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「週末の舞踏会、シルヴィお姉様は行かないことになってるの」

「え……? どういうこと?」

「マチルドお姉様と私だけ行きますって、もうお返事してあるから」

「な、なんで……?」


 だって、とアネットは笑った。


「私と同じ顔のシルヴィお姉様が一緒だと、なんだか落ち着かないんだもの」


 またか。


 アネットの美しい顔を眺めて、シルヴィはうんざりした気持ちになった。


 金色の髪と青い瞳。

 人形のようだと誰もが褒める美しいアネット。

 学園でも社交界でも、自他ともに認める人気ナンバーワン令嬢だ。


 ……ということになっている。


 その実、同じ顔のシルヴィも、かなり人気があるのだが。

 でも、それを言うと面倒なことになるので、黙っている。


 それに、アネットみたいに自分の人気をアピールするのはイマイチ気が進まない。

 人気があろうとなかろうと何も言わず、ヘンに騒がれないのが一番だ。


 王宮での舞踏会や主要貴族が集まるパーティーへの参加を妨害されるのは、初めてではない。

 そのせいで社交界での影がアネットより薄かったりするが、それでいいとシルヴィは思っていた。

 目立つのは好きではないのだ。


(でも、今回は……)


 アネットとシルヴィは双子の姉妹だ。

 ドニエ公爵家の秘宝などと呼ばれ、美人なことで知られている。


 自分で自分を美人と言うのもどうなんだと思うが、同じ顔のアネットが美人で売っているので、否定するのもアレなので、とりあえずシルヴィも美人ということで構わないが、どうでもいい。


 双子なので同じ年だ。

 今年の七月に学園を卒業する十八歳。


 同じ日に生まれたけれど、アネットは必ずシルヴィを「お姉様」と呼ぶ。

 シルヴィとアネットには兄が二人、姉が一人いて、二人の下にきょうだいはいないから、シルヴィを「お姉様」と呼ぶことで、「ドニエ公爵家の末っ子」として可愛がってもらえるから。


 ……らしかった。


 どうでもいいけど。


 それはそれとして、舞踏会である。

 大勢の貴族が集まる王宮での舞踏会には、さすがにシルヴィも行きたかった。


 特に今週末の舞踏会は王太子ジェラルド殿下の帰国を祝うもので、いつになく盛大なものになると噂されている。


 学園の友人たちも、みんな行く。

 今回ばかりはマジで行きたかった……。


 しかし、正式な招待状もないのに、行くことはできない……。


 シルヴィは、アネットと唯一違う菫色の瞳を天井に向けて、諦めのため息を吐いた。



たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回ばかりはマジで行きたかった……。 ↑この一言で、なぜかグッと引き込まれました この一言にこれまでの仕打ちに耐えた気持ちやなんかがギュッと詰め込まれてるように感じて 主人公には申し訳ない…
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