表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双天のステルラ  作者: なまけもの
世界への旅立ち
32/49

第32話

明けましておめでとう御座います。

新年最初の更新です。本当は1日に更新する予定だったのですが年始の忙しさに負けて今日となってしまいました。年末年始は忙しかったですはい。

先輩には忙しいとは聞いていたのですが想像以上でした。社会人になったら長期休暇がないのが痛いです。一週間ぐらいがっつりと休みたいですねえ。


さて、第32話なのですが主人公勢は全く登場しません。

こんな時もあるのですよ~。次話にはしっかりと登場しちゃいますけど!!

それでは今年も双天のステルラどうぞ宜しくお願い致します。

 アイルが巨大な魔物と交戦中の頃に時間は巻き戻り、場所はコルネット王国へと移る。

 コルネット国王が魔物の総数を大まかに聞きに行った頃には無数の魔物が城下町に侵攻し、兵士達が交戦していた。魔物の数よりも兵士の数の方が多いのだが一体一体の魔物は、普通の魔物に比べ個体値が高く一対一の戦いは兵士達にとって非常に危険な物だった。その為、兵士達は一対一の勝負はせずに小隊を組み戦っていた。

 猛々しい咆哮を上げて人間と魔物が互いに激しい戦闘を繰り広げ、被害は当然は酷くなっていく。魔法は使い手によってある程度、威力は上がるもので酷い魔法だと大陸すら吹き飛ばす。無論、それを容易に使える者は世界中探しても少ない。

 膨れ上がった火球が魔物の体を呑み込み下半身を消し飛ばし、地面もまた抉る。下半身が消えれば当然、物理的に動けなくなる。それは人間とは異なる生命体の魔物でもそこは変わらない。しかし、下半身が消えても戦い続けようとする本能があり、下半身を消せば安心は出来ない。


「さっさと死ねええっ!!」


 頭部を斧で砕くように斬り裂く。

 力自慢は伊達ではなく大抵の魔物を一撃で即死させるガイル。その後ろにはセルシルがアイルとの戦いでは見せなかった魔法を存分に奮い魔物を一掃していく。剣のような鋭さ、だが鞭のように長くしなやかな水は魔物達の体を斬り裂いたり、打ち付けたりし倒していく。

 それでも魔物の侵攻が弱くなる事はない。ガイルやセルシルのように高い実力の者達は魔物の大軍を相手にに謙遜なく戦えるがキャリアの短い兵士や実力が低い兵士は当然、抑えきれず逆に魔物に殺されてしまう。そして、そのまま悲鳴を上げながら兵士や逃げ遅れた庶民を惨殺する。


「状況はどうなのでしょうか、ガイル?」

「さあなっ! けどよ、まだまだ魔物は出てきそうだぜ!!」

「ですね!」


 流石は歴戦の戦士という事だけあってガイルとセルシルは魔物相手には余裕で競り勝っていた。


「こんな奴の攻撃を比べりゃアイルの化け物具合が良く分かるぜ!」

「あれからまた強くなったと考えればまさに一騎当千の実力ですし」


 模擬試合で子供が相手とは言え手を抜いた事はなかった。それでもアイルの実力はそれを超えていただけの話で、あれから一週間ここで修行をしていたのをガイルとセルシルは知っている。

 故にあれから強くなったのであればアイルの実力は一騎当千の存在で、実は非常に期待値の大きな子供なのだ。


「それにしてもこいつらを指揮している奴は何処に居るんだ?」

「分かりませんが、とても居城を建て攻めてきたようには思えないんですがね」

「だな、どこかの村や町を拠点にでもしてるのか? それだと、俺達の耳にも入るんだがな」


 飛び掛かってきた獣型の魔物の体を巨大な斧で薙ぎ払うガイル。倒しても減らない魔物の軍勢を相手にしながら、指揮官を探しているガイルとセルシル。これは国と国による戦争ではなく内乱に近いものだと予想していた。コルネット領地には数十の村や町があり、その何処かが拠点となっているのではとも考えた。だが、疑問もあった。

 仮にコルネット王国支配下の町や村を拠点にしているのであれば当然、噂やら何かを聞くはずだがガイル達はそんな噂を一度も聞いた事すらない。つまり、その可能性も間違いという事になってしまう。


「しかし、ほかの若い奴らは大丈夫なんだろうか。さっさと親玉を見つけて叩くしか勝機がねえんじゃねえか?!」

「大丈夫だと思いますけどね。彼らも国を守護する者として日々、鍛錬を欠かさずにいるのですから。ただ、ガイルが言うように相手の親玉を一刻も早く見つけ叩かねば長期戦となり間違いなくこちらが不利になりますよ。特にここは私達の陣地内なのですから」


 倒しても倒しても魔物が減少したとは到底思えないでいたガイルは城下町をセルシルと一緒に駆けていた。城下町には至る場所に魔物が人間を殺す為に徘徊していた。

 凶暴で醜悪な魔物が沢山居る街中で逃げ遅れた子供は両親を泣きながら探す。そして、人間よりも聴力など五感が強い魔物は子供の方へと駆け寄り殺そうと襲いかかる。


「うわあああん! おとーさん、おかーさん何処に行ったのー!?」

「グオオオオオオオーッ!!」

「くそっ、間に合わねえっ!!」


 力は強い移動速度は決して速いわけではないガイルは魔物に襲われそうな子供に手を伸ばそうとする。だが、魔物の方が行動が早くその鋭利な爪でズタズタに切り裂こうとしていた。

 助けられないとそう感じ目を瞑ろうとしたガイルの横に赤い炎が通り越し魔物の体だけを覆う。


「い、今の炎はまさか!?」

「ええ、我らが王でしょう」


 一瞬、まさに一瞬で魔物を塵すら残さず灰に変えた真紅の炎にガイルやセルシルは嬉しそうにする。

 この国の王の座を継ぐ者は常に特異点だと古くからの伝統で、エレスティスの父親にして現国王のコルネット国王もまた特異点である。


「お前達、遅くなってすまいな。この力を扱うの久しくて少々、周囲に迷惑を掛けてしまうからな皆を避難させてくれ。特に城下町の外へな」


 全身に激しい炎を纏っているコルネット国王がガイルとセルシルの眼前に立っていた。

 この国の国王で本来、前線として出るべきではない人物。しかし、その滾る力はこの国で最も強い力で、他の魔物を一掃しようと右手に炎が収束していく。それを見てガイルとセルシルは国王の命令通りに子供を連れて国王の前から離れて行く。

 もしも国王の事を知らなければ一人置いていくのかと反感を買われるだろう。

 コルネット国王はガイル達が離れた事を確認すると魔物達に劫火の炎を解き放った。まるで津波のように押し寄せる灼熱の炎に周囲の民家共々魔物は呑み込まれこの世から命を絶った。

 エレスティスと同じ能力だがその威力は数倍以上離れており、まだエレスティスが自分の能力を上手く扱えていない事がコルネット国王と比べれば分かる。一度に多くの魔物を散らした国王はハッと気づく。


「おっと、手加減はしているがあまりやりすぎてはならんな。味方までも傷つけてしまう事となる」


 城下町が壊れても元に戻せるが命だけは戻せない。故にまだ本気を出せないでいるコルネット国王は範囲を絞り避難が終わるまで魔物達を倒し始めた。武器を用意していないコルネット国王だがエレスティスと同じように炎を別の形に変化させ始め2m程の長さの炎の槍に変えた。それを持ったまま、アイルと同等の速度で瞬く間に魔物の体を貫いていく。

 恐らくコルネット王国で強いのはコルネット国王であろう。他の兵士達が減らせる量を大きく上回る。

 十数分程、コルネット国王が戦い続けていると何時の間にか城下町は静寂に包まれていた。聞こえるのはコルネット国王が魔物に対し爆発を起こす火炎弾を幾つも撃ち放つ音と爆発音だけ。


「ふうっ! だいぶ、減ってきたか!」


 流石に疲れが見えてきたのかコルネット国王は一息吐く。一体ずつちまちまと倒しても増えていくだけだが一度に多数の魔物を葬れば増える量を上回り減らせる。

 静まり返る城下町を見渡しているとコルネット国王周辺の空間が歪曲し始める。


「むっ、空間が歪むなど……」

「ククッ、素晴らしい強さだコルネット国王。やはりこの国で障害となるのは我々にとっては貴様か」


 空間の歪曲が消え黒い穴に変わるとそこからフレインが空間移動をして姿を見せた。そして、フレインが城下町のアスファルトに足をつけるとコルネット国王を褒め称えるように拍手を送った。

 しかし、そんなフレインの態度などコルネット国王からすれば癪に障るだけで、余計に眼付き鋭くなるだけにすぎない。そして、それをフレインも理解しておりあくまでも煽る事を目的にしている。


「貴様がこの件の首謀者か?」

「正確には俺が所属している組織がこの件の首謀者だ。そして、貴様の良く知る者も組織に関係しているぞ」

「まさか――エレスティスか!?」


 あくまでも冷静に取り乱す事なく相手に探りを入れるコルネット国王だが、フレインは隠す気は毛頭ないのか素直に肯定しその組織に関係する人物がコルネット国王の知人に居ると発言する。その人物がエレスティスではないのかと口にする。

 コルネット国王もまたエレスティスに関しては娘以上に何か特別な事柄を知っている雰囲気があった。


「確かにエレスティスもその一人だ。だが、もう一人いるのだがな、今の貴様にはどうでも良い事か? 最愛の娘エレスティスが居るのだからな」

「最愛の娘……確かにそうだが。その言い方だと私の子供がもう一人関わっているとしか聞こえないが?」

「そう、そのまさかだ! このコルネット王国の悪しき世襲制(せしゅうせい)によって漏れた者がな」


 天壌なる星々とコルネット国王だけが唯一知る事実はエレスティスの人生に深く関わるもの。だが、もう一人組織と関わる者はエレスティスのように何か重要な事とは無関係の人物で。

 コルネット国王は黙ってその人物を考えていた。その暇な時間、フレインは特にコルネット国王に危害を与える事はせずただ立つだけ。30秒程考えているとフレインが口を開く。


「そら、来たぞ」

「ま、まさか……そんな何故、ディオールお前が!?」


 この場所に現れた人物。その人物を見たコルネット国王は今まで冷静を装っていた表情を驚愕に変え信じられないと言いたげな表情で息子ディオールを見据えていた。

 

「ふん、何故とは白々しいな。それともエレスティスにお熱だったか?」


 困惑するコルネット国王に皮肉の言葉を言い放つディオール。既に白い仮面は外しているが、ローブはフレインの着ているのと同じものには変わりなかった。


「ディオール、自分が何をしているのか分かっているのか?」

「ああ、理解しているとも。別に問題はないだろ、俺の国となるそれだけなのだから、な!」

「特異点でもないお前が何故、魔法ではない能力を持つ!?」


 どんな理由で息子ディオールが祖国を滅ぼそうとしているのか理解に苦しむコルネット国王だが既に説教で済ませる気はなく、息子に向けるような眼付きはしていなかった。だが、ディオールも同じで実の父親を殺す気で攻撃を繰り出していた。

 特異点でもないディオールが大人一人は包み込める黒いエネルギー弾を一発だけ放つ。それに驚きつつも反撃として同じ大きさの火炎弾を撃ち相殺する。二つのエネルギーの塊が激突すると激しい爆発が発生してその衝撃で二人が立つ周辺に置かれている樽や木箱が分解され別の方向にそれぞれ飛ばされていく。


「確かに今までの俺にこんな力はなかった。だが、組織に貰ったこの漆黒の宝玉を埋められてからは使用できるようになった」


 相殺されるとディオールは上着の銀色の留め(ボタン)を外してその使える理由を告げた。厳しい訓練を積み重ねてきたであろう鍛え上げられた上半身を曝け出す。そして、その上半身の胸には艶やかな光沢を見せる心臓と同じ大きさの黒真珠のようなものが埋め込まれていた。


(なんという力だ。アレはディオールの力ではない、全く異なる存在の力だ……!! 確かにアレがディオールに力を貸しているようだが)


 恐ろしく強い力を全身に感じているコルネット国王は、ディオールとは違う存在を感知していた。

 そして、ディオールに力を貸している事も看破していた。

 留め具を付け直すとディオールは黒いエネルギーを纏いながら一気にコルネット国王へと詰め寄り、大きく拳を上げていた。


「いくぞ、貴様を殺して俺が王となる!!」

「この愚息めが!! 貴様は間違っているのだと気づけ!!」


 コルネット国王は大きな誤ちを起こしているディオールに呆れながらも反撃に出ていた。

 二つの拳が激突する。その瞬間、衝撃が城下町へと伝わり民家の窓ガラスが音を立てて割れる。始まった父と子の戦いをフレインは民家の屋根に立ち観戦していた。


(何故、陛下は混沌の聖櫃(せいひつ)をディオールに与えたのだろうか。アレはまさに神を冒涜する力、本来特異点でもないものを特異点にもし、凄絶な力を与える。それだけではない、生物を全く異なる生物にも変える事を可能にしている。いや、そんな力を幾つも生み出せる事も可笑しいのだが……)


 戦いを観戦しているフレインは天壌なる星々を統べる陛下に疑念を抱いていた。

 それは混沌の聖櫃と呼べる神を冒涜する力をディオールに与えた事とその力と同レベルのもの無限に生み出せる事に怪しんでいた。陛下として仕えてはいるがその部分だけはフレインは不審の念を抱かざるおえなかった。

 人を簡単に殺せ、生物を生物とすら思わない狂気の沙汰のフレインにすら怪しませる陛下とは一体何者なのか。だが、いずれはその陛下に繋がるであろう。


「ぐはあっ!?」


 腹部に強烈な拳の一撃を叩き込まれたコルネット国王は一瞬で民家の壁を突き破りながら数百m程吹き飛ばされていく。しかし、吹き飛ばされた場所からさらに凄絶な炎が周囲に放たれディオールは舌打ちする。


「ちっ、普通の人間ならば今ので死ぬんだがなああ!!」


 コルネット国王を吹き飛ばした場所まで一瞬で移動しさらに強烈な威力の黒のエネルギーを発生させるディオール。


(ありえん、ディオールは叫ぶような子ではなかった。アレの副作用か、性格が変化している……)


 再び赤い炎と黒い力が激突し城下町の一部を消し飛ばし地面を深く抉る。ディオールの攻撃を相殺したコルネット国王は炎の槍でディオールを突き刺そうとしながら、こんな性格ではなかったと感じていた。ディオールは元々、冷静で叫ぶような青年ではない。だからこそ、ディオールが埋め込んでいるあの力が作用していると思っている。


「そんな温い攻撃で俺に勝てると思っているのか?!」

「ぐうえあっ!?」


 黒真珠よりも大きめのそれに狙いを定め突き刺して破壊しようと考えていたコルネット国王。

 真紅の炎の槍はディオールに掠る事すらなく突きは終わってしまう。そのまま、ディオールはコルネット国王の横腹に強烈な回し蹴りを叩き込み積もっている民家の瓦礫へと蹴り飛ばし反撃される前にさらに黒いエネルギーを収束させ追撃の一撃を放つ。

 たった一発だが周囲を消し飛ばすだけの威力は秘められており黒い力が爆発を起こし砂埃が周囲に充満していく。また、パンを作っている工房も城下町には幾つもありコルネット国王とディオールの戦いによって城下町は粉塵に包まれていた。


(予想を遥かに上回っている……どうする!?)


 瓦礫に埋もれた状態でコルネット国王は対策を練っていた。今までのディオールを遥かに上回る実力を有しており戦いから遠のいた今の腕が鈍ったコルネット国王では勝機は薄く汗が滲んでは今もまた額から一滴の汗が流れ落ちる。


(粉塵か。若い頃に比べれば今の実力派落ちている、やはり玉砕覚悟でいくしかあるまい……!!)


 瓦礫をどかし立ち上がると直ぐに一発の火炎弾を放った。しかし、速度は遅くとても攻撃を決める気には思えない。

 簡単にそれを避けるディオール。だが、ディオールが避けている間にコルネット国王は別の場所へと移動して先ほどと同じ攻撃を放っていた。何かを企んでいる、それはディオールの頭の中には既にある予想だが避ける。相殺しても良かったが避ければダメージを受ける事はないないので一番安全な行為。


(あの火炎弾は当たった場所に炎が残るのか。奴は何を企んでいる)


 様子見で避けた掌サイズの火炎弾は地面に当たると炎を残していた。そう、爆発する事もなく炎が周囲に広がる事もないまま残り続けている。それを見て余計にコルネット国王を警戒するディオール。


(これだけ粉塵が充満していれば粉塵爆発を狙えるだろうが、あの国王はそれを狙っていないのか? 炎系の特異点であれば一気に酸素を減らし大爆発を起こせる筈だ。それこそ、小さな町一つ吹き飛ばす程度は簡単なはずだが)


 コルネット国王とディオールの戦いをただの傍観者として見ているフレインはコルネット国王の行動が解せないでいた。風はあまり吹いておらず砂埃や小麦粉など様々な粉が空気中に充満しており、炎系を操る特異点であれば町一つ巻き込める粉塵爆発を起こせる筈だと予測しているフレイン。だが、粉塵爆発を狙っている行動ではないコルネット国王を常に目配りしている。

 そして、今もまた同じ攻撃を繰り返しており本当にこの国を守る気があるのかと疑いの目を向けてしまうディオールとフレイン。


「貴様、この国を守る気があるのか!? それとも負ける気で戦っているのか!?」

「何を言っている。私はこのコルネット王国の国王だぞ、私がこの国を見捨てるわけなかろう。ディオールお前こそこの国を見捨てたのだ!!」

「何をぬかすと思えば、俺にとってこの国に何の感慨もないのだからな!」


 四発目。とうとうディオールは苛立ちを隠しきれずにコルネット国王に対して怒声を吐き捨てる。

 だが、コルネット国王は一国の王として見捨てる気など毛頭ないのだと返答し、逆にディオールに対して国を滅亡に導こうとしている行動こそ、それに値するのだと強く反論した。

 それでもディオールにとってコルネット王国に対して躊躇いすら生まない程に何も思い出がないのだと強い口調で吐き捨てた。


「何の感慨もだと? 肉親の情すらないと言うのか?!」

「当然だ。そもそも、奴らは俺にとって血の繋がりなどないに等しい」

「エレスティスもか?」

「……ああ、奴はただの落ちこぼれ。特異点だろうが無能者にすぎん」


 今まで共に育ってきた弟妹にさえ肉親の情を抱いていないディオールに唖然としてしまう。

 だが、エレスティスだけはと思い確かめるコルネット国王。エレスティスが自らの殻に閉じこもって以降はお互いに顔を見合わせる事すらなくなったが、昔は仲が良かった事は今でもコルネット国王の記憶にある。

 ほんの少し口を閉じるも直ぐにエレスティスも他の弟妹と同じだと口にした。だが、どこか本音ではないようにも思える。


「やはり、か。だが十分に時間はもらった」

「なにっ?」

「この粉塵の中、ただ爆発させても無駄だと私は考えた。だらこそディオール、貴様を逃がしはせんぞ!!」


 その刹那、四発放った事で残った炎から炎の鎖が目にも止まらぬ速度でディオールの四肢に伸び絡みつく。

 粉塵爆発をコルネット国王は狙っていた。だが、粉塵爆発を狙っていると勘付かれれば粉塵の少ない地点に移動されたり、粉塵を激しい突風で飛ばされたりするだろう。そうなれば効果は落ちる事になってしまうので、避けれないように縛り上げるには話をさせながらの方がとても効率は良かった。


「おのれっ謀ったな!?」

「逆にこんな簡単な手に引っかかるとは思いもしなかったが。息子を殺すのは少々心苦しいが」


 今までの攻撃とは違う。真紅の炎はコルネット国王の右手で渦を巻きながら周囲の木造物を発火させている。さらにその発火した炎をかき集めさらに威力を増幅させるコルネット国王。


「くそっ……ただの鎖みたいに壊すことも出来ん!!」


 ただ鎖で捕縛されたのであれば力で破壊出来たが、別の力も宿る炎の鎖を壊せないディオールは必死にもがき束縛から逃れようと力を放出する。黒い力が天を衝く勢いで全身から放出しても束縛は強まるばかり。


「ぐああっ!?」

「無駄だ、それは特異点者の行動を束縛する鎖。ディオールお前は仮にも後天的特異点となった以上、それからは逃れられない!!」


 特異点相手に絶大な効果を齎す炎の鎖。能力を使おうとすればする程に効果は強まる。


(俺ならば空間を操作すれば難なく逃れられるが、今のディオールには無理……だな)


 空間を切って鎖自体を繋げられない状況に変えれるフレインからすれば逃れる事は容易だが今のディオールでは逃れられないと判断していた。そう判断していながらも助けようとはしていなかった。


「眠ってくれディオール!!」

「くそっ、くそっ!!」


 膨大な熱量を凝縮した直径三十cm程の火炎弾は絶対に決まるディオールへと放たれ着弾する。刹那、極太の火柱がディオールの全身を包み込み雲を貫く。さらにその炎は周囲に飛び散り連続して城下町中に鼓膜を破るようなけたたましい爆発を起こし続けていた。


(考えたな、粉塵爆発自体は城下町にいる魔物を倒すためのもの。さらにディオールにもきっちりとした一撃を決めている)


 城下町全体には出来ないが逃げ遅れていない国民が居ない周辺を巻き込んだ凄絶な爆発を起こす。当然、その周辺に居るフレインも巻き込まれてダメージを負うのだが空間を弄り自分と爆発を起こしている空間に段差を作り爆発が届かないように細工て黙って今の凄絶な光景を見ていた。


「ぐっ、は……ぁぁぁぁぁあっ」

「済まないな……ディオール」


 全身が熱傷しているディオールを見て申し訳なさそうに目を瞑る。巨大な火柱は十数秒ほどで消えてしまいディオールが立つ周辺の民家は既に使い物にならず修復不可能な程に破壊されていた。さらに地面は深く抉れておりドーナッツ状になっている。


「ハアッ……ハアッ……だが、私も少しばかり無理をし過ぎたか……」


 いくら炎を操れる特異点と言えども爆発の中にいればダメージは免れない。仮に爆発や炎に対して耐性があったとしても。

 一気に体力を消耗したコルネット国王は息を乱しながらディオールからフレインへと視線を向けた。

 ディオールが倒れそうになる姿を見てフレインは小さく溜め息を吐いた。


「ディオールを相手に体力を減らした貴様がこの俺と戦うのか? 貴様の手の内を見ている上にディオールよりも強いこの俺と?」


 フレインと連続で戦おうとするコルネット国王に呆れているのだろう。


「言っただろう、私は国を守るのだと。城下町が破壊しつくされようとも国民が居るのならば何度でも蘇るのだから」

「見上げた根性だが、一年もすれば世界は大きく変わっているぞ? 貴様たちコルネット王国はその始まりに過ぎん!!」

「どういう意味だ……?」


 コルネット国王は命を賭けてフレイン達の野望を止めようとしていた。仮に自分が死亡して国が荒廃しようとも必ず蘇るのだと信じている。

 しかし、フレインにとってはただの夢や青臭い理想にしか聞こえずに鼻で笑う。さらに一年もすれば世界は大きな変化を見せていると。当然そこには意味が込められておりコルネット国王は聞き返す。


「考えてみると良い、俺は組織の一員だ。そして、その一員は皆総じて俺と同じように特異な能力を持ち個々の実力は一国を簡単に滅ぼせる存在。さらに俺はこの国に居るということを……な」

「じょ、冗談じゃない……そんな危険な人物ばかり集まった組織が世界にあるなど一度も聞いた事すらない」


 全てを話す事はしないがある程度の推測は出せるヒントを与えるフレイン。天壌なる星々にはフレインと同格以上の一員が在席している事を聞いて戦慄を覚える。

 フレインが組織に在席しているのは初めて会話をした時に聞いたが、その組織の強大さまでは想像しなかったのか歯軋りをしていた。組織は何人構成なのか、どこにその本拠地があるのかと様々な問題を抱え込んでしまい自分の立たされている状況は最悪だと感じていた。


「お前が一人でこの国を落としに来たのは個人でも可能だから。そして、ここに居ない組織の一員は皆それぞれ……他国を襲っている、というわけか?」

「その通りだが、中々冷静じゃないか」

「冷静違う、単に諦めているだけだ。他国の心配しようとも私にはどうしようもない。だからこそ、私はここでお前という危険因子を消しおく!!」


 フレインの『一年後には世界が変わっている』という言葉の意味が分かったコルネット国王は冷静にそれをフレインに対して口をする。冷静に答えたコルネット国王に肯定すると再び拍手を送る。

 冷静に見えているが諦めているコルネット国王。今現在、他国がコルネット王国と同じような状況に遭っていても絶対に手助けを出せるわけではないのだと理解しているからだ。瞬間移動や空間操作、時間操作、世界改変そんな事が出来ない以上諦めるしかない。

 それでもコルネット国王はたった一つの道であるフレインを倒す事を専念した。一国を滅ぼせる存在などそうそう現れはしない。ならば一人でも数を減らせれば未来へと繋げれる可能性があるからだ。

 倒す宣言をしながら両手に炎を発生させながら屋根の上に立つフレインを見上げ睨むコルネット国王。だが、その瞬間に黒いエネルギーの閃光がコルネット国王の身を呑み込む。


「がああっ!?」


 突然の不意打ちにダメージを負い倒れるコルネット国王。フレインは不意打ちの原因たる者を見て絶句していた。


「な、なんだあの右腕は?! さらに傷も回復している」


 うつ伏せに倒れていた筈のディオールが起き上がりコルネット国王に攻撃を放っていた。

 しかし、フレインが驚愕したのは起き上がった事ではなく魔獣のような腕だ。さらに全身が焼かれていたディオールの火傷が煙とともに消えていく。ディオールの身に何か変化が生じた、それはフレインもコルネット国王にも見れば分かる事だが今までのディオールは決定的に何かが違うと緊張し唾を飲んでしまう。


(なんという事だ思った以上に強力な一撃……たった一撃で体が軋む)


 ディオールとの戦いは終わってないと確信すると立ち上がろうとするコルネット国王だが立つだけで全身に激しい痛みが走り苦痛に顔を歪ませてしまう。

 不意打ちだったという事を差し引いても先ほどまでのディオールの攻撃を上回る威力という事にコルネット国王は艱苦(かんく)に悩まされていた。


「ハアアア……!」


 大きく息を吐く動作をするディオール。

 上半身の服は燃え尽き黒真珠のような混沌の聖櫃が露になっていた。そして、混沌の聖櫃は生きているかのように小さく脈を打っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ