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(6)

 騒然となる人々を見たテランスは、すばやくシルヴィたちから離れていった。


 倒れている人に駆け寄り、「大丈夫か」と声をかける。


 テオドールとシルヴィも騒ぎのあった場所に近づいた。

 人の頭越しに見たところ、ドアの前に三段ほどある階段に取り付けられた手摺が壊れて、人が落ちてしまったようだ。


「怪我をした者はないか」


 テランスの問いに、腰を強く打ったらしい老人が手を挙げた。「誰か、この人を……」とテランスが言うのを聞いて、シルヴィが進み出た。


「医務室にお連れします」

「頼む」


 その時、どこからかエドワールの声がした。


「アネット! 探したよ!」


 老人を助けて歩くテオドールとシルヴィにエドワールが駆け寄る。

 振り向くと、テランスがこちらを見ていた。

 

 教会の理事を務める貴族の一人がテランスに近づき、どこかうやうやしく頭を下げながら、何かの指示を仰いでいる。


「テオドールお兄様、テランス様ってどういうお方なの?」

「さっき紹介した通りさ。学園時代の友人だよ」


 どこか悪戯っぽくテオドールが答えた時、そばまできたエドワールが「あれ?」と言ってシルヴィを見た。


「アネットかと思ったら、シルヴィ?」

「エドワール様……、アネットは先に帰ってしまったみたいなの」


「えー、ひどいな……」

「ごめんなさい」


「僕を怒らせると後悔するよって、よく言っといてよ。いくら公爵令嬢って言っても、所詮は結婚相手の経済状況で人生左右されるわけでしょ。そのへん、よく考えて行動したほうがいいよって」


「……伝えます」


 老人を医務室に送り届けると、シルヴィはため息を吐いた。


「嫌な人」

「エドワール?」


 シルヴィが頷くとテオドールは苦笑した。


「仕方ないだろうね。自由恋愛の時代なんて言われてるけど、貴族はやっぱり貴族だ。限られた相手の中から、少しでも条件のいい人と結婚したいものだ」

「だから、爵位と領地と景気のいい事業を受け継ぐ第一令息を、もっと大事にしろってことね」


 手厳しいねと、次期ドニエ公爵である兄が肩をすくめる。


「父上と母上も、のんびり構えているようで、案外心配しているよ。クレマンやマチルドほどではなくとも、できるだけ条件のいい相手を選んでほしいと思ってるはずだ」


 一つ上の姉、マチルドは資産家として知られる伯爵家の第一令息と、三つ上の次兄クレマンは男子のいない侯爵家の第一令嬢と婚約している。

 どちらも爵位と領地と景気のいい事業を受け継ぐことができそうだ。


 四つ上のテオドールの婚約者は王女様だ。

 ドニエ公爵家を継ぐ上で、これ以上ない名誉を与えてくれる結婚相手である。


「うちは恵まれている」

「そうね」

「後は、アネットとシルヴィ、おまえたちの相手だ。シルヴィには二十四人も求婚者がいると父上が嫌そうに言ってたけど、その中にいい人はいないの?」


たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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