた。早朝の祈りを終えた修道女の内の一人が外に出てくる。


「なっ!? 皆、大変よ子供が倒れてるわ!」


 一人の修道女は目の前に広がる光景に一瞬絶句してしまう。それもそうだ、二人の子供が倒れているが一人の少年の方が今にも死に絶えそうな程に傷を負っているのだから。

 他の修道女に大声で声を掛けるとすぐに駆け寄り、先ずは生死の確認をし始めた。

 そして、数名の修道女達が教堂から出てくると二人の子供を教堂内に運ぶ。

 この教会は旅人の宿泊施設も兼用しているので町に建てられている教会に比べるとやや大きく広い。ベッドに子供達を眠らせると修道女達は出来る限りの治療を少年に施そうとしていた。それでも恐らくは助からないだろう、それ程の傷を負っているのだから。


「うんっ……こ、ここは……」

「貴方は無事なのね、良かった」


 一人の修道女が少年の体に触れようとすると隣で寝かせていた白髪の少女がゆっくりと瞼を開いた。

 少年に比べると少女は全くの無傷で単純に意識を失っていただけ。それでも目覚めた事に修道女達は安心の笑みを浮かべる。しかし、少女はそんな事すら気にもとめないで血だらけの少年へと顔を向けると、表情が暗くなる。そして、ベッドから起き上がると少年に近づいて触れようと手を伸ばす。


「あ、あ、アイル――早く元気になって。いつものように私に笑ってよぉっ……」


 今にも泣きそうな表情で少女――否、アイラはアイルの血が染みた頬を優しく触れる。

 ポロポロとその大きな瞳から零れる雫は顔色が悪いアイルの頬に落ちて、するとアイルの体は愛白い光が発生してアイラや修道女達は驚き、その(まぶし)さに目を(くら)ませる。数秒程の淡い光がアイルの躰を包むとその輝きは消えた。

 しかし、顔色が悪く呼吸が荒かったアイルはどこにもおらず、穏やかな顔色で眠り呼吸も一定のリズムで行われていた。それでも傷が癒えたわけではないし手術をしなければならない程の重傷者。

 数名の修道女がアイルの治療の為に残り、他の修道女達は目覚めたアイラを落ち着かせる為に一緒に部屋から出て行った。本当は気分を紛らわせる為に砂浜など歩くつもりだったが、頑なにそれを拒みアイルが眠る一室の前の廊下に設置されている椅子に座り込み、ただ待っていた。


 時間移動した双子が行き着いた先は果たして――!?

一先ず、この話をもって世界への旅立ち編は終了とさせていただきます。

ここまで来るのに何ヶ月使ってんのかな。これもそれもゲームに熱中しすぎて執筆しようとしなかった私の責任ですね。


それでは!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ