第10話
やはり今回も微妙な回です。
戦闘描写だけでなく心理描写も苦手って最悪のコラボレーションな私の作品。双天のステルラも今回で10話に突入しました。多分、戦闘描写はあまり長々しく書く事はしませんね。
どうすれば描写が上手くなるのか勉強しないといけませんね。書いてて強く思っていました。
それでは第10話です。
気持ち悪いを最大限に醸し出す眼前にいる巨大な蜘蛛。盗賊に囲まれた時以上に身の危険を感じた双子はその場から忍び足で離れようとするも小枝を踏んでしまい蜘蛛に気付かれ八本の内の一本の脚を双子の方へと突き立て勢い良く下ろした。
「ぎゃあああっ!」
「地面に穴が出来るなんて……」
「くそぉっ、逃げれないのなら退治してやる!」
大木のように太くしかし刃物のように鋭い巨大な脚を紙一重で回避したがその一撃に悲鳴を上げずにはいられなかった。突き刺された地面には大人二人分は確実にある穴が空けられて戦慄を覚えたのだが、このままでは殺されてしまうのでアイルは逃亡を諦め蜘蛛を倒そうと相対する。
「あわわっ……だ、大丈夫なの? あんなに大きいんだよっ」
「やってみなくちゃ分からないよ。それに逃げられないんだから」
「とにかくこの化け物を殺すぞ、おめえら!!」
「「「うおおおっ!!」」」
恐らくこの森は大蜘蛛の縄張り。故にそこに足を踏み入れた以上、アイルとアイラそして盗賊団は大蜘蛛に目を付けられたので逃げる事は出来ない。盗賊団も落ち着きを取り戻して、それぞれ斧や剣など様々な形、大きさの武器を構える。
盗賊団の頭が仲間達の戦意を向上させる一言を口にすると盗賊団十数人が武器を大きく掲げた。盗賊団がとても頼もしく思えた。
「一緒に戦ってもらう? 人数が多いとボク達も助かるよね狙われる確率が減るから」
「そうだね。ホントは敵なんだけど、すごい助かるね」
当初の目的を忘れて眼前の敵である大蜘蛛を倒す為に盗賊を捕えるという目的を変更させる。
こればかりはアイラもアイルと同じ意見だった。魔物とは旅を初めてから何度か戦闘を交えてきたが、ここまでの怪物とは初故に敵味方関係無く人数が多い方が都合が良い。アイルとアイラは頭をフルに働かせグランから教わった戦闘術を思い出す。
「いくぞっ、怪物!!」
「相手の攻撃には気を付けてねアイル!」
攻撃方法が至近距離のみのアイルは柄をしっかりと握り地面を強く蹴り込み一気に大蜘蛛へと攻撃をたたみ掛ける。持てる力を振り絞り大木のように太く鋭い脚を全速力で駆け上がり、そのまま切っ先を蜘蛛に向けたまま頭部へと突き刺す。アイルは蜘蛛にとっては蟻の様な存在でしかないが、その斬られた箇所が非常に痛いのか全身を震わせて暴れる。
暴れる度に地面は揺れ周りの樹を無理矢理押し倒している。それに巻き込まれない様に臥せる様にして皆、避けているがアイラは一ヶ所には留まらずに動き回りながら弓を構えて照準を大蜘蛛へと合わせて光を集束させていく。蜘蛛の頭部ではアイルが剣を突き刺したまま振り落とされないように必死にしがみ付いて飛ばされないように踏ん張っていた。
「うわわわっ! あ、暴れるなよ!」
「狙うなら…やっぱり頭部」
「あれが子供の力…なのかよ」
「す、すげえな」
脚を狙うよりもアイルの一撃を受けて苦しんだ頭部が狙い目だと感じ一気に解き放った。放たれた一撃の光の矢は空間を疾走し途中、無数に分裂して蜘蛛を瞬く間に攻撃を与えていく。貫通力に優れている攻撃の為、大蜘蛛にはダメージが蓄積されていく。
そんな子供とは思えない攻撃の威力や身体能力に盗賊団は驚愕しながら双子に視線を集めていた。人間の数倍もの巨体を誇る怪物を眼の前にしながらも一切怯まない度胸も中々子供とは思えずにいたのだが、双子に集中していた事が仇となり、大蜘蛛は糸疣から白く細いのだが巨体故に太く感じる糸を出して盗賊を捕えた。
「しまったっ! き、気持ち悪いっ!!」
「な、なんだよこのネバネバとした感触は…!」
((あれだけには気をつけよう、あんな気持ち悪いものに触れたくない))
一つ一つの糸は太く長い事もあるので一度に数人もの盗賊団の行動を制限させる事が出来る。アイルとアイラはその瞬間を見て絶対に受けない様にしようと心に強く刻みこむ。理由は糸に絡まれた盗賊団の数々の悲鳴は双子に嫌悪感を与えるには充分であった。
「うわあああっ!? うがっ!」
「アイル! ま、ま、前を見てっ!」
「なああああっ!? なんかボク達を狙ってるよね!!」
「うんうんっ! うわああんっ!!」
蜘蛛の出した糸に気をとられていたアイルは頭部から地面へと振り落とされ倒れ込んだ。少し強めに背を打ちつけてしまったのか痛みに顔を歪ませるが直ぐに起き上がろうとするがアイラの焦りの色が見える声に前を向く。そこには猛烈な勢いで八本の脚を動かし双子へと突撃しようと突っ込んでくる蜘蛛がいた。恐らく蜘蛛は双子を大敵と判断したのだろう、双子はまさか突っ込んでくるとは思わずに正反対の方向へと体を向けて全速力で逃げていく。気持ち悪い上に当たれば想像を絶する痛みを味わう事になるのだ、真っ向から立ち向かうなど双子は絶対にしない。
目指す場所は何処でも良いのだが周囲に何も無い場所が一番でもあった。周りに隠れる場所があれば隠れる事も出来るがそれはあくまでも対人戦での話。あの巨体に障害物など意味はなく突撃するだけで障害物ごと押し潰される危険性もありピンチを自ら生んでしまう事もあるので広い場所を探していた。走りながらアイルはアイラにある事を訊ねていた。
「アイラの攻撃ならアイツを倒せるかな!?」
「わ、分からないよ…あんなに大きかったら小手先の攻撃なんて意味無いもん。それにあの力は私のだけど…良く分からないんだ」
あの巨体を倒そうと思っているならば強力な一撃に限られる。それを理解しているからこそアイルの問いにアイラは素直に首を縦には振れなかった。さらにアイラ自身がこの力をきちんと理解出来ていない事も理由の一つに挙げられる。魔法のような攻撃を撃てるが本質は魔法ではない上に想像しただけで好き放題な形で攻撃が出来る。そう、先程までの全体攻撃も初めて本格的に使っていながらこれなのだ、アイラも不審には感じているのだ。
「そうだよね…知らない力は怖いよね。でも、アイラならきっと出来ると思うよ、なんたってボクのお姉ちゃんだもん!」
「そうだけど……」
アイルは知らない力に恐れを抱くアイラを咎める事はしない。何せアイルはアイラのように特別な力を持たないのだから。
それでもアイルは助言を言う事は出来る。アイラがアイルの事をある程度は性格を理解しているようにアイルもまたアイラの事を理解しているのだ。屈託のない笑顔で大丈夫だと出来ると成功出来るとアイルは励ます。そんなアイルを見てアイラは左手で胸の部分を触れる。
「って話してる場合じゃ無かったぁっ!! もう近くまで来てたよ…アイラ右に避けるよ!」
「えっ…うんっ」
頭上からの攻撃をアイルはしっかりと相手の動きを見極めながら軽やかな動きで避けて行く。その反応速度や反射神経は人間の子供とは思えない動きで当たらない事に蜘蛛の攻撃速度が一層増した。
「うわっ、なんか行動が早くなった!?」
動きが早くなったのをアイルは感じて動き止まってしまう。ほんの少し動きを止めてしまった事が命を狙われる事にもなる。
「しまっ……うわああっ!?」
横から飛んでくる右側の脚がアイルの体を捉え、弾き飛ばされるように十数mも吹き飛んでしまう。
全身を襲う強烈な痛みにアイルは顔を歪ませ剣を手放してしまう。そのまま地面に激突してアイルは倒れ込み痛みに声を上げる。
「ああああっ! い、いたいっ…全身がぁっ!」
「あ、アイルっ! 待ってて直ぐに助けに行くから」
想像以上の痛みに襲われたアイルは地面に倒れ込んだまま悶え苦しんでいた。それを全て見たアイラは助けに行こうとアイルの方へと駆け寄ろうと葉が落ちている地面を蹴るが、悶え苦しみながらアイルは声を荒げる。
「来ちゃ駄目だアイラ! アイラまで狙われる」
「だ、だけどアイルが……!」
「まだ…大丈夫! これくらい何ともないよっ…うおおおっ!」
「アイル…す、凄い……」
このまま倒れれば殺される事は目に見えており一ヶ所に集まっていれば絶好の的でしかない。それを避ける為にアイルはアイラが近寄る事を拒み立ち上がろうとする。腕や足、頭など至るところから血を流しながらも地面に足をつけて蜘蛛を見上げる。地面に突き刺さったアイルだけが使える剣を引き抜くと我武者羅に蜘蛛へと一気に駆け寄る。巨体の蜘蛛は一番手前にある脚で突き殺そうとするがアイルは高く跳躍し避け、その脚を足場にし木から木へと飛び移る様な動きで蜘蛛の顔面へと接近し横へと斬り払った。
顔面の中心部からは毒々しい色の血が頭部から垂れ落ちながらもアイルは連続で斬り続ける。当然、空を飛行する事は出来ないので重力には従うしかないが、少しでも切っ先が当たる範囲ならばアイルは攻撃の手を緩める事はなかった。それを見ていたアイラはアイルの本気に凄みを感じていた。
さらに蜘蛛の糸に捕えられた盗賊団はアイルの気迫に開いた口が閉じなかった。
「大人でもさっきのを受ければ普通起き上がれないぞっ……」
「それなのにあの餓鬼はなんで斬れるんだよっ!!」
動けば全身に激痛が走る程の痛みで巨体という事は非常に肉もあるのだがそれを諸ともしない剣戟を見せる。
(通じてる。けど、どうしても動きは止まらないっ)
攻撃は通じるが決定打にはなりえない。巨体故に致命傷には中々繋がらずにアイルは落下しながらどうするべきか考えていた。しかし、痛恨の一撃を受け全力で戦っていた事もあり、いよいよアイルの体力も限界が近付いてきていた。
「はあっ…はあ…っ!」
地面に綺麗に着地した反動でも痛みが走り抜けて前に倒れ込みそうになるが剣を杖代わりにして倒れる体を支えた。
「アイル……!」
必死に戦っているアイルを見ながら弓を掴む右手に力が籠もる。
思い出すのは山奥の村で過ごしていた日々。何時もアイラはアイルの後ろに隠れていてはそこから周りを見ていた。山奥の村ならばそれで良かったし変わる必要もなかったこと。だが今はそうはいかないし、変わらなければ旅を続ける事は出来ない。
両親と何時か必ず出会う為に旅に出たのは自分の気持ちなのだからとアイルは自分の持つ弓を見つめる。アイラは自分を変えようとほんの少し一歩足を前に出して蜘蛛へと弓を向けて構える。
「が……がんばろ…わたし」
そして金色に輝く光が一つの矢へと形を変えて行き、さらに光を集束させていく。
(アイルは出来るって私を信じてくれてる…それなら私はそれに応えたいんだ…)
戦うのは嫌いだがアイルが酷い目に遭うのはアイラにとって大嫌いなもの。アイルを助ける為にアイラは本当に力を使って助ける事を決意してアイルを攻撃しようとする脚に向けて集束させた光の矢を撃ち放った。光の矢は瞬く間に加速し一直線に蜘蛛がアイルを殺す為に突き刺そうとする脚へと向かう。落ち葉は四散し樹木を貫きながら、しかし威力は一切落ちずに脚を貫いた。
だが、それはほんの一瞬の出来事で百数十m程空いていたアイラとアイルの距離を一秒弱で通り抜けたのだ。その速度と貫いた脚を吹き飛ばすだけの破壊力を齎す攻撃にアイルは興奮しながらアイラの方へと駆け寄る。蜘蛛は脚を一本失い体勢を崩し地面を少し揺らしながら倒れ込む。
「アイラ、凄いよ今の!!」
「う、うん……私もビックリした」
まさかあの大きな蜘蛛の脚を吹き飛ばす程の威力へと変化しているとはアイラには予想外で若干放心していた。脚一本失えば蜘蛛の行動速度は遅くなる、それだけでも双子にとっては逆転のチャンスであった。
「今のを正面に直撃させる事が出来れば」
「うんアイツを倒せるよ!!」
直接顔面へと決めれば倒す事が出来ると双子は共に実感した。
「今の一撃は多分二十秒ぐらい溜めたからそれで撃てる…でも溜めてる間は動けないんだ……」
「それならボクが二十秒間邪魔させずにアイツを止めれたら良いんだよね」
「で、でも…危ないよ!? それにアイルは一度凄い攻撃を受けて……」
「大丈夫。アイラには僕が触れさせない!」
ゆっくりと起き上がり双子へと体の向きを変えて耳を塞ぎたくなるような奇声を発する蜘蛛。双子は先程の一撃について話していた。溜めている間はアイラは動けないと重要な事を伝えるとアイルは足止めは任せてと平然と言いのけた。だが、平然としているように見えるが呼吸は肩でしているような状態で打撲や骨も砕けている可能性だってあるのでアイラは首を縦には振ろうとはしなかったが、アイルは剣を握りアイラに背を向けて絶対に守ると宣言して右手で柄を強く握り構える。
「コイツに勝って盗賊を捕まえればボク達は外の国にも行ける!! そうすればもっと色んな場所に行けるから負けないぞっ!!」
傷を負っていながらも移動速度がさらに上昇しているアイルは一気に蜘蛛へと詰め寄る。蜘蛛は再び脚を大きく上げて突こうとするがアイルは今度は大きな動作で避ける事はせずに最小限の動きで避けて行くが、やはり手数はまだ蜘蛛の方が大きく左側の前脚を使い刺そうとする。
「させないぞっ!」
危険な行動ではあったがアイルは剣で脚を防ぎ、攻撃を受け流すように回避した。真っ向から受け止めればあの巨体にアイルは簡単に押し負けるだろうが力勝負は元よりしていない。さらに全てアイルは蜘蛛の向いている方向をアイラの攻撃射程範囲でのみ行動していた。大きな動作での避けをしないのは加速させ行きすぎないために。
「化け物、君の負けだよ!」
「いけえっ!」
二十秒だけ耐え抜けばアイラの攻撃は完成し放つ事が出来、アイラは蜘蛛へと撃った。
先程とほぼ同じ速度と威力の光の矢は瞬く間に蜘蛛の顔面を体を貫いて腹部から外へと飛び出た。そのまま光の矢は木々を貫き何処へと消えた。たった一撃だが怪物の蜘蛛さえその威力に奇声を上げる事が出来ないまま倒れた。
「はあっ…はあっ…た、倒した?」
「うん…あの化け物を私達倒したんだよアイル」
倒れ込んだ蜘蛛の巨体を見上げながらアイルは倒したのかと首を傾げるとアイラは頷いた。
「やった…やったああああ!!」
「やったねアイル!」
蜘蛛の怪物を倒したと実感すると双子は抱き合って全力で嬉しがっていた。
盗賊を捕まえる事を目的にしていたが蜘蛛を倒せた事だけで今の今まで盗賊を捕まえる事などどうでも良く感じていた。双子が嬉しがっていると森に生い茂る叢が揺れ動く。
「えっ…何か来るの?!」
「もしかして魔物とか……」
疲労が溜まっているのでビクッと反応して叢を見て不安がる。しかし、叢から出てきたのは甲冑を装備した数人の兵士達であった。
「ファゴット王国の兵士だ!」
「た、助かったね…アイル」
「エルドーク様、子供達と盗賊団を見付けました!! それとアレを」
「うむっ、まさか森の主を倒しているとはな…それとなんと情けない盗賊もか」
エルドークが兵士を引き連れて森まで来ていた。まさか王国の騎士エルドークがここまで来ている事に双子は驚きながらエルドークや兵士達を見比べて疑問に思っていた。エルドークは蜘蛛の糸に絡まっている盗賊団を見て情けないと見ていた。




