古代エジプト詩『クフ王讃歌』
世界の神話伝説や歴史を題材にした詩、第13弾。もう新しい詩は書けないないだろうと思っていましたが、本日急にインスピレーションが湧いてきて、書き上げることができました。今回は古代エジプト最大のピラミッドを建てたクフ王を讃えます。この詩をクフ王その人と、自分が尊敬するエジプト考古学者の吉村作治先生(ピラミッドの外に、クフのお墓が見つかりますように!)や河江肖剰先生、河合望先生や大城道則先生をはじめ、古代エジプトを愛するすべての方々に捧げます。
ナイルの賜物 エジプトの
黒き大地を治めし諸王の中で、おおクフ王、
御身は他の誰にもまして 名高し、その業ゆえに。
並ぶことなき御身の偉業、
そは砂塵舞い飛ぶ大地の神の胸、岩ばかりなるギザの地に
230万もの巨石を運び、えいや、天空の女神の腹まで届けと積み上げて
真白に輝く王の墓、正四角錐の金字塔、築きしことに他ならず。
その大きさは比類なく、
荒れ狂う鯰、強き雄牛にして隼神の化身、最初の王なるナルメルが
上下二つに分かれたる 黒き大地を一つに統べ合わせ、王国建てたる昔より、
最後の女王 美しき クレオパトラが死にいたるまで、比肩し得るものはなし。
偉大なジェセルが 方形墳墓六段積み重ね、階段模したる奥津城も、
権勢並ぶ者なきスネフェルが 三つ築きし御陵も、
クフ王、御身が金字塔には及ぶまじ。
高さ290腕尺余り、底の長さは四辺とも460腕尺なるぞ。
かかりし月日は二十年を超え、太陽神の船が幾千日も
天翔け世界をめぐる間に、万の民が集まりて、力を合わせ働きぬ。
民が振るいしは石の槌、あるいは木槌と銅の鑿。
手間暇かけて石をば切り出し、木の橇をもて運びたり。
民の労苦は如何ばかり、流れし汗は如何ほどか。
されど かの者たちは鞭打たれ、強いられ働く奴隷にあらず。
皆、御身を慕いて集いたる 鍬と鋤持つ農夫なり。
民は王より日々の糧、麺麭と麦酒を供されて、
ナイルの大魚、牛の肉をも振る舞われ、
怪我せし者も、病の者も、医神の手厚き加護をば受けぬ。
ゆえに民草意外にも、喜び勇みて王のために、正義のためにと働きぬ。
かくしてクフ王、クヌム・クフ、
御身が墓なる金字塔、見事築かれたるぞ ギザの地に。
しかるにクフ王、悲しきことに御身の姿、顔を
幾千年の時を経て、今に伝えしものはごくわずか。
象牙を刻みてつくられし、殻竿を手にして玉座に座る 掌大の像一つ、
木彫りの獅子頭女神に寄り添いて、指をくわえし幼児の 姿をしたる像二つ、
その他、いくつかあるばかり。
御身、太陽神の船が沈みし西の方、イアルの野へと去りし後、
次代の王が御身を妬み、像を壊したるゆえか。
されどクフ王、悲しむなかれ。
御身の御名は不滅なり。神々のごとく不滅なり。
今も砂塵舞い飛ぶギザの地に、
野心溢れるカフラーと、慈愛深きメンカウラー、
御身の子孫築きたる 中小二つの金字塔、
それらと並び天高く そびえし御身の大金字塔。
そは永久に不滅なり。御身の御名もまたしかり。
さらばクフ王、クヌム・クフ、
御身の御名は不滅なり。神々のごとく不滅なり。




