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第2部  訪問者

ガチャ

ドアを開けて中に入る。

電気のスイッチを入れなくとももう十分居間の方は太陽の光が射し込んでいて明るくなっていた。

時計を見るともう7時5分。

ついつい悠月と「お喋り」をしていたら時間が経ってしまう。

敦士は居間のテーブルの上に、買ってきた食材を次から次へと出し、それから冷蔵庫の中へとしまった。

コンビニのビニール袋はゴミ箱の隣に置いてある「袋」と書いた箱の中に入れる。

〈使える物はとって置く〉これは敦士の長所でも有、短所でも有る。

よく、まだ使えると思い箱に閉まって置くといつのまにかその箱が大量のになり、困ることがよくあるのだ。

一人暮らしの為いつも一人でご飯を作り、いつも一人で食べる。だからと言って寂しいなどとは考えた事が全く無い。


俺は早速買ってきた食材を使い朝食にすることにした。

ピザトースト、牛乳、サラダ・・・

そして最後はコーヒーを飲んで終わり。



『え、あぁ特には無いんだけど。あのな、この間本屋さん行ったんだよ。

 そしたら、ピアノピティナコンペティションって言うピアノのコンクール

 のチラシが置いてあって・・敦士は出ないかなーって思ってさ!』




「ピアノのコンクール・・・か。」

ため息をついてソファに横になった。

ピアノ――

その単語を聞く度、条件反射で反応する。もう俺はピアノを弾かないと決心したのに。

「は・・・。」

もう一度ため息をついた。すると


ピンポーン

俺の(アパート)のベルが鳴った。ったくこんな朝早くから誰だよ、と時計を見るともう8時をまわっている。「はいはい。」と言いつつ面倒くさそうにソファから立ち上がり玄関まで歩いて行く。

ピンポンピンポーン

訪問者はまだベルを鳴らし続けている。俺は靴を履いてチェーンロックをはずした。

「あーったくもう今開けます――」

ガチャ

「――よっと」



ドアを開けると一人の女の子が立っていた。


「あ、どうも初めまして私、関根柚夜(セキネユウヤ)と申します。」

女の子と言っても俺と同い年かその一つ下ぐらいだ。髪はポニーテールにしていてかなり家柄の良さそうな子だなと俺は見る。何となく身に着けているものが高価そうだからだ。

「えっと・・何か俺に用ですか?」

「あ、はい。・・・あの、藤岡敦士さんですよね?」

「まぁ、そうですが。」

「あ、やっぱりっ」

そう言うと、セキネユウヤと名乗る女の子はガサゴソと自分のバックの中の何かを探し始めた。しばらくすると「あった!」と言い一冊の雑誌のようなものを取り出してきた。雑誌には

[1998年度ピアノ○○○○コンクール結果特集号]

と書いてある。またピアノ・・・・、今日は運が悪いのかもしれない。

「・・・結構古いピアノの雑誌ですね。」

運が悪いせいか、急にいら立ってきた俺は嫌味っぽくにっこり笑って言った。すると関根柚夜は「あ、はいっ」と言って顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。ったく今のは嫌味で笑ったつもりだったのに、むしろ逆効果だ。女の子ってもんはこんな嫌味な笑顔も逆に取ってしまうものなのだろうか。かなり凄い人たちだな。っとそれは置いといて関根柚夜さん・・

「で、それがどうかしたんですか?」

「あ・・はい。あの、私っ藤岡さんのファンなんです!」

「・・・はい?」

「ですから、さっき申し上げた通り・・・っくしゅん!!」

そして「あ、すみませ・・」と言いかけてもう一度「っくしゅん!」と大きなくしゃみをした。その言動に少し悠月と似ている所があり、俺はクスッと笑ってしまった。するとそれを見た関根柚夜は更に顔を真っ赤にして「すみません・・・・。」と言った。

「いえ、こちらこそ。それよりまだ寒いですから、どうぞ中へ上がってください。ちょっと話も長くなりそうなので・・。」

そう言ってドアを開けると

「あ、でも悪いので・・・。」

「でも、寒いでしょう?中へ上がって下さい。」

するとまた更に顔を真っ赤にして少し考え込んだ。そして決心が付いたようで「それでは、少し上がらせてもらいます。」と言い、真っ赤な顔で困ったように笑いながら俺のわきを通って中へ入っていった。

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