掃除
放課後、今週は掃除当番でした。
「本っ当にごめん!」
「いやいや、大丈夫だよ。それより、早く行ってあげて」
「琥珀ありがとう! じゃあね!」
一緒の当番だった友達の飼っている猫が、病気になってしまったらしいので、1人で引き受けることにしました。
私も犬を飼っているので、ペットを大切にする気持ちはものすごく分かります。
早く病院に向かって、傍に居てあげてほしいです。
掃除用具ロッカーからホウキを取り出して、教室に入りました。放課後なので、もう誰も居ません。
(1人の教室って、ちょっと寂しいな……)
家とは違って広いので、何だかそう感じます。
「って、あれ?」
誰も居ないわけじゃありませんでした。
「夜西くんっ……」
自分の机で、静かに寝息を立てて寝ている夜西くんが居ました。
掃除をするのには、机を動かさないといけません。
でも、気持ちよさそうに寝てるのに起こしてしまうのは罪悪感があります。
(どうしようっ……)
一旦、夜西くんの机以外の場所をどけて掃除をすることにしました。
なるべく、音を立てないように。
1人で掃除をするのは、いつもより時間が掛かります。
15分で、やっと終わりました。
(あとは夜西くんの所だけど……)
やっぱり、まだ起きてくれません。
もう諦めて帰ろうかと、ホウキを片付けるために、ロッカーを開けました。
前の人が適当に入れてしまっていたのか、ホウキが倒れ込んできました。
「きゃあっ!」
大きな声と音を出してしまって、数本のホウキの下敷きにもなりました。
(星座占い、最下位だったからかな……)
「有宮さんっ! 大丈夫!?」
目を開けると、夜西くんの顔がありました。
「だっ、大丈夫ですっ! 起こしちゃってすみません……」
「全然いいよ。ごめん、掃除できなかったよね」
夜西くんは、ホウキを片付けてくれました。
「はい。立てる?」
手を差し伸べてくれて、私は緊張しながら、大きい手に触れました。
「ありがとう……」
「掃除、1人なの?」
「あ、はい……友達のペットが病気になっちゃったらしくって」
「そうなんだ……ごめん、次何かあったら起こしてもいいから」
夜西くんは、自分の机をどけて、残りの掃除をし始めました。
「有宮さん、授業いつもごめんね。ありがとう」
「いえいえっ、起こしてすみません」
「ううん。寝てる俺が悪いから……」
そう言って、大きなあくびをする夜西くん。
「ちゃんと寝てるんですか?」
夜更かしとか、ゲームとかをしてるのかな。
「んー……寝れないんだよね」