ショートショート『間抜けな殺し屋』
noteで活動していましたが。こちらでも活動することにしました。noteからの転載ですがこちらでは初投稿です。
俺は一仕事終え、家路を急いでいた。
今日の殺しは楽だったな。
そんな達成感を滲ませながら颯爽に風を切って走っていた。
その時俺はハッっとした。
エッ!昨日殺したはずのターゲットが生きていた?
いや、見間違えだよな──
俺はすれ違ったタクシーに乗っていた昨日ヤったハズのターゲットを、追いかけるように後を追う──
ダメだタクシーは速かった。
当たり前だ、俺は自転車なのだから追い付くはずはない。
ターゲットは確か、この先の銀行が勤め先だったことを思い出した。
俺は一仕事おわりで、大きなライフルを背中に背負っていた。
そうだ、もしヤツならこいつで仕留めよう。
そう考えながら自転車をこいだ。
目の前の信号が赤に変わりそうだが、止まらず渡った……
「ピピ~ー!」
甲高い音が真横から俺を狙い打つ。
同業が俺を狙撃か?いや、ライフルを撃つ前に音なんてでない──
「ちょっとお兄さん!」
音が響いた方を向くとなんとポリ公だった。
ヤバい、背中に背負ったライフルがバレたのか?俺は顔から大量の汗、自転車のハンドルは手汗でびちょびちょになった。
一流の殺し屋でも不意のポリ公には緊張してしまう。
声が裏返る
「な、な、なんでしょう?」
俺は思わずライフルを背負い直す。
「赤信号無視ですね」
ホッ…。ライフルがバレたんじゃなかったのか。俺は心底ホッとした。
これは、初仕事でターゲットの横の依頼主を撃ち殺したヘマを犯した時になんとかバレずにやり過ごした時以来の「ホッ…」に酷似した。
俺は罰金を素直に払いその場を後にした。
あった、あった。
ここの銀行だ!
俺は自転車を駐輪場に止め鍵を掛け
ライフルを手に銀行に入った。
受け付けにいた、女子行員が
「キャーアアアーー」と悲鳴を上げた。
待て、待て、俺はまだ何もしてないよ。
心のなかでそう呟いた。
ガラスに写った姿をチラッと目線で追う。
俺はマスク姿に黒のニット帽、手にライフルを持って入店していたのだった。
非常ベルがこだまする。
俺はさっき反則切符を切られたポリ公に捕まった。
見間違えたターゲットは人違いだった。
「俺は本当に間抜けな殺し屋だ」
おわり




