第21話
中々執筆が進みませんねぇ、学生の頃には夏休みという素晴らしい執筆期間があったのですが社会人は長期休みさえない。もっと学生のころを楽しんでおけば良かったと思う最近。
今回も新キャラ登場ですけど名前が一向に出ないってダメダメですね。さて、今回の話で双子はどんな成長を果たすのか。ちなみにアイルは少年ジャンプ顔負けのインフレを起こす……なんて冗談ですよ。はっはっは!
ちなみにアイルの剣。
これは大人が持つ分では片手剣です。全長は約105㎝ぐらいでアイルが持つには少々長い剣です。正式な名称とかはなく不明な点の多い剣ですがぶっちゃけ誰か武器名を考えてくれませんかね? 能力とかは決まってるのですが別に武器名と能力自体は特に関連性がなくても良いです私的には。
コルネット城下町の街路を当てもなく歩いていた。城下町も広く街を隅々まで見るには時間が掛かりそうである。立ち寄りたい飲食店や露店はあるのだが既に双子の財布の中身は空になりかけており、満足に食事をとる事も出来ないので若干、アイルに何時もの元気がなくお腹を擦っている。
「ホントにお金がなくなるなんて……どうしようボク達ご飯にありつけないよ!?」
「そ、そんな!? 一応まだパンを買うお金ぐらいはあるから……朝ごはんぐらいは食べれるよ」
「それでも、なんでこんなにパンが高いのさ!! 山奥の村ならもっと安かった」
「きっと都会だからだよ。都会の物価って凄く高いって聞いたことがあるもん」
市場でパンを買って朝食をとろうと考えているのだがパンの値段が高い事に不満を覚えていた。
山奥の村ではパンを二人分買えるだけのお金でもコルネット城下町ではパンが一人分しか買えないのだ。都会で生活をしていたわけではないのでアイラは都会はどこも同じだという偏見があった。
ちなみに双子はパン屋の前で高いと不満を言っているわけで店員としては商売の邪魔なわけで双子は店員から怒声を浴びる事となった。
「買わんのなら文句を言うな。商売の邪魔だ!!」
こればかりは双子が悪いので誰もフォローする事が出来なかった。とは言え子供が相手なのだからもう少し優しい言い方は出来なかったのだろうかと店員の対応で評判は少々落ちたりするもの。
「ちぇちぇっ、そんなに怒らなくても良いのに」
「邪魔しちゃったのはホントだから仕方ないよ。店員さんも売らなきゃいけないから」
店員から強く怒られたアイルは口を尖らせながら不満を呟いていた。
アイルの言い分も分からなくもないが商売の邪魔になっていたのは事実なのでアイラは反省しつつアイルを宥めていた。
「仕方ないからこのままギルドに行こ。なにか良いクエストがあるかもしれないよ」
「最初は簡単なのにしようね? 私達はまだまだ新米の旅人なんだから難しいのや危ないのからしたら危険だからね」
「それじゃ、間をとって普通くらいのにしよう。簡単すぎるのもなんだか面白みがないから」
「それくらい、なら良いけど」
「そうと決まればギルドにいこー! なんだけどギルドってどこにあるのかな」
「う~ん、初めての町だから他の人に聞いてみよう。多分、冒険者用のギルドだから路地裏とかにはないと思うよそういう場所は賊っていう危ない人達が群がってるよきっと……」
ギルドに向かう気満々でいるアイルだが肝心のギルドは城下町のどの辺にあるのかと疑問に思いすぐさま足を止めた。当然、アイラもギルドの位置を知る由もないので民衆から身辺について情報収集しようとアイルに促す。そのついでに、いやアイラにとってはかなり重要な事だが、人気の少ない路地裏には行かないようにと釘をさしていた。
人気が少ないような場所は裏ギルドや闇ギルドなどと様々な呼称で呼ばれる法外な施設もある為、アイラは出来る限り関わる事を避けたいとつくづく思っていた。
南大通りを抜けて城下町の中心である巨大な噴水広場にたどり着いた双子は人だかりを見つけた。
大剣や斧、槍など様々な武器を装備している屈強な戦士から理知的な魔法使いなど様々な冒険者達が集って、皆同じ内容について話していた。
ギルドに行く予定だったがギルドよりも面白そうだとアイルは嗅ぎつけたのか興味を持ち戦士達の立つ場所を見る。
「どうしたんだろ。なんだか沢山の人達が集まってるみたいだけど何か面白い事件でもあったのかな」
「事件……なのかな? それにしては焦っているような感じはしないよ」
「ボク達も見に行こうよ。もしかしたらこの国の王様からのおふれかもしれないし」
「う、うん……」
双子の身長では大の大人達が邪魔となって真相を確かめる事が出来ないので割り込みしながらアイルは前へと出る。その時は大きな町という事もあって離れ離れにならないようアイラの手を握っている。しかし、人ごみが苦手で特に見知らぬ人物や屈強な他人に対しては特に顕著でアイラの身は少々萎縮していた。
逆にアイルはお構いなしにぐいぐいと割り込んでいくのでその度にアイラは心中で何度もごめんなさいと謝罪していたが心の声なので届く事はない。
「第三王女の護衛か。上手くいけば出世街道まっしぐらだなこりゃ!」
「けどよ、行くのは王家の渓谷だろ。あそこは結構危険な場所だって俺は聞いた事があるぜ」
割り込んで前に出る度に戦士達が話す人だかりの理由が聞こえてきてアイルの心を突いていた。
「王女の護衛かぁ~、しかも王家の渓谷ってとこなんだ面白そうだな~」
「そ、そうだね……あははっ」
冒険譚を読む子供のように目を輝かせているアイルに乾いた笑みしか出せないでいるアイラは何も言わずに人だかりの原因となっている場所へと到着した。
「これだね、えっとぉ。コルネット王国第三王女エレスティスが……なんたら行う王者のなに? 難しい字で読めないよ!」
「コルネット王国第三王女エレスティス様が執り行う王者の儀式の護衛役を募集してるみたいだよ。あっ、依頼料としてお金が貰えるみたい」
「ホントに!? それならボク達も応募してみようよ。それに、もしかしたらエレスティスって人と仲良くなれるかもしれないね!!」
数多の旅人達が集まっている場所ではコルネット王国が公布した公文書が木質の野立に張り出されていた。
その内容は第三王女の護衛でそれ相応の依頼料を受け取る事が出来、それを聞いたアイルは応募してみようとかなり真面目に断言した。護衛の依頼がどれ程の難易度なのか人生経験の少ないアイルには分からないので自分でも出来そうという考えしかしていない。
「応募してみるのは良いけど……私達みたいな子供に王族の護衛なんて絶対させてくれないよ」
「コルネット王国に到着するまで何度も魔物と遭遇して実践を積み重ねてきたんだからそこら辺の兵士より強い自信があるのに」
「確かに強くなったと思うけど……王様や王女様からしたら私達なんてただの子供だよ」
魔物と幾度となく戦闘を繰り返してきた事もあってアイルとアイラの実力は中々に上達しており、アイル自身は一般兵よりも強いという自負があり、決してアイルの勘違いでもなく寧ろ以前からその実力はめきめきと成長、そして大人よりも余程の手練れになってきている。
アイラも多少なりとも強くなった実感はしているもののアイルと違い謙虚で第三者から見た自分は武器を持ったただの子供としか見られていないのではと現実的な思考をしていた。
応募してみようとアイルが口にすると周りの大人達は耳を疑うかのように視線を落としてアイルへと集める。急に集まる視線にアイラはビクッと体が反応してそそくさとアイルの背中に隠れるようとする。
「お前、ちゃんとこれの意味を理解してるのか? 子供のお遊びじゃねえんだぞ」
「分かってるよ~。エレスティスって王女様をボクが護衛して儀式を成功させれば良いんでしょ? ボクだってそれ位理解できるよ」
アイルの約二倍はあるだろう体躯の男から野立に書かれている内容を理解しているのかと疑われると笑いながらアイルは分かっていると首を縦に頷いた。
「はははっ、これは面白い子供だね。だけど、これは大人の仕事だから子供は家に帰った方が安全だよ」
「そうそう、それに国王が子供を採用するわけないでしょ。王女の護衛なんてエリート中のエリートしか無理よ」
双子と同じようにチームを組んで旅をしている若い魔法使いから笑われながら無理だと断言され意外な人物がムッと不満そうな表情を見せていた。
「そ、そんな事ないもん……アイルは子供だけど他の人と比べたらずっと強いんだから!」
「そう、それは良かったね。だけど王者の儀式だ本当に実力のある者しか無理だろうけどね」
「ぅぅっ……」
不満そうにしていたのはアイラで珍しく相手に言い返しておりアイルは意外そうな目色で見ていた。
言い返したもののあまり相手にされず女性から軽くあしらわれてしまいアイラが珍しく見せた勇気は一気に萎んでいった。
(アイルが馬鹿にされるのはなんだか悔しいのに――言い返せないよ)
「それなら今から王様の所に行こうよ! ボク達はハヴァン王から関所通行許可証を貰ってるんだから少しは実力の証明になるから無理だなんて決まってなんかないもんね」
「う、うん! 無理って決まってなんかないよね」
次に言い返そうとしても言い返されると思ってしまい尻込みしてしまうアイラ。
まごまごとしているアイラを見てアイルはにっこりと温かい微笑みを浮かべてアイラに右手を差し出してコルネット王国の国王に会いに行こうと誘うアイル。そして、自分達には関所通行許可証がある事を一つの強みではないのかと説明した。実際、他国から他国へと渡る際に関所がありそれを許可したという事は他所を旅しても大丈夫だという証拠にもなる。
アイルからフォローされてアイラは少し元気を取り戻し、国王の元へと行こうとアイルが差し出す右手をアイラも右手で握り返した。そして、双子はコルネット城へと走って向かって行く。走って行こうとするアイルとアイラに無駄だと声を掛けようとするも聞く耳を持っていない速度だったので野立を中心に集まっていた旅人達総勢四十名は黙り込んで双子の背を見ていた。
「世間知らずの子供ってどこにでもいるもんだな」
「子供だから行かせてやれば良いだろ。どうせ鼻で笑われて帰ってくるに決まってるんだからよ」
双子を無理矢理止めなかった者は既に無理だと判断している者達が大半だった。この中には野立を見て王の前に謁見した者もいるが断られている。
参加しようとする者は成功した暁に貰う事が出来る莫大な賞金や地位などを狙っている。だが、儀式に賛同出来る者はただの一組だけである。その狭き門を子供が通れるはずもないと決めつけていた。
※
高価な壺やコルネット王国の歴代の当主の肖像画が掛けられている廊下を黙って歩くのは第三王女エレスティスだった。しかし、その表情は不機嫌一色に染まっておりセレスティスの従者であろう若い男性は溜め息を吐いていた。
「エレスティス様、国王様も貴方がコルネット王国の君主になられる事を切に願っておられる事を感じてくださいませ」
「煩いわね、お父様が私を君主にしたいのは特別な力があるからでそもそもそんなの無かったらディオールお兄様が最有力候補の筈よ……!!」
彼女が不機嫌そうにしているのは王者の儀式に関係する話が朝早くからあったからだ。
現在、彼女の一日はほぼ王者の儀式関連のもので予定は埋まっていた。王者の儀式を行う者は本来はコルネット王国の王族である男性だけなのだが“聖なる炎”と呼ばれる能力を生まれつき有していたエレスティスは特例として王者の儀式を行う事なっている。だが、エレスティスは王の座に着きたいとは微塵も望んでおらず、ただただ憂鬱な日々を送っていた。
そして、極めつけはコルネット王国第一王子であるディオール王子の事が気になっており、エレスティスは従者に対して鋭い眼光で睨んでいた。
「それに私はお兄様みたいな知識も力もない。ただ、聖なる炎っていう能力があるだけで選ばれたそれだけの事なのよ……」
弱弱しい言葉で従者にぼやき小さく乾いた笑みを零すとエレスティスは一人すたすたと赤絨毯の上を歩いて行く。
「エレスティス様……」
孤愁を帯びたエレスティスの背中を見ながら名前だけを呟く事しか出来ない従者。
「あれ~?! 王室ってどこなんだろ」
「こっちじゃないよ……多分、こっちだと思うけど」
従者がエレスティスを追いかけようと足を前に出した瞬間、十字路となっている廊下の西通路から双子が歩いてきていた。しかし、完全に迷子の様子で辺りをきょろきょろと眺めていた。
「あのような子供達が何故、城内に……いや、そもそもあの少年が携えているのは剣なのでは」
見た目は幼く世間知らずな少年の雰囲気を醸し出す少年アイルがいち早く目についた従者は眉を潜める。だが、それ以上に視線がいくのはアイルが携える剣だった。
長年王族に仕えていればその武器が玩具か本物かの見分けは簡単につき、相手が子供でも否応なしに警戒せざる終えずに懐に右手を忍ばせて全長十五㎝程度のダガーを一本、右手の親指、人差し指、中指で掴み迎撃準備に入る。しかし、きょろきょろと場内を見まわしていたアイルと従者は視線がピッタリと合い、迂闊に放てずにいて立ち往生していた。
「ねえねえ、君は王室がどこにあるのか分かる? 案内なしじゃ王様の所にまでたどり着けなくて困ってるんだよ」
従者とは違い何も考えず近づいては王室の場所を尋ねるアイル。そんなアイルに呆気をとられた従者はダガーを手放しそうになるが落とせばダガーに警戒すると感じて手放さず平静を装いながらアイルに王室の場所を教える。
「国王様が居られる場所は北通路を真っ直ぐに行けば着きます。しかし、君みたいな……って」
「ありがとーっ! アイラ、この道を真っ直ぐだってさ」
「あの、道を教えていただきありがとうございます」
道を教えると従者は疑問に思っていた事をアイルに訊ねようと言葉を発するが既にお礼を告げて双子は走って王室へと向かっていく姿に言葉が止まった。もっともアイラは一度だけ足を止めて振り返るとぺこりと頭を下げ、再びアイルを追いかけて行く。
「……あんな子供が暗殺なんて考えないだろうな。そもそも、大っぴらに剣を装備しているような人間が暗殺を考えるわけはないだろう」
小さな子供に対して懸念を抱いてしまった自分が恥ずかしいのか従者は思考を切り替えて自身の職務を全うしようと一人歩いて行ったエレスティスの後を追う。
「ねえねえ、王女様ってどんな人なのかな!? やっぱりボク達と同じぐらいかな、それとも年上なのかな」
「私は年上だと思う……。でも、きっとすごく気品のある人だと思うんだ私」
「やっぱり王族だからそれだけの勉強してるのかな。そう考えたらボクは嫌だな~、絶対に勉強中に眠っちゃうもん」
「国を担う人だから嫌でもさせられるのかも。でも……色々な事を学べるのは羨ましいな」
王室を向かう途中でアイルとアイラの二人は身元も知らないエレスティスがどんな人物なのか話しながら想像を膨らませていた。その中で勉強が嫌いなアイルと好きなアイラでは違う意見が真逆だが全てが一緒というわけではないので普通だろう。
「ええっ? 勉強ってそんなに楽しいかなぁ」
「前を見ないと人にぶつかって危ないよアイル。って……あ」
「わぁっ」
アイラと話す為に後ろを向きながら前を進むアイル。そんなアイルに前を見て歩かないと誰かと衝突すると注意するが既に遅く左側から歩いてきた男性と衝突し後ろに倒れ込みそうにアイルはなっていた。
だが倒れる事はなくアイルの体は男性によって支えられており、アイルは態勢を直して倒れるのを防いでくれた人物の方を向いて見上げた。
身長は双子と比べて明らかに高く百八十㎝前後はあり髪色は黒く艶やかであるが長さは肩に掛かる程度で一見すると女性のような髪だと感じてしまう。目の色も髪色と同じで黒色で服装は権力者だという事が分かるよう高価で尚且つ様々な装飾がされていた。
(魔術師……なのかな。だけど、なんだか目が冷たい……)
服装は黒いローブを纏っており王宮魔術師なのかとアイラは錯覚してしまう。それと同時に自分達を映しているであろう瞳が冷たいと感じていた。
「ごめんね、えっと……君は誰?」
「……別に気にする必要はない」
ぶつかってしまった事を謝るとアイルは男性に名前を訊ねた。しかしアイルの問いに答える事はなく一言だけ述べて再び真っ直ぐと歩いて行った。冷たい印象を相手に与える男性の後姿を見てちょっとだけアイラは身が震えていた。
(なんだろ……あの人から少しだけ怖い感じがした)
「あんなに冷たくしなくても良いのに、偉い人って皆こうなのかな」
男性から何故か怖いというイメージを抱いてしまい深く考えてしまうアイラ。しかし、アイルは何も気づいておらずただ冷たい奴という印象しか抱いていなかった。




