第20話
いよいよ双子の冒険篇も後半を迎えます。と言ったものの全体の物語ではいまだ序章に過ぎないという阿呆なものです。
さて、今回のお話に出てくるキャラクターこそが以前言っていた○○○です!!
果たしてこの出会いが一体何を齎すのか!?一応、考えていますが決して鬱展開にはならないと自負しています。なにせ作者が鬱展開苦手ですからw
それでは!!
屋敷から異なる大地に移動した双子は今にも大地が砕けそうな戦いを垣間見た。そして、悪魔と青年が激突した瞬間に双子は再び移動し今は元の屋敷の地下部屋に立っていた。
元の場所に戻った事を確認すると双子は少し疲れたのかそのまま尻餅をついて座り込んだ。流石にあんな緊張するしかない場所に居れば疲れは溜まる。
「ホントにさっきのはなんだったんだろ」
「分からないよ……面白い事よりも怖い事にしか感じなかった」
「流石にさっきのはボクも怖かったよぉ、まるで世界の終わりみたいな感じだったもん」
怖かったと語るアイルだが今はのほほんと何時も通りのペースでいる。
逆にアイラは今でも鼓動が早く脈打っており数回深呼吸をして落ち着こうとしていた。色々と改めて考え直したい事もあるのだが兎に角、今は落ち着く事にアイラは専念していた。
数分ほどして落ち着いたアイラはアイルに話を持ちかける。
「さっきアイルのその剣と似た武器があったね」
「そうなんでボクの剣と似てたんだろ。それに、あの人は誰だったんだろ、なんだか全然分からない事ばかりだよ!! 考えても考えても答えなんて出てこないし」
「は、ははっ……」
どれだけ深く考えても全て推測の域を出ないので今にもアイルの頭はショート寸前であった。
小難しい事を長く考え続けるのは不得意なので既に放棄しておりアイラはそんなアイルを見て苦笑いを浮かべるほかなかった。しかし、考えるのを止めたくなるのもアイラ自身納得は出来ていた。
(ヒントみたいなものだと思えるけど脈絡も何もないから余計に混乱しちゃうよ……こんなの)
パズルを完成させる為のピースは貰ったが元となる板がないのでどこに当て嵌めれば良いのかアイラには分からない。だからこそアイラはアイルが考えを投げ出すのも普通だと思ってしまう。もう一つはアイラがアイルに対して極端に甘いのも理由である。
「怖かったけど面白い経験も出来たし帰ろうよ。もうボクも眠くなっちゃった」
「うん、そうだね。私も凄く眠くなってきた……」
夜通し屋敷を探索を行い疲労が少しばかり溜まったのでアイルは町に戻りたいと言葉にするとアイラも同じだったらしく快く賛同していた。
「あっ!! すっかり忘れてたけど他の荷物は全部エルネちゃんのお家に置いてたんだっ!!」
「そういえば……そうだったね。財布とか地図、許可証とか持ってきてないもんね」
ドアノブに手をかけようとした瞬間にアイルは大きな声を出して荷物をエルネ宅に置きっ放しにしていた事を思い出した。突然、立ち止まって大きな声を出したアイルに驚きつつもアイラもアイルに言われて漸く思い出した。
お化け退治に行く前に必要な物だけを用意して他の道具はエルネの家に置かしてもらっている。勿論、それを知っているのはエルネだけでエルネの母親はそれを知らないでいる。そして、それを置きっ放しにしていたことを思い出して少しだけアイラは罪悪感を抱いた。
アイルがギンタに迷惑を掛けると言っていたがアイル達双子がエルネに迷惑を掛けているからだ。エルネの事を考えると慌ててしまうアイラ。
「い、急いで戻ろ! 私達がエルネちゃんに迷惑をかけちゃう……!」
「そ、そうだね! エルネちゃん達は歩いて帰ってると思うから走ったら間に合うかな」
「わ、私そこまで速くないよ……」
急ぎたいとは思うもののアイラはそこまで速力があるわけではないので、アイルの速力に追いついていけるのか不安そうに俯いた。
双子の単純な身体能力を比較した場合、アイルとアイラの二人ではその差は大きく最近はアイルが著しい成長を果たしているので余計に並走する事が出来るのか不安そうにしていた。それを横にアイルは気にする様子もなくアイラの背を軽く叩く。
「心配しないでボクがアイラを背負って走るからきっと間に合うよ」
「私……重いよ?!」
「それはないよずっと一緒に居たんだから軽いの知ってるよ~。それにアイラってあんまりご飯食べないもん」
「あう……きつくなったら言ってね……降りるから」
「あはは、そんな気にしなくても良いよ。それじゃ行くよー!!」
そう言って鞘をアイラにかけてアイルはアイラを背負う。横抱きではアイルに低身長では前が見えずらいのでしなかった。
背負われたアイラは頬を紅潮させつつも疲れたらちゃんと報告してと言うがアイルはお構いなしに笑いながら張り切って走り出した。
※
双子が不可思議な土地で奇妙な体験をしている頃にはギンタ達は町に到着していた。
林を抜ければすぐに町なのでそこまでの道中で魔物と遭遇する事はなく無事に到着したのだが、ギンタ達はそのまま一直線に家の方に帰ろうとはしなかった。
それは両親が目くじらを立てているかもしれないと思ったからだ。素直にアイルの言うとおりに帰ったのは良いのだが説教されると考えてしまうと足が重くなっていた。
「やっぱり怒ってるよなぁ~……はぁ、まっすぐ帰りたくない」
大きな大きな溜め息をギンタは吐いて真っ直ぐ帰ろうか悩んでいた。
厳格な両親ではないにしろ子供であるギンタ達が夜中に家を抜け出して遊んでいれば当然、心配して両親は強めに怒ってしまうだろう。それだけ子供の事が大切で心配をしているのだから。
帰るか否か迷っているとギンタの名前を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
「ようやく見つけたよギンタ!!」
「げっ、母ちゃん!?」
名前を呼ばれたギンタは母親を見て少々引きつった表情をしながらゆっくりと後退をしていた。
年齢は四十代前後で遅くにギンタを産んだのだろうか体型もふっくらとしている。兎に角、ギンタの母親だけでなく父親やエルネの母親達も一緒に居て町中を探していた事が窺えた。
非常に忙しく探していたのか両親らの呼吸は不規則で髪も乱れているのだが、その乱れた髪も今はギンタ達にとっては鬼に生える角のようにしか見えず怖くて震えている。
「あ、あの……ご、ごめんな」
「おーいっ! 皆、ちゃんと無事に町に到着したみたいだねー!」
「なんだか……私達は入っていったらダメなような……」
今にも説教が始まりそうな空気の場を読めずにアイルはアイラを背負ったまま町まで戻ってきた。
アイルにおんぶしてもらっている状態のアイラは町に到着してギンタ達とその両親が集まっているのを見て、このまま戻っては余計に場を悪くするのではとアイルに言うのだがギンタ達の付近までアイルは近寄っていた。
「アイル君にアイラちゃんもこんな夜中に何をしていたの?」
「町の外れにある屋敷を見に行ってたんだ。それがどうかしたの?」
(ちょっと、素直すぎだろアイル!? もう少し嘘を吐くことを覚えようぜ!!)
エルネの母親が怒った表情をしてアイルに何処に行っていたのか問い詰められているアイルだったが特に答える事に渋る様子も見せず屋敷に行っていた事を素直に言った。さらに、夜中に行っていた事にエルネの母親は怒っているのだが、それに気づかずアイルは何故と首を傾げている。
場の空気が読めていないアイルにギンタ達は少し黙っていてほしいと頭を抱えて、素直すぎると心の中で思ってしまう。
そんな素直なアイルの発言からは悪気が全く感じられないのでエルネの母親は怒るに怒れないでいた。さらに幼いながらも旅人だとも言っていたので本来は怒る必要はないのだが、余計にアイルの言葉を聞いて怒る気力は削がれていた。
「アイル君……素直ね。なんか悪気が感じられないから余計に……」
「お母さん……その、ごめんなさい」
他の親達はアイルとアイラの事を知らないので誰の子供なのかと好奇の目で見ていた。
双子はどう贔屓目に見ても十歳にも満たない少年少女。屈強な旅人のようにも見えず、誰がどう見ても普通の町民の子供だと判断されてしまう。唯一の救いは不相応の武器を持っている事で旅人なのではないかという疑念を抱かれるぐらいだ。
「皆さん、うちのバカ息子が迷惑をすみませんねぇ、ほら皆さんにお詫びしな」
「分かってるよ……迷惑をかけてごめん」
「ごめんなさいでしょ!」
「いたっ、拳骨する必要はないだろっ」
双子の前で親子漫才をしているギンタとその母親を見ながら他の親達は苦笑いしか浮かべながら、そう気遣わないようにと言っていた。
ギンタはギンタで母親に拳骨をされたところを右手で擦っていた。
「それじゃ、夜も遅いですし帰りましょうか。家に帰ったら貴方たち説教よ!!」
「そうですね、他の方にも迷惑がかかりますし」
町中でこれ以上説教を続けても他の町民に迷惑が掛かるので母親達はそれぞれ帰宅する事となった。
ギンタ達にとっては本格的な説教の始まりなのであまり帰りたくないだろうが、逃げる事は許されず引きずられるように連れていかれた。
「それじゃエルネとアイル君達も帰るわよ」
「うん……」
「あの、勝手に外を出歩いてごめんなさい……」
ギンタ達を見送った後に残ったエルネの母親と共に双子とエルネは一緒に帰る事となった。
その途中でアイラは夜中に抜け出して屋敷に出て行った事に対して素直に謝っていた。アイラ自身も止めようと思えばお化け退治に行く事は止めれていたのだが、流れに呑まれて着いて行くことになったのは自分の失態だとも考えていた。
「いいのよ、あまりエルネは外に出ない子だから。たまにはこんな風に外で遊んできてくれると安心なの母としては」
「そうなの? アイラも山奥の村に居る時は本を読んでる事の方が多かったもんね」
「あうう……」
エルネの母親は他の親と違ってエルネが夜中に遊びに出掛けた事に対して咎める事はなかった。
それは普段から家の中に閉じ籠もってばかりで、友達と遊んだりしないのかと心配していたのだが今回ギンタ達とお化け退治に行った事で独りぼっちでない事が判明したので安心していた。そんな親心がいまいち分からないアイルは昔のアイラみたいだと呟いた。
それが事実で恥ずかしい事なのでアイラは少し俯いて顔を紅潮させていた。こう悪気が一切感じられずに言われると怒るに怒れない。とは言えアイラがアイルに対して怒るというのは皆無に等しいだろう。そもそもアイラはそういう性格でもない。
※
お化け退治を終えた翌朝、アイルとアイラの二人は門の前でエルネ達に見送られていた。
双子はそれぞれ握手して次に会う日を楽しみにしていると話していた。主にギンタはまだアイルに若干の対抗意識を持っている。
「次に会うときは俺はお前よりも凄い奴になっててやるからな!!」
「すごい楽しみにしてるよギンタくん。メルフィーくん達も元気でね」
「アイル君もね。君って怖いもの知らずだからアイラちゃんを困らせてそうだから少しは自重してあげなよ」
「そっかな~? 一応、気を付けるね」
次に会う時はアイルよりも凄い人間になっていると豪語するギンタに疑う事も知らず楽しみにしているとアイルは笑顔を向けながら伝える。そんなアイルを見ながらメルフィーはもう少しアイラの事も考えてあげてほしいと心配していた。
アイル自身に怖いものは非常に少ないので自己主張が不得意なアイラはそれに巻き込まれる形になってしまうことが多い。それを指摘されたアイルはそんなに困らせてるのかと疑問を抱きつつも気に留めておくとメルフィーに返した。
「エルネちゃん、ホントにこの本貰っても良いの?」
「うん、旅の中で見る暇はないかもしれないけど」
「星降りの夜……私の知らない本だ。ありがとエルネちゃん」
「魔物とかには気を付けてね」
「う、うん……魔物は怖いけど頑張るよ」
星降りの夜というタイトルの小説をエルネから譲ってもらったアイル。大きさは横105㎜×縦148㎜サイズで持ち運びも不便ではないのでエルネはアイラに譲った。
本を貰ったアイラは非常に嬉しそうな表情を見せてギュッと本を抱きしめる。やはり旅の中でも自分の趣味があるのは嬉しいものでアイラは感謝の気持ちで一杯だった。
「それじゃ、行こうか!」
「私も準備OK。忘れ物もないから行けるよ」
「絶対にまた遊びにこいよアイル、アイラ!!」
「ちゃんと遊びにきてねー!」
屋敷を一緒に探検したギンタ達に見送られながらアイルとアイラは手を振りながら町を出て行く。
「それにしても変な奴だったな。けど俺も負けてらんねえからな、体を鍛えまくって騎士になってやる」
「ギンタ君はホントにアイル君に感化されちゃってるよね。それに騎士ってそう簡単にはなれるものじゃないのに」
「良いんだよ、男なら夢は大きく持たなきゃ生きてる意味がない!! それに絶対になってみせる」
双子の姿が見えなくなるとギンタはアイルの事を少しだけ思い返す。雰囲気から姿まで普通の子供という第一印象、ギンタにとっては生意気な年下ではあった。しかし、一緒に屋敷の中を探検する中で普通の子供とは違う異端ぶりを見せていたアイルと一緒に過ごす中でギンタはつくづく不思議な奴だと思い知らされた。
だからこそなのか、負けたくないという思いが膨れてアイルに負けないぐらい大きくなるという気持ちがギンタの中で生まれ棋士を目指す。もっとも騎士になるには生半可な努力だけではどうにもならない、それこそ才能がなければただの歩兵どまりになるそういう職種である。だが、ギンタは絶対になってやるという意気込みでいた。
町を出た双子は小さな岩に座り地図を広げて次の場所を決めていた。
「次の目的地はコルネット王国にしよう。一ヶ月以上は掛かるけど途中には町や村も点在してるからきっと無事に到着するよ」
「でも……お金も多分、底をつくよね」
「ボク達には金銭面で頼りに出来る人が居ないからね。城下町ならギルドがあるし依頼も募ってる筈だからそれでお金を貯めようよ。ちょっと時間は掛かると思うけど、ボク達にはそれが一番だと思うんだ」
「それが一番の安全だけど冒険しなくても大丈夫なの?」
「依頼の中にもきっとワクワクするような事はあるから良いんだ。それにお金がないまま旅をして餓死したらそれこそボクは嫌だもん」
現在の最終的な目的地はコルネット王国に決まったがコルネット王国まで徒歩で目指すと一ヶ月以上は確実に掛かるので道中に点在する町や村で休みながら進む事を二人で決めて再び歩き始める。そして、コルネット王国に到着した時には財布の中が空になるとアイラは予想してどうしようか迷っていた。
それを聞いてアイルはコルネット王国に着いてからは冒険者ギルドで依頼を受注してお金を貯めようと提案した。アイルにしては割と堅実的な考えでアイラも十分賛成できるものであったがアイルの本音としては冒険をしたいのではないかと改めて聞く。すると依頼にもワクワクするような内容があると言い、無理をして餓死したくないと答えた。
「ふふっ、そっか。それならもう迷うことなんてないね」
「もっちろん!」
そうと決まれば即行動。双子は楽しくなってきたのか小走りで平原を駆けていく。
※
一般的な寝室の約三倍はあるだろう一室。そこには高級感が漂う家具がそれぞれ配置されており寝台には一人の少女が眠っていた。
炎のような真紅の髪は背に伸びるくらいで非常に整った顔立ちだが眠っている表情はまだあどけない。日差しが窓ガラスを通過して部屋に差し込む。眩しいのか少女は目を擦るが、そのままゆっくりと瞼を開けて目を覚ます。
髪と同じように赤い瞳だが今はまだ眠たそうで少しボケッとしている。しかし、少女が起きた時に丁度良く戸を叩く音が少女の耳に若い男性の礼儀正しい声が聞こえてきた。
「エレスティス様、明朝でございます。起きていらっしゃいますか?」
「ええ……起きてるわ。すぐに着替えるから絶対に開けないでよ」
真紅の髪が特徴的な少女の名前はエレスティス。このコルネット王国の第三王女で次期コルネット王国の女王となる王女である。
そんなエレスティスだがあまり元気が感じられない。寝起きという事を差し引いても気怠そうにしているのはこの城ではあまり身分的には高くないからだ。
第三王女のエレスティスが他の兄弟や姉妹を差し置いて次期女王の座に就く事が出来るのは彼女にしかない秘密があるからだ。そして、それこそが彼女が気怠そうにしている理由の一つである。
(聖なる炎……こんな力ほんとは要らない。どうして私なのよ)
右手から赤色に輝く小さな炎を発生させるとエレスティスはそれを忌々しそうに睨みつける。この炎こそ彼女が次期王女になる事を決定的なものとさせていた。しかし、エレスティスにとっては厄介ものでしかなく本来望んでなどいない力で棄てたいと何度も思った事がある。だが、そう思っても棄てる術はなく常にエレスティスに付き纏う。
そんな事を朝から考えてはエレスティスの憂鬱な日常は始まる。期待や羨望、憎悪さまざまな感情が籠められた視線を浴びながらエレスティスの一日を過ごす事となる。今となっては彼女にとっては当たり前の一日。
エレスティスがそんな何時もと変わらない憂鬱な一日が始まった頃に双子はコルネット王国に到着していた。
ファゴット王国と比べても大国と呼べるもので人々はそれぞれの一日を過ごし始めていた。市場からは既に商売が始まっており双子と同じ冒険者達が街路を行き来し、野良犬も人の間を潜り抜けては散歩をして、猫は屋根の上で小さな欠伸をかきながら日に当たっていた。
「うわあああ! こんなに大きな国なんだコルネット王国って」
「ふええっ、人が多いし私達と同じ冒険者もたくさんだ」
二度目の城下町だがファゴット王国と比較してもその大きさは随一で王様の政治手腕が良く分かるものであった。そして、ここは星天のエルトリアでも舞台となった地でありエレスティスが持つ聖なる炎も関係する特別な国。
双子の運命はエレスティスの運命はここから、このコルネット王国から大きく動き出す事となる――
双子とエレスティス、それは絶対的な運命の出会い。




