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「自由恋愛という意味では、いないわね」


 テオドールの質問にシルヴィは真面目に答えた。

 地位や財産という点では、マチルドの婚約者にも劣らない好条件の相手もいる。


 どの人も、一応は立派な人だと思う。

 ただ、好条件の人物ほど、エドワールのような考え方をする傾向を感じた。


 相手にされるまでは下手に出て、いざ話が進み始めるとマウントを取ってくる……という話は、友人たちからもよく聞く。

 もっとこう、ふつうに人と人という感じで、付き合えないものだろうかと思う。


(貴族である以上、無理なのかしら……)


 家柄や生活水準を競う風潮はなくならない気がする。


 夏の初めの宵の中を兄と一緒に家路に就いた。

 慈善パーティーの場合は、夜と言ってもお開きの時間が早いので助かる。

 

 郊外の城に帰り着き、メインになる居間に入ると、アネットが侍女に足の爪を切らせていた。


「あら、早かったわね。お姉様」

「早かったわね、じゃないわよ。黙って帰ったりして……」


「だって、退屈だったんだもの」

「エドワール様にご挨拶もしなかったでしょ。エスコートしていただいて、失礼じゃない」


 アネットは鼻に皺を寄せた。

 爪を切っていた侍女に「痛い」と言って顔をしかめる。

 申し訳ありませんと頭を下げて、侍女は下がっていった。


「ずんぐりむっくりのくせに偉そうにするから、ウンザリしちゃったの! ナディア程度の子には、あれくらいの人がちょうどいいわね」

「何言ってるの? ナディアと行くはずだったパーティーに、自分が割り込んだようなものなのに」

「ナディアがあんまり自慢するから、あの程度の男なら、簡単になびくってことを教えただけよ」

「アネット、あなたって人は……」


 どうしたんだい? と兄たちが居間に入ってくる。


「シルヴィお姉様が、私を叱るのォ」

「シルヴィは真面目だからな」


 アネットの甘えた言い方に、テオドールが笑みを返す。

 真面目って、何よと思うが、言えば、そういうところだよと笑われるがオチだ。


 アネットがエドワールと来ていたことはテオドールも知っているし、先に帰ってしまって、エドワールが文句を言ってきたのも聞いている。


 なのに、この調子なのだ。

 ちゃんと反省してるのに~、とアネットが言えば、そのくらいにしてあげたら? などと言うのだ。


(テオドールお兄様が優しいのは知ってるけど……)


 優しすぎるのは考えものだ。

 しかし、ここで「アネットに優しすぎる」などと言おうものなら「焼きもちかい?」などと笑われる。


 何度も繰り返したやり取りを思い出し、不毛な戦いに挑む気力を失くした。

 シルヴィ一人がカリカリしても、仕方ない。

 





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― 新着の感想 ―
[一言] 毒兄か~。妹がまともになるチャンスを潰しちゃって、まともな意見を言う人間を潰していくなんて、、 なかなかのS。 子供が生まれたら歪んで育ちますね。
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