第9話 上から目線のコバたん
「クポ!」
翌朝、コバたんがチャーム付きリボンを咥えて桜子にアピールする。
「今日はこのリボンがいいの?」
「クポ!」
コバたんは毎日違うリボンを首に巻いてもらっている。
今日は有人宇宙船ソユーヅのチャーム付きリボンを巻いてほしいと桜子にアピールしている。
「できた。今日もかわいいわね」
コバたんの首にチャーム付きリボンを巻き終わり、デレ顔の桜子がコバたんを愛でる。
「クポォ…」
最愛の桜子に抱っこされて撫でられて朝からご機嫌だ。
「おはよう」
「おはよう桜子。あら、今日のコバたんのリボンはチャーム付きなのね」
先に登校していた幼馴染の清と真太郎とヒロに挨拶すると、清が目ざとくコバたんのリボンに気が付いた。
「クポ!」
コバたんが鳩胸を反らしてチャームをアピールする。
「これは特別なの。コバたんが国際宇宙ステーションに滞在した記念なのよ」
「クポ!」
コバたんの鳩胸がさらに反り返る。
「コバたんが国際宇宙ステーションに滞在することになった時、桜子はずいぶん淋しがっていたけど、コバたんのためなら我慢するって頑張っていたよな」
「ク、クポッ!」
真太郎の言葉に焦って桜子に寄り添うコバたん。
「コバたんの夢が叶ったんですもの。淋しくても我慢した甲斐があるというものよ」
デレ顔の桜子がコバたんに頬ずりする。
「クポオ…」
コバたんもデレる。似たもの主従だ。
清は武蔵領と接する下野領の次女で、真太郎は常陸領の息子で、2人とも桜子とヒロの幼馴染だ。
※ 下野領は栃木県に相当する。
※ 常陸領は茨城県に相当する。
「宇宙飛行士になりたいっていう夢を、コバたんに先を越されてヒロは残念だったわね」
「クポ!」
清の問いかけにヒロを見下すように自慢げなコバたん。
清は空気を読まないタイプの天然で、コバたんが誘導するとホイホイ乗ってくる。もちろんコバたんは清のことを気に入っている。
「ガッチャ!」
「クポ!」
ヒロの精霊テックンは国内トップクラスの工業系大学のマスコット精霊なので、当然テクノロジー関連の話題が大好きだ。テックンは武蔵領出身の宇宙飛行士、若林さんと共に宇宙に滞在したコバたんに一目おいている。
腹黒なコバたんもピュアなテクノロジー精霊のテックンには優しい。
「…桜子の領地出身の宇宙飛行士の若林さんにマスコットとしてついて行っただけじゃないか」
ゴッ!ゴッ!
不満そうにボソリと呟いたヒロをコバたんが激しく突つく。
「いってえ! ちょ、桜子!」
「ダメよ、コバたん」
慌てた桜子がコバたんを後ろから抱えるようにしてヒロから離す。
確かにコバたんはヒロの言う通り、桜子の領地出身の宇宙飛行士である若林さんにマスコットとしてついていっただけだ。癒し以外の役割はなかった。
「桜子、こいつをちゃんと躾けろよ…」
「今のはヒロが悪いわ」
中立の清がコバたん側に立った。
「でもコバたんもやり過ぎだったわね、“ごめんなさい”しましょうね?」
プイッ!
桜子に抱えられたコバたんが顔を背けた。
「コバたん?」
「…」
桜子が悲しそうな顔で覗き込んでくるので気まずい。
「ガチャ〜」
テックンがコバたんに何か話しかけている。
「クポォ」
渋々といった様子のコバたん。
「ガッチャ!」
ヒロに強めに抗議するテックン。
「…俺も悪かった」
渋々とコバたんに謝罪するヒロ。
テックンは幼馴染4人の潤滑剤だ。