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第2話

第2話


 現場は閑静な住宅街だった。周りを家に囲まれている住宅地で、被害者の家は庭付きの一戸建て、この辺りでは裕福の部類に入る。

 光翼が野次馬の人垣をかき分けて黄色いテープの下を潜ると、後輩の刑事がやってきて事件の概要を説明した。

「被害者は大学院生の拓海公たくみこう二十四歳。機械工学を学んでいました。頭をゴルフクラブのような硬いもので殴られ死亡。死亡推定時刻は今日の深夜三時頃。昨日から今日にかけて家族は旅行に行っていて、死亡した時被害者は家に一人だったと思われます。旅行から帰ってきた家族が部屋で遺体を発見し、通報。そんなところです」

「そうか。ご苦労さん」

 光翼は、事件現場である公の部屋へと踏み入った。遺体はもう運ばれているが、床には所々血痕が残っている。

 被害者は床に這いつくばるような形で死んでおり、右手だけが不自然に伸びていた。まるで何かを求めているところでこと切れた、そんな体勢だった。

「金は盗まれてないのか?」

「はい。なので、強盗目的の線は薄いようです」

「ってなると、怨恨か?」

「それが強いですね。今上がっている容疑者は、三人います。被害者はスポーツが好きで、スポーツバーによく通っていたらしいんですが、容疑者は三人ともそのバーの常連で、被害者とは比較的親しかったようです」

「スポーツバーね」

「はい。一人目は深海清次ふかみきよつぐ。プロ野球のチーム、カーターズが好きで、被害者には借金がありました。それを返す当てがなく、困っていたようです」

 光翼は頷いた。借金を返せないがために、相手を殺す。動機としては十分だ。

「二人目は能見直己のうみなおき。彼はJ1サッカーチームのドルフィンズが好きで、被害者とは事件の前日に揉めています。何でも、被害者がドルフィンズを馬鹿にしたからって理由が発端の喧嘩らしくて、その時被害者に殴られて恨みを持っていたみたいですね」

 公衆の面前で殴られ、恥をかかされた。その仕返しのつもりで頭を殴ったら、死んでしまった。これもありうる話だ。

「三人目は美野浩平みのこうへい。この人はバスケットボールbjリーグのファルコンズが好きで、被害者に女を取られたとバーの店長に漏らしていたそうです。被害者には相当妬みがあったらしいです」

「野球にサッカーにバスケ……。動機もそれぞれ十分だな」

「そうなんですよ。全員事件当時のアリバイがないので、ここから絞れずに困ってるんです」

 ふぅむ、と光翼は唸った。これだけでは犯人の特定には至れない。

「さて、困ったな……」

 独り言をつぶやくなんて、年を取ったもんだ。そう思った瞬間だった。



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