未知に向かって前進しよう
「いつか、手のモデルだけでなく、私のフィギュアの妻たちが本物になれたらいいのに…」
谢称は呟くように言いました。今、彼の部屋はアニメ、ゲーム、フィギュアで溢れ返っている、オタクの部屋の典型です。無職の彼は、毎月単発の仕事をして生計を立てなければなりません。両親に経済的な援助を切られた後、フィギュアはもはや毎月の熱狂的な購入から、生計を立てるためにオークションで売ることを考えるようになりました。
20歳の彼は高校に合格できず、大学に入学して数ヶ月後に喧嘩して退学してしまいました。家族は彼をあまり好きではなく、家の重荷として見ています。血の繋がりがあるため、一定の期間だけお金を渡さざるを得ないのですが、父親は谢称が何もせずにお金を無心しているのを見て怒り、彼に対して「不孝者」と怒鳴り、生活費を止めましたが、家賃のみは支払っています。
汚れた部屋は谢称が使ったティッシュ、洗っていない食器、散乱したゴミが蟑螂やネズミのパーティー会場と化していますが、フィギュアやライトノベルに対してだけは谢称が特別に大事にしています。それが彼の部屋で一番きれいな場所でもあります。
彼は変わりたくないと思っています。むしろ、現状に満足していて、このままで十分だと感じています。ただ一生をなんとか過ごせばいいだけで、それで十分だと考えているのです。そんな彼は、日給の仕事を求めて工場へ向かいました。
「ああ…なんて不潔な場所だろう…」
「本当に…彼は私たちには親切だけど、でも本当に不潔で、吐き気を催す臭いがするわ。」
「そんなこと言わないで、ここをきれいにするべきよ。ただただ食べて飲んでいたわけじゃないでしょう。感謝の気持ちを持つべきよ。」
部屋に騒乱が広がり、何が起こっているのか分からないまま、元々はモデルだった3つのフィギュアは実体化し、美少女に変わりました。彼女たちは「冰星斯特拉尼娅」のアニメから来た三姉妹、美樱依、美樱良、美樱萨です。かなりの悪臭があるものの、彼女たちは部屋をきちんと掃除しています。谢称がフィギュアを買うために貯めた数百ドルが、美樱依によって部屋から見つかりました。
「だから、この部屋は本当に臭いけど、ここで暮らすことになるわ。ちょうど谢称が貯めたお金があるの。このお金でスーパーに行って生活用品を買ってきて。」美樱依が800ドルを持ち出し、言いました。しかし、他の2人の妹は首をかしげていて、どうやって買い物をすればいいのかわかりません。
「姐さん、私たち、本当に買い物のやり方がわからないの…この服装で街を歩くのは恥ずかしいよ。」美樱良が率先して問題を口にしました。彼女たちの服装はまだアニメの衣装のままであり、大姐はその時初めて気づきました。彼女たちは現在、ブラジャー1つだけで、非常に露出度が高く、街で歩いたらソープランドの看板娘に間違われるかもしれない、ということです。しかし、彼女たちはすぐにアイデアを思いつきました。谢称の服を着て外出することにしました。ちょっと合わないかもしれないけど、仕方ありません。
2人が外出した後、残されたのは依だけでした。依は周りを見回し、家のゴミを掃除しました。しかし、それにより彼女は考え込むことになります。なぜ突然実体化したのか、彼女にはわかりませんが、今は少しリラックスしたいと思っています。高強度の掃除作業は彼女にとって前例のない疲労感をもたらしました。彼女はテレビをつけてTVチャンネルを観ることで気分をリラックスさせようとしました。
「私たち帰ってきたよ、姐さん！」2人が口々に叫び、人間の世界での初めての買い物を祝福し、非常に喜んでいます。
「戻ってきたんだ。何を買ってきたか見せて。」依が立ち上がり、2人が持っている大きな袋をチェックしました。見たところ、彼女たちはたくさんのお菓子を買ってきたようですね…依はそう思いましたが、とにかく彼女たちはミッションを達成し、必要なものはだいたい揃えたようです。依は彼女たちを厳しく非難することはありませんでした。
「ああ！これで部屋に人が住めるようになったわ！」依は虫除け剤をたくさん振りかけ、何度も掃除をして、何度も香水をスプレーしました。これで鳥の巣のような部屋とは違う状態になりました。彼女たちは大声で喜びを表現し、コンビニで買ってきた飲み物を持ち、乾杯しました。
「カチャ」ドアが開きました。
3人が歓喜の渦に包まれている最中、外に立っている谢称はしばらく呆然としました。彼の周りの視線が集まるまで、谢称はゆっくりと口を開けて尋ねました。
「私、間違った部屋に入ったのかな？」
