第14話
一週間ぶりの更新です。
色々と仕事に切羽詰まった状態で中々更新出来ませんでした。やっぱり働くというのは大変ですね、心がどんどんすり減っている様な気がします。
それでも完結するまでは諦めませんけど(何が
それでは14話もお願いします。
自信満々で屈託のない笑顔を向けてギンタを見上げるアイルとそんなアイルを憎たらしく睨みつけるギンタ。身長はギンタの方がかなり高くアイルが低身長だというのが余計にハッキリと分かる。今にも喧嘩に発展しそうなアイルとギンタの二人をエルネはおろおろとしながら見守っていた。
「お前、チビの癖に生意気だぞ!!」
「確かに小さいけどボクの方が君より何倍も強いけどね」
「なんだとぉっ!? どうしてチビのお前が俺より強いんだよ!!」
「お爺ちゃんから強くなる様に鍛えてもらったもん」
確かにアイルは他の子供と比べても異常に強いのだが、どうにもその雰囲気はアイルから感じられない。元々、グランから数年程稽古を受けただけで騎士エルドークのように長きに渡って培われた経験や熟練の風格が乏しいのが欠点だろう。
「だったらお化け退治の時に見せてもらおうじゃねえか!!」
「え、別に良いよ」
「うっ……」
「それで何処に集まれば良いの? 僕とアイラはこの町に来たばっかりだから全然分からないんだ」
お化け退治の時に実力を見てやるとギンタからつきつけられたアイルは特に焦りなどを見せる事なく構わないと返事を返した。自分のペースを全く崩さずアイルが言い返してくるのでギンタは逆に言葉に詰まってしまう。
言葉に詰まっているギンタを見上げながらアイルがお化け退治の集合時間や場所を質問した。お化け退治と言っているぐらいなので、アイルでも深夜帯なのだろうと時間帯は予想は出来るものの場所までは分からない。
「月が昇る頃に町から林へ出る門に集合だからな! 場所はエルネが知ってるよ」
「そっか、それならボク達も戻るね!! ばいばーい」
集合時間と場所をギンタから指定されるとアイルはお化け退治の事を考えながら嬉しそうにしていた。アイルの胸は躍っており早く深夜帯になる事を願っていた。
「お前ら俺達も行こうぜ。絶対にあのチビにひと泡吹かせてやる」
「な、なんかエルネの事を忘れてないかなギンタくん?」
「たぶん、今はあの子の事で頭一杯だよね」
(う~ん……なんだろう私、肝心な事を忘れてる…ような)
お化け退治の目的は元々、エルネを苛める為にギンタが考案したのだがアイルとアイラの登場でそれを忘れていた。だが、今はアイルの事で頭がいっぱいになっており、エルネの事など頭の隅っこに追いやっているぐらいだ。それを他の子供達は見破っており、やや呆れているがアイラはいまだに自分が何か大切な事を忘れているような気がしてならないのか必死に頭を悩ませていた。
そんな三者三様の反応を見ながら当事者である筈のエルネはまるで無関係のようにそれぞれを黙って見続けていた。と言うよりもエルネはあまり自分の意思表出は得意ではないので、その場の流れに流されたり誰かに決めてもらったりしている。
「アイラ、エルネ行こうよ。買い物もし終わってないでしょ?」
「あ、待ってよアイル」
「う、うん……」
ギンタ達数名も市場から離れて何処へと歩いて行ったのでアイルは買い物の続きをしようと誘う。
基本的に自由奔放に動くアイルをアイラとエルネは戸惑いつつも追い掛けて行く。その後、夕飯の食材を吟味して帰り、双子は再びエルネの部屋に集まりお化け退治の事を話していた。
「エルネちゃん、なんでお化け退治なんて話になってるの……?」
「この町の林を越えた所に大きな屋敷があるの。だけど不気味な場所だから大人も中を調べようとは…しなくて…それで度胸試しみたいな話に」
「でも何でそんな場所に一人だけなんて言ったの」
「何時も――私一人で家に籠もってて友達……いないから」
元々、人と接するのが苦手で家に閉じ籠もってばかりで友達が居ない事も原因の一つだとエルネ自身が双子に話す。それを聞けば聞く度にアイラは昔の自分のようで耳を塞ぎたくなった。いや、昔というよりも今もエルネのように人見知りする時が多々あるので耳を塞ぎたくなった。
「だけどボク達と話してる時は普通だよね」
「二人はなんだか……とても話しやすい感じがするから」
「そうなの? 自分じゃよく分からないもんそういうのって」
エルネから話しやすいと言われたアイルは疑問符を浮かべてしまう。なにせアイル自身が相手から話しかけやすい雰囲気作りを心掛けているわけではないからだが、やはり持って生まれた雰囲気がそうなのだろう。
「やっぱりアイルくんは……行くの?」
「もっちろん!! お化け退治だなんてワクワクするじゃん!!」
「そ、そんなにかなぁ……」
少しの間、黙り込んでいたエルネだがアイルに再度お化け退治へ本当に行くのかを確認する。確認されたアイルは非常に嬉しそうな表情で目をきらきらと輝かせながら強く肯定した。アイルとは逆にエルネはワクワクするどころか怖いという気持ちの方が圧倒的に強く完全に気が滅入っている。
「早く夜中になってほしいな~」
そんなエルネの心情とは裏腹にアイルは夜が更けて欲しいと願っていた。
それぞれが全く異なる心境のまま時は経ち双子とエルネは、エルネの母親に気付かれない様に忍び足で集合場所まで出掛ける。当然、アイルとアイラの二人は自分達の武器を持って来ている。流石に他人の家に放置するわけにはいかない上に、お化けに襲われても良い様に念の為に用意している。
「逃げずにきたなチビ。それよりも何にも準備していないのかよ」
「チビじゃないよアイルだよ。それよりも君こそなにその格好」
林の方に出る門の前には市場に出会ったギンタ含む少年少女が既に集合しており、ギンタはアイルの姿を見つけるとすぐに突っ掛かって来た。チビではなくアイルだと自分の名前を訂正させようとするがギンタの姿を見てつい聞いてしまった。
兜代わりに両手鍋を頭に被っており少し大きめのフライパンとお鍋の蓋を用意しており、アイルはつい自分の目を疑ってしまった。何故、包丁とかにしなかったのだろうかと不思議に思いながらギンタの恰好を見ていた。
「ブーメランとか持ってくれば良かったのにギンタくん」
アイルとアイラがギンタの格好に保たれていると眼鏡とそばかすが特徴的な少年が別の武器の方が良かったのではないかと声を掛けてきた。身長はアイルよりも高いがギンタに比べれば低く目付きも少し鋭く感じるが特にアイルは気にせずにいた。
「それよりもお前のそれ剣かよ。なんでそんな凄そうな物を持ってるんだよ!!」
「なんでって言われてもずっと前から持ってたからなんだけど」
「ちょっと貸せよ、お前には勿体ないから俺が使ってやるよ!」
「あっ、急にしないでよ!」
自分はフライパンでアイルは本物の剣という違いにギンタは悔しく思い、無理矢理にアイルの剣を奪おうとする。剣を奪おうとする手にアイルは反射的に払いのけて、怒った口調でギンタの事を咎める。
物心ついた時から常に一緒にあった武器なので使い始めて間もないが何故か特別な思い入れがあり、それを無理矢理奪われるのはアイルにとって非常に癪に障る行為であった。声色以上に一瞬だけ見せた気迫にギンタは怖かったのか身が震えて素直に謝った。
「ご、ごめん」
「貸してほしいならちゃんと言ってくれれば僕は貸すよ?」
そう言って鞘に戻した状態でアイルはギンタに手渡す。それを受け取ったギンタは初めて見る本物の剣に若干興奮していた。
「こんな騎士だって持ってなさそうな剣を持てる日が来るなんて。まるで勇者にでもなった気分だぜ!!」
「なんか興奮してるけど、皆は剣とか持ってないの?」
興奮しているギンタを見ながらアイルが他の少年少女に剣を持った事がないのかと質問した。アイルは木刀を使用してグランから特訓を受けていたのでそれが当然だと思っているのだが、ギンタの反応を見てアイル的には不思議に思う所だったのだろう。アイルからそんな質問されると眼鏡をかけた少年がアイルの問いに答える。
「普通は持ってないでしょ。そりゃ、兵士を志願したり旅人になりた人は大きくなって自分で買うと思うけど」
「そうなんだ、それじゃあギンタは勇者になりたいのかな?」
「それは知らないけど……」
ギンタと比べ比較的に他の少年少女はアイルに対して退ける理由はないので普通に接していた。
市場の時にいたガキ大将のギンタと違い純粋に勇者に憧れる少年といった感じがアイルやアイラから見てとれた。
「勇者ってエルトリアみたいなの……かな」
「多分――だけど」
アイラとエルネが知っている勇者はエルトリアぐらいだ。もっともアイラはエルトリアに関してお化け退治前にエルネから聞いた程度の知識ではあるが、少年少女達の中では憧れの存在だと押してもらっていたのでその名前を口にした。
(エルトリアは眉目秀麗な好青年だって設定だからギンタくんには似合わないような……)
エルトリアというキャラクターの設定では美形だった事を思い出しながらアイラはギンタの顔や体型を見ていた。他の同年代と比べて体も一回り大きい事もあって力が強そうで見た目だけならばアイルに比べて喧嘩も強いのだろうとアイラは思えたが、やはり美形とはいうにはどう贔屓目に見ても首を傾げたくなるものであった。
「それじゃ、全員集まった事だし俺様に続けよ!!」
(なんか凄い嬉しそうだしまだ返して貰もらわなくても良いかな。でも、抜けないって分かった時どうするんだろ)
アイルの代わりにギンタが剣を携えたまま目的の場所まで先導する。剣を返してもらおうと思っていたが嬉しそうなギンタの姿を見てアイルは今は大丈夫だと思いながら後に続く事にしたのだが、剣が抜けないと分かったらどうするのだろうかとギンタの反応に興味を抱きながら後に続いた。
「ギンタくん、気分がハイになってるよね。ホントに男の子ってお子ちゃまよね~」
「うんうん、あんなにはしゃいで」
スキップしているギンタを見ながら他の少女達は子供だと言葉にしながらも後に続いてきていた。
「ねえ、アイル。こんなに人数多くて大丈夫なの…?」
「別に良いんじゃないの? だって別に危ない目に遭うわけじゃないんだから」
「もう、アイルは楽観的なんだから……」
双子とエルネそしてギンタを除いても四人の少年少女がお化け退治に同行している。正直、アイラはこんな人数で本当に大丈夫なのかと心配していた。今から行く屋敷がどういった建物なのか情報がないのでアイラは不安で不安で仕方がなかったのだが相変わらず楽観的なアイルの意見を聞いて小さく呆れ半分が籠もった溜め息を小さく吐いた。




