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双天のステルラ  作者: なまけもの
世界への旅立ち
33/49

第33話

書いていて久々に思いました。

凄いグダグダになってきているなぁ~と。ヤバい、これはヤバい。もうちょっとマシな文才を持っていないのかと常に自問している作者です。

後、2から3話ぐらい一章が終わる筈です。

ちなみにアイルの速度ですが普通に現代の速度に加算すれば音速を若干超えてます。これはまあ、地味に狙っているのですがまだ速くなります。

誰か文才を私に下さい。

切に、真に願っています。小説を読むしかないな。

 コルネット国王とディオール第一王子による激戦で荒れ果て人々は城下町から離れた平原で粉塵爆発の光景を目にしていた。連続で激しい爆発音をたてて祖国が破壊されていく様に顔を青褪める者も決して少なくない。国民を誘導していたガイルとセルシルはコルネット国王の身の心配をする。


「国王は大丈夫だろうか――やはり俺たちも手助けにいかなければ!!」


 城下町を離れ近くの村や町に避難させに専念していたガイル達、王国兵士ら。

 しかし、城下町内で起こる激しい爆発の連続に不安が過ぎるばかり。王子や王女達もしっかりと守っているがコルネット国王の指示により他の国民と同じ扱いになっている。こういう危機的状況の中で生まれや立場は意味を持たない。もしも、コルネット国王が絶対王政の政治をしていれば王子や王女達は国民を見捨て自分達だけで逃げていた可能性もある。

 国王に反発する事も少なくはない王子や王女達は崩れゆく城下町をただ黙って見ていると、王子の内の一人が長男のディオールの姿が見えない事から心配をしていた。


「ディオールは無事なのだろうか?」

「姿が見当たらないからな……」


 他の王子王女からも一目置かれるディオール。だが、誰もディオールがこの事件の主犯だという事は知らない。

 エレスティスと違い知識を蓄え修練も欠かさずに行ってきたディオールの実力など皆、正当な評価をしている。だが、特異という理由だけで父親に甘やかされてきたエレスティスに対しては冷たい。


「エレスティス王女は王者の儀式を受けておられる最中なんだよな。ご無事だと良いのだが……」

「それに私が困っている時に助けてくれた子も一緒に行ってるみたいだし。ああ、もう!! こんな時に星天のエルトリアみたいな英雄が現れてくれれば良いのに!」


 祖国が終わるかどうかの別れ目の中で以前に強盗犯から助けた女性とその婚約者が馬に乗って町へと向かっていた。全ての国民が同じ町や村に逃亡する事はなく数千人単位で行動していた。無論、先導するのはコルネット王国の騎士団である。

 本来ならば騎士団も王と共に戦う筈なのだがコルネット国王は騎士団に国民が無事に逃亡出来るようにと命令を下していた。小さな子供達は親に抱きついて恐怖に怯えていた。



 煙のように空へと立ち上る黒いエネルギー。それを発するのはコルネット王国の第一王子ディオールだが先ほどまであった瞳に輝きはなく虚ろな目をしてコルネット国王を見据えていた。しかし、目色だけがディオールの変化ではなかった。

 コルネット国王の眼には黒い魔獣の腕のように逞しく変化しており対峙している今この瞬間に集中力を一気に削がれていくような感覚に襲われていた。


「ハアッハアッ! 最悪の状況になってしまった――!」


 息を整えようとするもディオールから発される威圧感に当てられ余計に呼吸が荒くなっていたコルネット国王は立たされている状況に息を飲もうとしていた。しかし、そんな時間はなく刹那の速度で黒い掌が眼前に迫っており紙一重に避けようと体ごと右に動こうとするも勢いが強くその勢いで地面を転がってしまう。


「ぐわっ!? 反応するだけで精一杯とは……!」


 回避出来たのは運が良かったとそう感想を抱いているコルネット国王はふらつきながら立ち上がる。

 もはや、反応できた事にコルネット国王が驚いているぐらいで攻撃を放たれる直前よりも一層緊張感に襲われていたコルネット国王。だが、そんなコルネット国王など見向きもせずにディオールは自らの変化した腕を黙って確認していた。そして、その変化した腕を横に払うという動作を一度だけ行うと腕を払った衝撃で積もった瓦礫や破壊された民家が粉微塵のように細く砕けて吹き飛んだ。


「なっ、本物の化物かコイツは!?」


 姿はディオールだがコルネット国王にはそれがディオールとは到底思えずにいた。まるで別の何かがとり憑いたようにしか考えられないと。

 それはフレインもコルネット国王と同じらしく驚愕を隠しきれずにいた。


(陛下はこんな化け物を作る気でこの国を選んだのか!? そもそも何故、俺にエレスティスを殺さないように言ったんだ……今は力はないだろうが何れは危険な存在になると言っておきながら)


 いやそれ以上にこれを渡した陛下の思惑が分からず困惑としていた。

 フレインは今回の事件を担当を任された時も陛下と呼ばれる者からは指示と混沌の聖櫃を与えられそれをただ遂行しているだけ。それは、別行動をとっている他の仲間達もまた同じである。

 この事件の最終目的はコルネット王国の壊滅。そして、エレスティスは別に見逃しても良いという命が下っている。だからこそフレインは混沌の聖櫃を使用し一体の魔物を凶悪化させて放っておいた。


「これで終わりだ……!!」


 コルネット国王に止めを刺そうと魔獣の腕とかした右腕を天へと翳すと風がディオールの右手に渦を巻きながら集まる。いや、集まっているのは風ではなく黒いエネルギーが集束し凝縮を始めていた。

 凝縮されていくエネルギーは余りに大きいのか黒い放電現象を起こす。さらにエネルギーは反発し合ったり引き合ったりし、そのエネルギー運動によって全方位に突風が巻き起こる。その度に城下町の建築物は音を立てて崩されていく。


「こ、このままではこの国どころか周囲の平原まで巻き込んでしまう!!」


 眼前の光景を前に呆然と立ち尽くしていたコルネット国王はこのコルネット城と城下町を一撃で破壊し尽くすだけのエネルギーを前に何とか抵抗しようと自らの全身に紅蓮の炎を溜め続ける。

 紅蓮の炎を体がギリギリ耐えれるその限界まで溜め続けているとコルネット国王の黒い髪や黒い瞳はエレスティスと同じように髪や瞳が真紅に染まっていく。


(私もディオールと同じ後天的特異点。エレスティスのように先天的でない以上は完全に炎は制御出来ない……だが、エレスティスや他の国民の為にもこの攻撃だけは何とか防いでみせる!!)


 エレスティスが真紅の髪と瞳をしているのは先天的な特異点のため。

 そして、ディオールと同じ後天的な特異点のコルネット国王は今の能力を充分に発揮する事は出来ずに使い過ぎれば身を滅ぼす危険性に繋がる。しかし、眼前には凄まじいエネルギーを放とうとするディオールが映る。それを見て回避するという選択肢は消え、なんとか相殺までとはいかないが城下町を越えて平原を巻き込まないようにと決心していた。

 このまま何も抵抗しなければ平原に逃亡させた国民の大半数が命を失う事になる。そうなってしまっては、コルネット国王が国民や兵士を全て退避させ一人残った意味がない。そう考えたのは魔物が侵攻して来た時からだった。何故、騎士団や兵士を使い応戦しなかったのか。それもコルネット国王の頭の中にはあった筈である。


(そう、私は何故かこうしてしまった。結果的にコルネット城下町と城は消えてしまうが――これを防ぎきれば復興もいづれは出来るだろう)


 結果的に騎士団や兵士、国民を総員退避させて正解だったと感じるコルネット国王。今のディオールを相手に大人数で挑んだところで間違いなく勝ち目はなく、ただ大量の死体の山を作り上げる最悪の形になっていた。

 ならば生き残った者達が時間を掛けて必死に力を身につけディオールを打倒し、何時の日か必ずフレインが所属する組織を壊滅してくれる筈だと吹き荒れるエネルギーを前にしながら望んだ未来を思うコルネット国王。そして、その中に中心となるであろう娘エレスティスを思い出す。


(ああ、あの子達に出会ってくれたお陰でエレスティスのしこりが消えた。何せあの子はエトワールの――なのだから)


 今は亡き妻との間に誕生した娘のエレスティスを中心に沢山の人々が集まる光景を思い描きながら、アイルとアイラが娘の前に現れた事を心の中で歓喜していた。


「コルネット王国はこれで壊滅だ!!」

「そう簡単に私がさせるとでも思うたか!?」


 一国を物理的に破壊する事は可能な程度の威力を秘めた直径10mの黒いエネルギーの光球を完成させるとディオールはそれをコルネット国王の立つ場所へと放った。刹那、コルネット国王も全身から溜め続けた紅蓮の炎を巨大な絶壁のような炎の壁を城下町へと形成させた。約3秒程、黒いエネルギーの光球がぶつかり止めるも巨大な炎の壁などまるで何も無かったかのように撃ち破りコルネット国王へと接近し衝突した。

 最早、コルネット国王の力ではどうする事も出来ないエネルギーでそんな力を正面から受けてしまえば体は耐えきる事は出来ずに瞬く間に体は塵になり、衝突したエネルギーが爆ぜた事により塵一つ残らない。

 大爆発を起こした黒いエネルギーは瞬く間にコルネット城や城下町を包み込み平原の一部すらも呑み込まれ、大陸を激しく揺るがす。空に浮いていた純白の雲は爆発の衝撃でかき消され、突風と地震は王家の渓谷にも当然、伝わってしまう。

 国一つ消し飛ばす程の威力によって大地は深く大きく抉れ、逃亡していた国民もまた同じく巻き込まれてしまう。最早、大魔法の域に達する桁外れの威力はこの大陸に住む者達は皆を襲っていた。それは衝撃や地震、土石流など様々な形となって。



 あれから約半日の時が経った。

 アイル達は馬車に乗って近くの町に到着していた。本当は一直線にコルネット王国へ向かう筈であったが一直線に向かっても二日は掛かる事もあり、宿屋で一泊する事になった。念の為に双子の体調を確認するのもその理由に入る。アイルは凶悪化した魔物の攻撃を幾度となく受け地面にも強く叩き付けられ、アイラは突然の頭痛に襲われた事もあって真っ直ぐ向かう事はアスペルによって止められた。

 最初はエレスティスは納得していなかったがアイルの傷を見て案外、アッサリと肯定して宿屋に宿泊していた。もっとも表に出る事はなく寝台の上に座り頭を抱えているだけ。そんなエレスティスにアスペルは何も言わずに見守っていた。

 町に到着した時から町民達の話題は半日前のコルネット王国滅亡で持ちきりだった。適当に町を散策しているアイルとアイラはその話ばかりでいい加減聞き飽きていた。


「同じ話ばっかりだね~」

「仕方ないよ、一国が一日もせずに滅んだんだもん。誰だって信じられない気持ちになっちゃうよ」


 祖国の中枢たる地が滅んで一体誰が明るい話を出来ようか。出来るのは世間のはみ出しモノやフレイン達のような革命家ぐらいなもの。

 正直な話、アイラもまだ信じられない気持ちは残っている。しかし、王家の渓谷で見た光景は紛れもない現実で徐々に認めざるおえなかった。


(そういえばアイルはあの子の事を知っているのかな……)


 あてもなくぶらぶらと町の中を同じ歩幅で歩く双子。

 ふと、意識を失い別の場所で目覚めた事を思うアイラ。そこで出会った片翼を持つ少女の言葉の真意を改めて考えていた。

 特に少女が語る“あの子”はアイラの予想ではアイルただ一人。それ以外に思い当たる人物がアイラの人間関係には含まれない。ある意味、悲しい答えの出し方だが。


「あのアイル」

「ん、どうかしたの?」


 思い切って少女について聞いてみようと声を掛けるアイラ。


「その……アイルは白い翼を片方だけ生やした金髪の女の子って知ってる?」

「ん、んん? う~ん!! ごめん、全然知らないや」

「ううん、気にしないで」


 名前までは知らないので見た目の特徴だけをアイルに伝える。

 数秒ほどアイルの知る限りの人物を思い出すがどれも翼など生やしていない。つまるところ知らない。

 予想していた答えなので落胆することはなく、寧ろ知らなくて良かったと何故かアイラは安心していた。それ以降はあの出来事に関して口にはせず、また他愛のない話をしていた。

 他愛のない会話をしながら町を歩いていると人々が多く集まっている場所を双子は発見した。


「人が集まってるけど、どうしたんだろう?」

「あ、ちょっと待って。もう、怪我人だって事忘れてるよねアイルって」


 頭部や腕、足に包帯を巻いて療養するようにアスペルから言い伝えられているにも関わらず動き回るアイル。そんなアイルを見ながら呆れるように溜め息を吐くも、迷子になるのは嫌なので追いかけていく。


「おい、大丈夫か?」

「なんだって傷はそんなに少ないのに服はボロボロなんだ?」


 集まっている集団の中心には二人の男性が倒れ込んでおり意識の有無を確かめていた。

 その集団を掻い潜りながら集まる理由を見ようとしていた。そして、その人物らを見るとアイルは声を荒げる。


「ガイルとセルシルだ!! どうして二人が倒れているのさ!?」


 見た目に外傷はあまり見られないが服はボロボロになっている。しかし、アイルが驚いたのはガイルとセルシルの二人がこの町に居る事に驚きを隠せずにいた。

 この町は王家の渓谷に近い場所だがコルネット王国からだと騎馬に乗って全速力で走らせても二日は掛かる距離だ。もちろん、アイルのように速力が常人離れしていれば不可能ではないだろう。


「エレス達を呼びに行こう。もしかしたらガイル達が何か知ってるかもしれない!」

「え、あ、うん」


 ようやくアイルに追いついたアイラだが直ぐに引き返して宿屋に戻って行く。

 相変わらずの行動っぷりに怒る気力も失っていたアイラは納得して後を追う。既に当然の事すぎて慌てる事すらアイラは見せない。

 そして、双子はエレスティスとアスペルの泊まっている宿に戻り、ことの説明を二人にアイルが伝える。急いでいた事もあって扉を開ける音に驚きエレスティスが吃驚したのは秘密だ。


「アイルは何時でも元気ね……」

「元気というよりも能天気なだけだと思いますが?」


 祖国が滅んだ事にエレスティスとアスペルは正直、何もしたくない気持ちに襲われていた。しかし、アイルはそんな二人の心情など無視してガイル達の元へと無理矢理連れて来た。

 

「ホントにガイルとセルシルがいるなんて。でも、コルネット城からこの町までどうやって」


 そして、ガイルとセルシルの姿を見たエレスティスはアイルの言葉が事実だと始めて認めた。

 やはりアイルと同じ疑問を浮かべてしまうエレスティス。物理的にガイルの速力ではたどり着かない時間に訪れている事に首を傾げている。

 エレスティス達が疑問を解消しようとしている中、アイルは眠っているのか意識を失っているのか定かではないガイルとセルシルの頬を軽く叩いて起こそうとしていた。


「おーい、起きてる?」

「な、何をしてるのアイル!? 頭を打ってるかもしれないからあんまり刺激しない方が良いよ!」


 無理矢理意識を覚醒させようとしているアイルにアイラは止めていた。

 何かしらの原因でこの町に居る事は事実で、その原因が分からない以上無闇に動かすのは危険だと感じていた。外傷が見当たらないだけで体の内部に傷があるのかもしれないと厳重である。


「一先ずガイル様とセルシル様を寝台に運びましょう。このまま地面に横たわっているのも辛いでしょうから」

「そうね、二人共手伝ってくれる?」


 地べたに寝かせたままではと思ったアスペルはガイルを背負い宿泊施設に戻る事を三人に提案する。その案にはエレスティスも同意見でアイル達を連れて人混みをかいて歩いていく。セルシルは女性に持たせるのは紳士的ではないとアスペルから指摘されたアイルが背負っていた。

 宿泊施設に戻るとガイルとセルシルを寝台の上に臥床させ、タオルを水で濡らしおでこに乗せて目が覚めるのをエレスティス達は黙って待つことにした。待っている間はやはり話しづらい気まずい雰囲気になっており口を開く者はいない。ただ一人を除いて。


「だれがあんな事をしたんだろ。エレスティスには悪いけど……ちょっと興味があるなぁ」


 国を一つ落とす強大な攻撃はどんな人物が放ったのか不謹慎とは思いつつも興味を抱いていたアイル。

 ちょっとだけその人物と戦ってみたいと僅かな欲求に駆られている。勿論、国を一撃で滅ぼす攻撃はアイルもまともに受ければひとたまりもない、それはアイル自身しっかりと頭の中に入れている事柄。

 だが、やはり不謹慎な思考でアイル自身に悪気がないと言えどもエレスティスやアスペルの心に知らず知らずのうちに攻撃をしてしまっている。それをアイルが気づいているかと言えばノーであるが。


「こ、ここは……」


 変わらず消沈状態にあるエレスティスとアスペルだったが、寝台でガイル達を休ませて一時間程経つとガイルが目覚めた。

 ゆっくりと瞼を開き自分が今どんな状態、状況にいるのか首だけを動かして周囲の把握を行っていた。

 心配そうにしている双子やエレスティス、アスペルの顔を見て安堵の溜め息を吐く。見慣れた顔というわけではないが、知人程度の仲には関係が結ばれている事もあって安心していた。


「アイル君とアイラちゃんか、エレスティス様もご無事でなによりです」

「ガイルも怪我がなくてよかったね。でも、どうしてこの町に来てたの?」

「あ、ああ……実は」


 目覚めたばかりであったが、アイルはガイルに単刀直入に訊ねた。

 核心を問われたガイルは上半身を起こして自分達がこの町まで来ていた理由の説明を始めた。

 魔物の大群の強襲に遭った事や城下町にいた国民を逃亡させていた事、そして――国を消し飛ばした一撃の余波によって吹き飛ばされた事をエレスティス達に伝える。それを聞いてエレスティスは先ほどよりも酷く落ち込んでいた。

 推測の域しか出ない事柄もあるがあの一撃を見たのであれば全て悪い方向にしか想像する事が出来ない。


「あの一撃は逃げていた私達すらも巻き込むものでした。多くの者達は衝撃に吹き飛ばされ、もしくは地割れの被害に遭ったと思われます……」

「お父様やお兄様、お姉様も?」

「分かりません……ただコルネット国王はあの爆発のド真ん中にいたので他の者達よりも恐らく……」

「そ、そんな!? い、生き残ったのは私達ぐらいって……こと」


 国を覆い尽くす程の膨大なエネルギー量。その余波で周囲を巻き込んだのは事実だが、幾人が生存しているのか謎であった。当然、その中にはエレスティスの父親や兄、姉も含まれているので訊くも首を横に振って分からないと答える。

 特にコルネット国王は城下町で一人残って戦っていた事もあって、あの爆発からは絶対に逃れられない。そう嘘を言わずに伝えられたエレスティスはその場で崩れ落ちて呆然と下を向いてしまう。


「苦しいと思います、悲しいと思います――ですが、今は耐えてセレナーデ大陸から逃げてください」

「ど、どうして?! この事件の犯人を倒さなくて良いの?!」

「失礼な事を言いますが、今のエレスティス様に何が出来ますか? 特異点と言ってもその力は未熟なエレスティス様など私達二人にも劣る。それではむざむざ殺されに行くのと変わりはありません」

「だけどっ!! それでも、私はソイツが絶対に許せない!! 私の手で倒さないと気が済まない!!」


 泣き崩れてしまう気持ちも理解出来るガイルだったが甘えさせる事はせずに耐えてセレナーデ大陸から別大陸へ渡る事を進める。それを聞いたエレスティスは戸惑いながらガイルの言葉を批難する。祖国を滅ぼされ家族を失ってしまったエレスティスにとってガイルの言葉が逆に理解出来ないもので。

 しかし、ガイルとエレスティスでは生きてきた経験が違い冷静にものを言っていた。今の実力で立ち向かったところで勝機は見当たらない。僅かという小さな希望もなく、絶対の確率。それではただの自殺行為だとエレスティスを咎める。

 咎められるもエレスティスはその主犯が許せずに倒さないと気が済まないと語る。


「エレスさん――」


 激しい剣幕でガイルを睨みつけているエレスティスにアイラはやるせない思いで一杯だった。

 

「まだ分からないのですかエレスティス様?」

「なにが……よ?」


 言っても聞かないエレスティスに何時の間にか目覚めていたセルシルが呆れ返っていた。

 聞き分けのない子供を諭すようにセルシルがエレスティスに対してハッキリと勝てない理由を告げる。


「エレスティス様は弱いです。恐らくこの国の中堅どころにも劣るであろう実力、その程度のレベルでは殺されるだけ。修練を始めて一週間しか経っていない上に能力を研ぎ澄ませてもいません。そんな貴方を誰が行かせるとでも思っているのでしょうか」

「確かに私は弱い……だったら皆で戦えば良いじゃない!」


 今のエレスティスでは絶対に勝てないということ。その理由は漸く能力を使いこなせるようになってきたばかりだからである。

 特異点を含めたエレスティスの戦闘能力はコルネット王国の中の下程度でエレスティス自体はもっと弱い。そんな者が怒りに任せ立ち向かっても結果は無惨なものをガイルやセルシルにとって想像しやすいもの。勿論、国を想って必ず倒すという決意を持つのは素晴らしいものでそこは咎めてはいない。

 セルシルから注意されるもやはり納得出来ないでいるエレスティス。自分に実力がないという事はエレスティスにとって悔しいもので、それならこの場にいる全員で戦えばと強い口調で提案する。


「あのさ、ボク達完全に蚊帳の外だったけど。一つだけ言っても良い?」

「どうしたんだ、アイル君?」


 とてもアイルとアイラが割って入れるような話ではなかったので今まで黙り込んでいたのだが、痺れを切らせたアイルが言いたい事があると言う。


「エレスには悪いけど逃げた方が良い、ボクより弱いエレスがいても邪魔になるだけだし」


 アイルが口にしたのは余りに酷い言葉だった。

 アイルとエレスティスには大きな実力差があるのはこのメンバーの中であれば周知の事実で、あまりにも真っ直ぐ過ぎる言葉に周囲の時間が停止したようにも思えた。

 事実とは言え弱いとハッキリと子供から言われたエレスティスは顔を赤くさせていく。無論、照れではなく怒りの割合が占めている。残りは悲しいといった感情だ。


「分かってるわよ!! 私がアイルよりも劣っていることなんて、だけどどうしたら良いの!! 私にとってあそこは嫌な場所だったけど故郷だったのよ!?」

「それなら今は逃げて、もっと強くなれば良いじゃん」


 アイルに指摘された事で今まで抑えていたエレスティスの感情が一気に表に溢れ出てくる。

 本当はガイルやセルシル、それこそアイルに言われずとも敵わない事をエレスティスは悟っている。だが、それ以上に仇をとりたい気持ちが強く表面に出てしまって、だけど今の自分ではそれが無理で、ならどうすれば良いんだとエレスティスは混乱して吐き捨てるように叩きつけるように強い口調でアイルに向かって言う。

 何も出来ない自分とどうにかしたいという気持ちの間で葛藤するエレスティスに、やはり真っ直ぐとエレスティスを見据えたまま即答した。特に深い考えがあるわけでも、エレスティスの気持ちに寄り添うとかそういうものではなく、ただ純粋にアイルが思いつく事を言っただけ。


「そ、そうですよエレスさん。それに辛いのはきっとガイルさん達も同じだと思いますし」


 アイルの言葉を最後に沈黙する宿泊部屋。

 その中で沈黙を壊したのは珍しくアイラだった。アイルの物言いを聞いたときは酷く焦って今でも若干、冷や汗で掌が滲んでいた。ただ、単純な答えだったが正論だったので戸惑いながらも賛同した。

 そこからアイラは話を少しだけ変える。変えると言ってもエレスティスと同じようにガイル達も辛い筈だと代弁する。


「それにさボクは今よりも、もっともっと強くなるからきっと勝てるよ!」

「全く頼もしい子供だなアイル君は。それにアイラちゃんの言う通り俺達も悔しいですよ、ですけどここで激情に身を任せて挑めば本当にコルネット王国は終わってしまう。まだ、コルネット王国は終わっていないんですよ貴方が生きておられるのですから」


 自分も今よりも強くなると意気揚々と語るアイルに子供ながら頼もしいと頭を軽く撫でるガイル。

 アイルの頭を撫でながら一番重要な事をガイルはエレスティスに伝える。

 それは、コルネット王国がまだ完全に滅亡していない事。そして、エレスティスが生きていればコルネット王国は終わらないという事だった。


「そう、だよね。私だけが辛いわけじゃないんだよ……ね」


 完全に納得はしていないが徐々に考え直していたエレスティス。


「ここから一番近い港町だと何日ぐらいで着くの?」

「馬を全速力で走らせれば半日も掛からんだろう」

「それなら急ごうよ。もしも、エレスの事を狙ってたらきっとまだこの大陸にもいるはず」

「確かにな。必要な物だけ集めて港町に行こうか」


 国を滅ぼした人物がディオールだという事を知らないエレスティス達は一先ず、セレナーデ大陸を離れる事となった。

 船に関してはコルネット王家の船があるので問題はない。必要なのは道中で使用する武器と移動手段の馬だけ。

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