第12話
基本的に物語の序盤は双子だけでの冒険が主体になりますが、その内仲間キャラクターは登場すると思います。一応、双子はこの物語の主人公ですがもう一人準主人公が登場します。あ、今回登場する人物ではございませんしまだその準主人公は登場しません。
それにしても文章がところどころ変な気がしますね。もっと文章を綺麗に書く事が出来れば良いんですけど。
小川のせせらぎを聞きながら双子は石の橋を歩いている。関所はハヴァン王から貰う事が出来た許可証を見せて兵士から通してもらえたが最初は疑われていた。双子はすぐに橋を渡る事はなく橋の上から川を見下ろしては小魚が泳いでいるのを見ていた。
「川沿いに進んだらどうなるの?」
「この川は海に繋がってるんだよ。関所を越えたらコルネット国領で港町があるから、そこから船に乗って大陸の外にも行けるの」
「海かー、ボクはまだ見たことがないなぁ。森の中の川や湖は見た事があるけど、すっごい広いんだろうね!!」
「うんっ、まだまだ知らない事が沢山あるもんね」
十数分ほど橋から川を眺め終えると双子は再び歩き始める。
橋を渡り終えるとそこは別の国の支配下にあり双子は何故か全身が震えた。理由は双子にも分からないが決して悪い意味ではなく、寧ろ――
「なんだかすごいワクワクするね!!」
「私もちょっとドキドキしてる……」
未知なる事への期待と不安が混ざり合っていた。知らない土地を足で踏みしめているという事に感激もしていた。
「えっと…次の町まで結構距離があるみたいだね」
「野宿になるのかな布ぐらいしか持ってきてないけど大丈夫…?」
「一緒に包まったら温かくなるから大丈夫だよ!」
関所を抜けて半日で人里に到着する事は難しいとアイルがぼやくと、野宿になるんだとアイラは考えていた。しかしテントなど持って旅をしているわけではないので夜は大丈夫なのかと不安を抱いてはいたが、布を一緒に包まれば問題ないとアイルが笑顔でそう言うのでアイラも気にする事はなかった。
近くの町に立ち寄る事を決めた双子は談笑しながら道なりに歩いて行く。途中で青く透き通ったゲル状の魔物が三体程出現して双子は戦う事になったが既に双子の敵ではなくアッサリと退ける事が出来た。もっとも最初はゲル状という少々気持ち悪い体の性質に鳥肌が立って戦おうとはしなかった。その後も特に変わりはなく日もすっかり暮れて双子は、岩場近くで野宿をする事にした。平原だと魔物に狙われやすいので隠れる場所のある岩場にしたのだ。
「火がつくと良いんだけどな~」
道に落ちていた木を幾つか集めフリントと呼ばれる発火に適した石と石を擦り合わせ火を起こそうとアイルは試みていた。やはり夜は肌寒くなるので焚火をする事がベストである。さらに獣は火に弱いという弱点があるのも焚火をする理由の一つ。
何度か石を打っていると火がついてアイルは枯れ木が集まった所に点けた。初めて火を起こせた事もあって地味にアイルは感動している。
「見て見て、火を点ける事が出来たんだよ!!」
「ほんとだ! お婆ちゃんが言ってた事はホントだったんだね」
「うん、石なんかで火が点くなんて嘘だと思ってたもん」
以前マーザから火の起こした方を教わっていたのだが双子は半信半疑であった。しかし、今回初めて火を起こす事が出来たので嘘じゃなかったんだと実感していた。
「ねえアイルはもう体痛くないの? 打撲とか酷かったよ」
「もう痛くないよ。それに傷だって塞がってるもん」
「え…嘘は駄目だよ。いくらなんでもそんなに早く……」
栗やスープを作りながらアイラはアイルの体の調子を確認する。死傷とまではいかないが至る所に打撲があり糸で縫わなければならない傷もあったとエルドークから聞いたアイラはアイルの体が非常に心配だった。アイルは既に傷は塞がったと言いながら右袖を捲ってアイラに腕を見せる。しかし、かなり酷い傷だったのでそんなに早く治るわけないと思い腕を見ると、既に擦り傷だった部分は塞がっておりアイラは目を疑いアイルを凝視する。
「わーわーっ! きゅ、急に何するんだよアイラ!」
「傷がこんなに早く癒えるなんて…あり得ないよ」
突然アイルの上着を無理矢理脱がし始めたアイラにアイルは非常に戸惑う。上着を脱がしたのは体の傷を見る為で半日程しか経っていないにも関わらず完治が早い事にアイラは腑に落ちなかった。傷が塞がりつつあったのならばまだ良いそれも奇妙ではあるが傷が殆ど完治している事に比べればずっと可笑しくはない。
上半身の傷も包帯を解けば傷は癒えており糸を縫った部分も関係無しに傷が塞がっており、アイラは傷が塞がっている部分を優しく触れる。
「ど、どういう事…なの?」
「ひうっ…くすぐったいよアイラ」
「あ、ごめんねアイル」
(傷がほとんど完治してた。大人でも安静してないといけないぐらいだったのに……。昔から怪我や病気にも強かったのは知ってたけど)
流石に体を優しく撫でるように触られるとむず痒いのかアイルはちょっぽり顔を赤くして俯いていた。そんなアイルに気付いたアイラは小さく頭を下げて謝りながら、心中では異常な回復力の高さについて深く考え込んでいた。物心ついた頃からグランとマーザの老夫婦と生活している時も病気にも強い事はアイラも知っていたが、旅を初めてからそれがより高くなっていると思った。
「急にどうしたのさ。アイラだって擦り傷とかもう癒えてるのに」
「わ、私も…なの? どうしてこんなに傷の治りが早くなってるのかな?」
「さあ? 酷くなってるわけじゃないから深く考える必要ないと思うけど」
傷が癒えていると不審に思っているアイラにアイルはアイラも同じだと伝える。アイルに比べると距離をとって戦っていたので擦り傷程度ではあったが瘡蓋を越えて傷が癒えているのでアイラは不覚にも自分の腕を見る。転倒して切った部分が綺麗に塞がっていて、アイラは自分の目を疑った。
「これもやっぱり私達が生まれてきた意味となにか関係があるのかな……?」
「う~んっ、それって夢の中で言われた事だよね」
「そうだよ。覚えていたんだねアイル」
異常な回復力は生まれてきた意味と関係性があるのだろうかと推測するアイラを横にアイルは腕を組んで首を傾げる事しか出来なかった。マーザが亡くなった日の夜に見た不思議な夢に出てきた女性からのお告げの事など既に頭の隅っこの方に残っているぐらいだアイルの中では。寧ろ覚えていた事にアイラは若干の驚きを見せていた。
覚えていた事に驚かれたアイルは心外そうに頬を膨らませていた。
「ボクだって覚えてるよ失敬だな」
「じょ、冗談だよアイル。それじゃ、そろそろ寝ようよ」
「うん、そうしようか。明日も早めに起きないと野宿しないといけなくなるもん」
苦笑いしつつ謝りながら寝る事を勧めると意見が同じだったらしく同意した。
二人で大きめの布を使用して皮袋を枕代わりにして双子は一時の休息をとる。岩場を上手く利用しているので魔物に気付かれる事は格段に少ないが、やはり場所が場所なのであまり寝付けないのもあった。それでも四時間弱は眠れたので双子はまだ明るくならない内から片付けを行い、町の方へと歩き始めた。関所から次の町までは距離があるらしく双子は一日約十五時間程歩き続け四日の月日が経った。
空は灰色の曇り空で雨が降っており双子は雨に濡れながらも歩き続けていた。髪の毛や皮袋からも雫が垂れ落ちて双子は少し疲れていた。今まで寝台で寝ていたのだが慣れない野宿を四日間続けていたので仕方ないだろう、寝ても完全に疲れがとれるわけではないのだから。
「旅って…大変だね。雨も土砂降りだし」
「うん……」
歩き続けて足に疲労が溜まって痛み始め空腹にも襲われているアイルは何時ものような元気が感じられないが、アイラに至っては殆ど言葉を話す元気すら見えなかった。元々、アイルと比べてアイラは体力があるほうではないが、ここにきて漸く旅の厳しさを身に沁みてきた。
「けど…村は目の前だから後少しがんばろ」
「がんばる……」
魔物と遭遇しながらも四日間歩き続けた事もあり町は既に目と鼻の先。後少しでゆっくりと休息をとれると思えると双子はもう少し頑張ろうという気になり歩き続ける。
関所を通過する旅人によって栄えた町なだけあってそれなりに大きく人の数も多いが、雨が酷い事もあってあまり外に出ていない。外を出歩いているのは仕事をしている大人や双子と同じ旅人ぐらいである。双子は町に着くと屋根のある家の壁に寄り掛かって座り込んだ。
「「すぴー…」」
壁に寄り掛かって座ると双子は仲良く寄り添いながら小さな寝息をたてて眠った。
知人でもない家に寄り掛かって双子が寝ていると扉が開き双子と同年代ぐらいの少女が洋傘を差して外に出てきたが、壁に寄り掛かっている双子を見付け黙って見ていた。
「ど、どうしてこんな所に寝てるんだろ? それに私と同じぐらいだし…おかーさんっ、外で知らない子が眠ってるよー」
どうしたら良いのか判断に迷った少女は母親に今の状況を知らせる為に家に戻った。
※
「ぅ…ぅ~ん……ここは何処なんだろ」
目が覚めたアイルは見慣れない天井を見て疑問を抱いていた。冷えていた体も今は温もりが感じられたが、それ以上に腕が動かしづらく布団を剥ぐとそこにはアイルの腕を抱き締めて眠っているアイラがいた。
「アイラ、起きてよ」
「ふにゅっ…どうしたのアイル……」
「知らない場所に居るみたいだよボク達」
「……ホントだ。でも、危ない場所じゃないみたいだね」
寝ているアイラを優しく揺らして起こすとアイラは静かに瞼を開き上半身だけを起こす。歩き続けていた疲れが非常に溜まっていたのかいまだ意識は覚醒し切っていないが、周囲を見渡している内にアイラの意識は目覚めていく。
使用されていない部屋みたいだが掃除は隅々まで行き届いている。今だ雨は降り続いており窓は閉められているが部屋を見る限り何者かに攫われたわけではないとアイラは一先ず安堵した。何故、自分達は室内、しかもベッドの上で寝ていたのだろうかと不思議に思っていると部屋の扉がゆっくりと開いた。ひょっこりと扉の隙間から顔を見せる少女に双子はお互いに首を傾げながら、顔だけを見せる少女へと視線を向けてアイルが口を開く。
「君はだれ? もしかして君がボク達をベッドに運んでくれたの?」
「えっ…あ、うん。二人とも雨が降っているのに外で寝てたから…何でかなって思って」
恥ずかしそうに言葉を紡ぐ少女などお構いなしに笑顔でお礼を言うアイルと少女と同じ様に少し戸惑いながらお礼を述べるアイラ。
「そうなんだ、ベッドで眠らせてくれてありがとう。おかげで凄い体が楽になったよ!!」
「あの…ありがとうございます」
「気にしないで。あのお母さんが呼んでたから一緒に来てくれると…嬉しいんだけど」
「勿論だよ。なんだか久しぶりに熟睡した気分だったよね!!」
「うん、岩場じゃ熟睡できなかったもんね」
少女は双子を起こしに来たらしく少女の母親が呼んでいると伝言すると双子は起床し少女と一緒に部屋から出た。少女と双子との間には一定の距離が開いておりアイルが近付けば少女が離れるという動作が見られる。
「ねえねえ、君はなんていうの? ボクはアイルで隣が僕のお姉ちゃんのアイラだよ」
「アイラだよ。あの、宜しくね」
少女の名前が分からないのでアイルは名を聞く事に躊躇う事なく質問し自分とアイラの名前を先に教えた。アイラもまた少女と同じ様に人見知りの部分があるので少し声量が小さいが距離的には充分聞こえる。にこにこと表裏のない笑顔で手を差し伸ばすアイルに少女は少々戸惑い手を差しだそうとするが引っ込めたりとしていたが、アイルへと手を伸ばして握手を交わし自分の名前を双子に教える。
「私は…エルネ」
「エルネだね宜しく!」
「宜しく…エルネ」
「う、うん」
(背恰好は似てるけど…性格は違うんだ。あ、少しアイル君の方が背は低いんだね)
笑顔で元気良く挨拶するアイルと自分と同じような性格のアイラに少女エルネは戸惑いつつも小さく頷いた。口数よりも心の声の方が圧倒的に多いエルネはアイルとアイラの相違点について考えていた。




