第16話
ぐだぐだと話が続きます。こうホラー感を出したいけど全然無理だ。
ちなみに双天のステルラは冒険ものですけど、冒険ってなんだろうなぁ。単に旅をしているなら漫遊記といったところでしょうか。
なんか冒険というより旅をしている感じしか出てないんですけど。
それでは16話始まります。
人形を操作して語り掛けてきた声の元へと向かう為に屋敷の探索を始めたアイル達。部屋一つ一つを開けては室内を探し続けるが特に変わったものはなく書斎に屯って隠し通路がないか探索していた。とはいえ本棚は子供が動かすのには少々重たいのでギンタやメルフィーはへたり込んで、持ってきた軽食、パン生地を薄く延ばし、バターを塗りこみ何重にも重ねて作られたデニッシュを頬張っていた。
胡坐をかいてデニッシュを食べながらギンタが一人で本棚を動かしているアイルに声を掛ける。大人よりも大きな本棚を横にスライドさせるのは大人一人でも大変な作業なのだが、アイルは特に疲れた様子も見せずに動かしていた。
「ほんとにお前って変だよな。こんな大きいの動かしてきつくないのかよ」
「別に重たいとは思わないよ。そういえばなんでボクは重いのを普通に動かせるんだろ、体力には結構自信はあるんだけど」
「お前ってほんとに不思議な奴だなー」
「あはは、そんなことはないよ。どこにでもいる普通の子供だと思うよ」
休まずに動き続けるアイルを見て疲れないのかと休憩しているギンタが問うと、疲れた様子も見せずアイルは本棚を横にスライドさせていた。アイルは重たくないとギンタに答えると重たいのを普通に動かせている事にアイル自身疑問を抱いていた。確かに周囲の者達と比べても力はある方だったと昔を振り返る。流石に天井にも届きそうな本棚一杯に詰めてある本を一緒に本棚ごと動かすのは大人一人でも難しい上に体力を浪費するのからこそアイルも自分で驚いているのだ。
そんな軽々と動かせるアイルを不思議な奴だと言うとアイルは謙遜しているの軽く笑い普通の子供だと返した。
(確かに変だよ。旅を始めてからアイルの身体能力が著しく成長してるような気がする……)
エルネと一緒に休憩していたアイラはアイルとギンタの会話を聞きながら確かに不自然だと思ってしまった。特にギンタ達と違いアイルと共に育ってきたアイラからすれば著しい成長速度だと感じられた。そんな事を考えながらアイルに視線を送っていたのでエルネから声を掛けられている事に気づいていない。
「アイラちゃん……アイラちゃん……」
「えっ、あ、ボーっとしてたね。どうしたのエルネちゃん?」
数回名前を呼ばれて漸く気づいた。何度も呼ばれていたのでどうしたのかをエルネに問うと少し恥ずかしそうにしながらエルネは口を開いた。
「あの……アイラちゃんはアイルくんの事が好きなの……?」
「ふえ……? どうして?」
「だって、ずっとアイルくんの事ばかり見てるから」
「そ、そんなに見てるかな……?」
「私が見た限りではだけど」
それはアイルの事をどう思っているのかについてだった。エルネ曰く常にアイルへと視線を向けていると言い、アイラは頬を紅潮させつつ首を傾げてしまう。アイラからすればそれ程見ていないと感じているのだろう。
確かに以前からアイルに対してアイラは好意を抱いてはいるがあくまでも家族の情みたいなもので、異性としての好意とは違う。
「やっぱりなーいっ! あの声の元に行きたいのに隠し通路とか全然見当たらないよー!!」
一生懸命に隠し通路などを探していたのだが全く見つからないので諦めかけていた。
流石にこれ以上は同じ部屋で探索をしても仕方がないのでアイルは本棚を動かす作業を止めて床に寝転び、ごろごろと転がり始めた。しかし、部屋は埃が積もっていたりするので非常に汚く埃が舞ったりしてアイルは咳き込んでいた。
「けほけほっ! 埃がすごいねほんとに」
埃だらけの床を汚いと思いつつも手で触ってみるアイル。床に触れて離し掌を見ると灰色っぽくなっておりアイルは立ち上がって書斎から出て行こうとする。
「ちょっと手を洗ってくるね。ついでに服についた埃も叩いてくるね」
「「「絶対にダメ!! 君まで居なくなったら頼れる人が居なくなるじゃん!!」」」
「み、皆揃って言わないでよ~。別に手を洗いに行くだけだからすぐに戻ってくるよ」
手を洗ってくると伝えて出て行こうとするとメルフィーや少女たちが必死に引き止められた。腕をつかまれて止められたアイルは困った表情を浮かべながら手を洗いに行くだけだと再び説明するが、それでもアイルの腕を放そうとはしなかった。
「で、でもギンタくんじゃ頼りないんだもん!」
「ひでえ! 俺は別に怖がってなんかねえんだぞ!」
「屋敷の部屋を開けるの全部アイルくんだった気がするけど?」
「うっ……!」
「ほーら、言い返せないじゃない!」
「今なら行けそうだよねー」
このお化け退治の発案者兼リーダー格のギンタが怖くて震えているので頼りないと発言する少女にギンタは噛みつく。怖がっていないと強めの区長で反論するが部屋を開けていたのは全てアイルだったと少女が言い返し、ギンタは言葉に詰まってしまう。
再び始まった口喧嘩を横に手を洗いに行きたいだけのアイルは置いてけぼりをくらいその場からこっそりと抜け出そうと忍び足でその場から離れた。案の定、口喧嘩に夢中でアイルが部屋を出た事に気づく事はなく喧嘩を続けた。
「あ~あ、お化けなんて全然出ないし期待外れだよ~」
あれから一向に変化がなくアイルは非常に落胆していた。ポルターガイストでも起きるのではないかと大きな期待を膨らませていたが、人形が一度だけ喋っただけで怪奇な現象が発生する事はなかった。
※
埃で汚れた手を洗う為にアイルはギンタらの口喧嘩の合間に書斎から抜け出した。しかし、ギンタと少女達の口喧嘩は収まるどころか酷くなっていた。
「だったら着いて来なかったら良かっただろ! 俺のせいにすんなよ!!」
「なによっ、ギンタくんがそもそもエルネを苛めるために提案したことでしょ!」
「それは皆も賛成したことだろ。俺だけのせいにすんなよっ!」
(むうっ……それを本人の前で言うことなのかな。それに苛めるってやっぱりそれが目的だったんだ……。え、エルネちゃん泣きそう……ど、どうすればいいのこういう時って!?)
エルネを苛める為だと勢いに任せて口にした事をギンタらは気付いておらず横で不毛な口喧嘩を傍観していたアイラは心中で珍しく憤りを覚えていた。アイラの横ではギンタらの本音を聞いていたエルネは今にも泣きそうな表情で下を向いており、アイラはそれに気づき思いあぐねる。
アイルならば何も深く考えずに何かを言うのだがアイルのように能天気かつ楽観的な性格ではないアイラにとって至難の壁でもあった。
「エルネちゃん……そのギンタ君たちが言ってることは気にしたらダメだよ?」
「だ、大丈夫だよ……知ってたから……」
本音を暴露されたエルネの事が心配なアイラは慰めの言葉をかけるが哀しそうな表情を見せながらも知っていたと小さな声で呟いた。卑屈な性格で知っていたというエルネにアイラは余計に言葉を掛けることが出来なかった。
「エルネちゃん……あっ!」
それでも励まそうと声を掛けようとした時、書斎に置かれているランプに灯っている火が消えた。
再び暗闇の部屋という状況に口喧嘩を続けていたギンタらもピタリと止まった。林の中に建っている事もあって余計に暗い。
「な、なんでまた急に暗くなるんだよ!」
「そんなの知らないよ!」
「くすくすっ、まだ僕の事見つけられないの? ヒントあげるよこのお屋敷には地下に繋がる隠し通路があるんだよ~、なんたってここはエルトリア所縁の地でもあるんだから」
「また、何処からか声が……幻聴だ幻聴!」
どこからともなく人形を通して話しかけてきた子供っぽい声が再び聞こえてきた。暗闇の中で声だけしか聞こえないので声が震えている子供たち。ギンタは聞こえてくる声は幻聴だと両耳を両手で押さえながら自分自身に言い聞かせていた。
「おーい、立派な剣を持ってる割には怖がりな奴~。聞いてるの~?」
「ひいいいっ……どうして俺に……」
声の主からはギンタらの姿はハッキリと見えているらしく怖がっているギンタを小馬鹿にしていた。
既に言い返す勇気さえ削がれているギンタはメルフィーに抱きついて震えていた。
「それじゃ、がんばってきてねー。僕に会うまでは絶対に玄関の扉は開けてあげないから」
(消えちゃった……。けど、エルトリア所縁の地ってエルトリアは小説じゃないのかな。もしかしてその原作者の家だったとか、かな……後世にこれだけ伝わっているならお金持ちでも変じゃないもん)
棒読みで応援してくる謎の声と共に再び火が灯り書斎は明るくなった。単にヒントだけを教えにきただけなのだろうか、特に誰かが消えるような恐怖体験があったわけでもなかったのでアイラは漸く暗くなったりするの事だけには慣れてきていた。
慣れたこともあってかアイラはふと考え事をしていた。最近、知った星天のエルトリアという物語でその主人公である名前を聞き、なぜ創作されたキャラクターの所縁の地なのかと様々な予想をたてていた。
「ど、どうするんだよ!! ってアイツいねえし!!」
平常心を徐々に取り戻してきたギンタはアイルに次の行動を問いかけたが居ない事に気づくこととなった。
「お、俺には立派な剣があるんだ! この剣でお化けを退治してやる!」
アイルは居ないがアイルから借りていた剣がある事を思い出したギンタは抜こうと柄を右手で握る。
しかし、抜こうと握る力を強めるが抜ける気配はなくギンタは驚きを隠せずにいた。
「ど、どうして抜けないんだよこの剣!!」
「そんなわけないでしょ! 私だって剣を抜くことぐらいできるよ!!」
剣が抜けないと喚くギンタを見ながら少女があり得ないと言いたげな表情で近づき剣を抜こうとする。
さすがに訓練を続けていない少女が剣を降り続ける事は出来なくとも、抜くだけならば簡単だ。しかし、抜けない。
「うぐぐっ! なによこれ、ホントに剣なの!?」
「そ、それ……アイルにしか抜けないんだよ。大人が何人も挑戦したけど一度も抜けたことがないから」
どれだけ必死に抜こうとしても微動だにしない。それを見てアイラがおどおどと言いながら大人でもその剣を抜くことは出来ないと伝えるとギンタは非常に落ち込んでいた。
「じゃ、じゃあ……アイルくんのお姉ちゃんのアイラちゃんなら抜けるんじゃ……」
「ううん、私も抜けないよ。この剣はアイルにしか抜けないみたいだもん」
何故なのかその根拠まではアイラにも分からないが大人でも抜けない事に違和感を覚えた事はあったが、アイラも子供であるので英雄譚などの特別な存在か何かという独自の結論に至り深くは考えた事はない。
「あれ、なんでそんなに落ち込んでるのギンタくん」
「剣が抜けなくてその……落ち込んでるみたいなの」
「それってボクのせいだね、きちんと抜けないことを説明してなかったから」
手を洗って戻ってきたアイルは落ち込んで座り込んでいるギンタの事を気にする。
なぜ落ち込んでいるのかとアイラに視線を送り原因を求めるアイル。視線の理由に気づいたアイラはアイルの隣まで近づいてアイルの耳元で落ち込んでいる理由を教えると、自分のせいだとアイルは思い落ち込んで体操座りのギンタの右肩を右手で軽く二度叩く。
「ギンタくん、ボクがちゃんと教えなかったら傷つけちゃったね。ごめんよ」
「ああ、アイルか。俺は気にしてないから謝らなくていい」
「そう? 気にしてないんだったら別にいいんだけどさ」
申し訳なさそうにしながらギンタに謝罪するとギンタはぶっきらぼうに返事を返した。
普通の人間なら本当は気にしているのではないかや本気で落ち込んでいるのではないかと余計に罪悪感にかられてしまうのだがアイルは寧ろそれで安心していた。
「そんなことよりもアイル君、さっきまた人形の声がしたんだけどアイル君は手を洗いに行っている間に聞かなかった?」
「ええーっ!? ボクが居ない時にそんなことがあったなんて……ボクだけ仲間外れじゃんか……」
落ち込んでいるギンタの事など横に置いてアイルに人形の声を聞かなかったかとメルフィーが問いかけるとアイルは驚きそして項垂れた。何せ自分が手を洗いに行っている間に再び出てきたのだからアイルからすれば仲間外れにされたようにもとれるからだ。アイラ達からすれば変わってほしかっただろうが。
「それで地下に繋がる場所がこの屋敷にあるみたいなんだけど君は探しに行くのかい?」
「そんなの当り前でしょ。地下ってことは二階じゃなくて一階の部屋の何処かなんだね!!」
「ああ、やっぱりなんだね」
いきさつをメルフィーから詳しく教えてもらい地下室を探しに行くのか問われると何の迷いもなくアイルは頷き肯定した。メルフィーもそろそろアイルの性格を掴んできたのか素直に受け入れることが出来ていた。




